第62話 悪趣味な闘い

 僕はインドさんと敵のいる船の下の階に降りた。インドさんがパソコンで


(熱源は1体?おかしい…用心しろ!)

 と警告する。


 下の階は広いフロアが広がりそこに丸メガネをかけた小太りの爺さんが白衣を着て立っている。横には…

 なんと…父さんと母さんが立っていた。


「は?うそ…だろ?」

 僕は震えた。


(おいイケメンしっかりしろ!あれはお前のご両親じゃないぞ!隣にいるセントユニバースの科学兵器開発の科学者山根博士が作ったヒューマノイド兵器だ!まさか完成していたとはな!)

 とインドさんがパソコンに打ち込んだ。


「な…何でそんなものを造ったんだ!」

 すると山根博士は笑い、


「ふひひひひ!これは我が最高傑作だ!性能も抜群!栗生院吉城よ!お前の両親を傷つけることができるか?そう!お前の弱点を利用した完璧な兵器!…こっちはトウマックスにこっちはアヤノリカだ!!どうだ!凄いだろう!」

 と山根博士は笑う。


 そこに電話が鳴った。僕はスマホに出る。


「はい」


「こちら蒼い稲妻。戦闘員E応答せよ」


「してますよもう。何ですか?」


「こちらは制圧完了した!総帥の紅は毒を受け虫の息だ」


「へえそうですか…殺す手間が省けそうだ」


「…黒幕の栗生院蔵馬は死亡した…。紅ではなく最期は自害した……。事実上セントユニバースはもう機能していない。そちらの敵にも伝えてやれ!ではこちらも迎えをよこす」


「……叔父さんが…死んだ………そう…ですか…」

 と僕は蒼太郎さんにお礼を言い通話を終えた。

 しばらく呆然としていると横からインドさんはパソコンでカタカタ打つと


「聞イタカ…クソデブ博士!セントユニバースハ壊滅シタ。栗生院蔵馬モ死ンダ!無駄ナ抵抗ハ辞メテ投降シロ!」

 との機械音声で伝えた。


「蔵馬氏が死んだだと?デタラメを言いおって!あいつが死ぬ筈ないだろう?騙そうとしても無駄だ!お前達はこの私のトウマとアヤノにこれから殺されるのだ!!」


「アホメ!…オイ、イケメン!オ前ガコノガラクタニ触レナイナラ俺ガブッ壊シテヤル!…早ク目ヲ覚マセ!オ前ノ両親ハトックノ昔ニ死ンダ!」


「解ってますよ…」

 そう…解ってる…あれがガラクタ人形だってことくらい。死んだ人は生き返らない…。だが…あまりにも精巧すぎる…何だって言うんだ!胸糞悪い!


「行け!トウマ!アヤノ!殺せ殺せ殺せえええ!!」

 と二人に指示すると二人は手首をパカりと外すとビーム砲を撃った。


「くっ!」

 僕は左に避けインドさんは右にパソコンを持ち転がった。


「パソコン壊レタラドウスンダバカ!」

 と突っ込み入力してる場合じゃない!

 しかしビーム砲は連続で三発しか撃てないようで三発撃ったら少し充電が必要な様だった。


「むう…やはりビームは効率が良くないな!次だ次!」

 と山根博士が命じると近接戦に切り替えたのか突っ込んでくる。父さんに似た人形にどうしても怯む。



「吉城…お土産を楽しみにしていろよ?」

 と綺麗な顔で微笑む父親のあの時が一瞬脳裏に浮かんだ。


 気付いたら僕は人形の父に顎を殴られさらに高速移動で背中を強く回し蹴りされる。

 床に倒れるがすぐに羽交い締めにされ骨を折られそうになる。


「ぐあっ!」


 インドさんを見ると母さんに似た人形にマシンガンを放っている。アヤノの肌に穴が開くが数秒で穴が塞がっていく。


「ふひひひ!見たか!これぞ科学の進化!自動修復機能!!私はやはり天才だった!ふひっ!」

 と山根博士は腹を揺らして踊る。


 インドさんは一端、高速で距離を取り手榴弾を投げた。しかしそれが爆発する前にアヤノは高速で動き手榴弾をパクリと飲み込んだ。腹の中で爆発音がした。


「ふひひひ!爆弾処理も完璧!!天才だね!」

 とまた山根博士は踊った。


 インドさんに汗が見えた。

 僕は父に締められながら思い出していた。

 まだ幼い幼稚園児にも関わらず、プロレス技をかけられ


「吉城…こうやって羽交い締めにされたら…まず相手の腕を掴め、すると力が分散するからその隙に肩をすくめて頭を下げろ!息が楽になったら相手のふくらはぎに自分の足をかけて身体を180度回転して離れたら素早く一撃をくらわせろ!」


 そして僕は無意識にそれを人形に使った。

 ガシャンと音がして倒れた人形の

 頭を掴んで首にアーミーナイフを突き刺して動かした。


 ガリッ!ゴキッ!ミシリ!

 嫌な音がした。


「うあああああああああっ!!」

 刃がボキンと折れたが掴んでいた頭が修復しないよう僕は力を込めて一気に引っ張り投げた。

 完全に切り離すと修復は不可能だろう。


「ぎゃあああっ!わしの最高傑作が!!き、ききき貴様っ!狂ってやがる!自分の父親を!」

 僕はギロリと博士を睨んだ。


「何が父親だ…こんな悪趣味な人形作りやがって…僕の父さんはこんなんじゃない!そしてそれを作ったお前も許さないよ?四肢を折って一生バカな物を作れないようにしてやろうか…」


「ひっ!!アヤノ!アヤノ!こっこのサイコを殺せ!早く!はやっ…」

 とアヤノの方を見た山根博士は仰天した。

 高速で動いたインドさんに胴体を真っ二つに斬られていた。

 インドさんの腕にはチェーンソーのような物が装着されていた。

 ドシャリとアヤノも倒れた。


「アヤノーーー!!!」

 山根博士は真っ青で叫び逃げ出す。


「逃すか!!」

 僕は博士を追って走る。

 しかし博士の走りは遅く直ぐに捕まえた。


「ひいっ!助けてくれ!わしは優秀な科学者だ!殺さないでくれ!殺さないでくれ頼むから!」

 なんて哀れな大人だろう…こんな奴気絶させるくらいでいいか…と思っていたらぞくりと気配がして僕は無意識に博士ごと床に伏せた。

 僅かの差ですぐ側の積荷が粉砕した。


 後ろを振り向くと首から下だけのトウマ人形が動いて光線を放っていた。倒れていた間に充電したのか?首を切り落としたのに動くとは…回路はまだ生きてるということか!


「ふひひ!バカめ!暴走したんだ!首なんか落とすからだ!こうなると動いてるものは全て殺す殺人マシーンだ!ふひひひ!」

 と博士が鼻水を垂らしながら笑う。

 バゴッと壁にぶん投げて博士を気絶させ、僕は走った。


「インドさん!!」

 さっきの所に戻るとインドさんのパソコンは壊れて彼は床に押さえられ首を下半身の無いアヤノに絞められていた。

 僕は側にあった鉄の棒でアヤノ人形に向けて投げた。

 それが胸を貫き緩んだ腕からインドさんは抜け出しアヤノを蹴った。吹っ飛んだアヤノは刺さった棒を引き抜き僕の方に正確に投げた!高速で投げたが一瞬人形が母の顔で笑って僕は避ける速度が鈍り肩に棒が突き刺さった!


「うっ…ああっ!!」

 肩に激痛が走った。


 インドは床に広がった何かの粉に指で書いた。

(イケメン…ガンバ…)

 そしてバタっと倒れる。


 ガシャリと動く僕を標的に身体だけのトウマと頭と胴体だけのアヤノが近づいてくる。

 このままじゃ挟み撃ちだ。

 畜生…胸糞悪いな。

 だがこんな所で死んでたまるか!僕は…時奈さんに約束したんだ!


 トウマとアヤノは光線をまた放とうとしていた。…何でもいい動くもの…。ポケットを探ると小さなガラス玉が出てきた…。


「吉城!遊ばない?」

 いつも暁雄さんが地下で暇な僕にこれを高速で投げて遊んでいた…。

 まさか…こんなのが役に立つとは…。


 僕はガラス玉を空中に投げた。

 トウマとアヤノはそれを追い光線を放った!

 これで充電まで時間は稼げるが…また高速で動かれるか…。どこだ!動力源は!

 アヤノの下半身は動かない。下半身にはない!さっきアヤノの左胸を貫いた。だが動いてる。


 確か…心臓は左にあると思われがちだが実は身体の真ん中にあると聞いたことがある…。人間ならの話だけど…単純にあのバカ博士が人間そっくりに造るなら…


「動力源は!真ん中かよっ!!」

 自分の肩から刺さった棒を引き抜きアヤノの胸の真ん中を貫き、高速で近づいてきた首なしトウマに僕は拳を込めて胸の真ん中を思いっきり貫いた!!


 バチバチ…


 胸に穴が空きトウマ人形は完全停止してガシャンと身体のパーツがバラバラになる。アヤノ人形も完全停止してバラバラになった。


 ズズッと壁に寄りかかり僕は痛みの中しゃがみ込んだ。息がハアハアと漏れ流石にクラリとした。


「大丈夫か…イケメン…」

 と起き上がってきたインドさんが肩を布でキツく縛った。


「……………ていうか…普通に喋れるんだ…」


「パソコンが壊れた…」

 とインドさんは悲しそうに言った。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る