第77話 彼氏が超絶美少女過ぎる

「何が美咲美子だよ!!美が二つも入ってんぞ!」

 と枝利香さんが屋上に続く階段の下に膝掛けを敷いてその上に美少女が座りさらにその美少女の上に私が座らされている側からみたら百合かっっ!!とか思われそうな体制で話し合いが行われた。


 お昼休みに群がる美少女の周りに集ったクラスメイトを押しやり、枝利香さんが


「おい、転校生!ちょっと面貸しな!」

 と完全に不良に目を付けられた風を装い私達はこそこそとここにやって来た。


「で?何だその格好!後声!そして胸!そして胸!」

 枝利香さんはもう憎々しげに自分よりもある偽胸に2回言った。ですよね。感触も本物かと思うくらいだしちょっと触ったくらいじゃ判らない素材使ってんなこれ!!


「ふふっ中々でしょ?僕の女装も!君達以外誰も気付かないし男性教師は顔を赤らめていたよ、キモッ!」

 と彼はシャツの襟をめくり小さな透明なボタンを見せた。ポチリと押すとスイッチが切れるのか元の声が出た。


「声も合ってる?変じゃない?」


「「むしろ完璧…」」


「そうか!良かった!」

 と美少女が私にくっつく。


「ていうかお前学校は?金持ち学校の方はどうなってんだよ!」


「それは僕の身代わりが勤めてるよ!ロボットだけど。ほら山根博士に頼んだんだよ」


「へ…へえ?で…でも何で女装なの?」


「時奈さんと学校に行きたかったんだよ!」

 嘘やろ!!判るわ!!流石にそれだけで女装しないよ!!


「…はあ…もうダメだわ時奈…バレてるって…」


「え?何が??」

 と美少女彼氏が可愛いポーズで聞くので本物の美少女みたいに見えるわ!つか負けたわ!!

 そして私にはそのポーズできないわ!

 やったら確実に引かれるぞい時奈よ…。


「…私が虐められているから…もうバレたってことだよね」


「うん?何のこと?そうなの?虐められてるの?誰に?」


「…殺されるな…辰巳とか西園寺とか」


「だからあ?何のこと?辰巳に西園寺ね…ほんと目障りな女共だよね…僕の時奈さんに地味な嫌がらせを仕掛けてさ…今朝も時奈さんの靴箱に虫とか入ってたからぶっ殺しといたけど他にもいろいろと…ほんと許せない」

 と低い声で顔だけ笑いながら美少女が毒を吐いた。既に2人のことは調査済みなんだろうな。


「ごめん吉城くん…迷惑かけて…」


「何で?それに僕のせいでもあるでしょ?時奈さんは何も悪くないよね?」


「そうだ、時奈は何も悪くないぞ?サイコはちょっときっかけかも知れんけど」

 と枝利香さんも言う。


「大丈夫、僕が来たからには…ファンクラブも辰巳も西園寺も一緒に潰そうね!」

 とにっこり微笑んだ美少女。


(おおう!凄い怖い!!美少女のオーラが黒過ぎる!!なんて威圧だ!!女装してまで私を守りに来てくれるとかもう彼のサイコっぷりは誰にも止められない!)


「しかし…潰すって言っても…教師にも親衛隊混ざってんだぞ」


「あ、そうなの?じゃあその先生は解雇すればいいでしょ」

 とあっさり彼は言った。


「それに…あの田淵って委員長…料理はさっぱりらしいけど…隠密スキル凄いよ?ケルベロスで雇いますかね」


「は?委員長が?嘘だろ?」


「いやいやボイスレコーダーとか、後トイレで聞き耳立てたり何気にファンクラブに混ざって情報を収集したりね。その技術を買って彼女等の次の行動を先読みして分析してデータを取ってくれるよう僕に報告をお願いしたんだ」

 と彼はポケットからUSBメモリーを取り出した。


「これを全部ネットに放出させれば彼女達は社会的に終わる。…でもそれじゃつまんないよね?少しくらい反撃しないとね!くくく…」


「怖っ!この美少女マジ怖いわ」


「あ、そうだ!4月からこの学校…共学校になるからね?春休みにちょっと男子トイレの増設増やしたりするんだ」


「「は??」」

 私と枝利香さんが戦慄した!!

 この女子校が!!共学校になるだってえええええええええ!?


「僕も転校できるしこれで時奈さんと1年間同じ学校に通える!一年だけだけど!」

 くっ!と悔しそうに言うがもはや何言っても無駄なので諦めた。


「でもさ…お前それまで女装して通うとか弁当が時奈と同じ内容じゃ流石にバレるぞ?教室で食う時とか誰かに見られるだろ」

 すると彼は青ざめた。


「ううっ!!ううううっ!!」

 もはや泣きそうなので


「わ、私が頑張って違う内容の作るよ!」

 とつい言う。


「それは出来ない!そこまで甘えられない!時奈さんのお弁当は楽しみの一つだけど4月まで我慢してシェフに作らせよう!」

 そのシェフほんと誰だよ!!


 すると予鈴が鳴り昼休みが終わる。彼はボタンのスイッチを入れまたカナリア女子になった。


「それじゃ行きましょうか!戦場へ」

 と美少女が物騒なことを言い放つ。


 教室に戻ると私の席に何か光るものが見えた。

 あ、また画鋲だろうか?

 と思ってたら美少女の彼が派手にこけた。椅子は倒れ画鋲も転がった。


「ごめんなさい!雪見さん!すぐに戻すね?…あれ?画鋲が落ちてる…?おかしいなぁ…他にも危ないもの落ちてないかチェックしないとね?ごめんね雪見さんちょっと待っててね!」

 と美少女のチェックが始まりクラスの女子の何人かは青ざめて見ていた。


 すると机の端にカッターの刃を見つけたり消しゴムに針の穴で刺したようなボコボコが次々と見つかり、それをスマホで委員長が録画していた!!


「誰だろう?こんなことしたの…この学校は虐めなんてないと思ってたのに!誰ですか?こんなことしたの?彼女に何の恨みがあるんですか?」


「あ…あの…」


「とりあえず帰ってヤーチューブに流そうね?虐めダメっ絶対!!」

 と美少女が手を組んでウルウルし始めた!


「これは良いですねっ!チャンネル開設しましょう!!【今日の虐めの手口は!?】で毎日UPしてきますか!!」

 と委員長が煽り、その日から私の持ち物などに悪さされる確率がグンと減ったのだった。


 しかも…美少女の彼がヤーチューブに出るようになり男性から爆発的な人気を巻き起こし美少女は人気ヤーチューバーになってしまった!!

 しかも委員長は儲けが出てニヤニヤしている。


「もうどんどん虐めていいのよ?どんどん晒すからね?あんた等の醜悪な現場を!」

 と委員長と美少女はタッグを組み笑った。


 放課後になると一旦逆方向に美少女と別れると

 高級車から偽物の精巧な吉城人形が顔を出して途中で美少女を誰にも見られない場所で拾っていくという生活が続いた。


「はあ、やっとカツラ脱げるわ!」


「つ、辛いなら無理しないでいいのに」

 と言うと


「時奈さんの為なら全然辛くないよ!後数ヶ月したら普通に男のままで登校できるしね」

 とギュッと抱きしめられるがまだ女子の服だし化粧も完璧だし胸はあるしでもはや百合にしか見えんがな!

(くっ!でもこんな美少女になら抱かれてもいいかも!)

(何でこんなに完璧なの?)

(あ、吉城人形がジイッと見てるよ!何あれ)

(ていうか吉城人形使わなくなったらもらえないかな?高そうだし無理か??)


 *


「雪見時奈ああああ!!」

 と辰巳真理亜は怒りに震えた!

 ボイスレコーダーを盾に取られ派手な動きを封じられ細かい自然な嫌がらせを繰り返していたのにあの美少女転校生が来てからことごとく失敗している!


「何なのあの美少女は!雪見時奈の知り合いみたいだけど!!」

 探偵を雇ってみても何かさっぱり分からないというか探偵の記憶が消されていることがありまるでこちらの動きを把握しているような。


「それにあの委員長も目障りすぎる!チョコチョコ動いてっ!不良も目を光らせているし!これじゃまるで鉄壁の守りだわ!!どうしてくれようか!!雪見時奈!!」

 ヤーチューブのせいで美少女が虐めの痕跡をUPしたせいで男性からの支持が上がりついでに

(雪見時奈虐めを辞めろよ女共!)

 との声が上がり始めた。


 なんて忌々しいの!

 辰巳真理亜はギイイイイッと歯軋りした。

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