【閑話】グリーンの平和
俺はヒーローグリーンこと若竹隆!
ヒーローの中でも真面目に律儀に助けを求める人の元へ駆けつける!
それが俺の仕事さ!
今日は朝から調子が良かった!
朝の占いでラッキーカラーはグリーン!
やったぜ!
煩わしい人間関係から解放され貴方は自由になれるでしょう!
また、深追いはせずにいると午後からはいい日になるでしょう!!
なんて言ったってレッドが女を引き連れバカンスでトルコに行きやがった!!
連休だし、ブラックとピンクも国内のキャットシーランドへ遊びに行った!
そしてインド人のイエローは全国カレー選手権に出場している!
つまり俺しか怪人が出たら出動できるものはいない!!
やった!!やったぞ!あいつらから解放されたよ!!
しかも今日は予約しているレア嫁の一人が届く予定だ!午後からだ!
しかしそこで司令部から連絡が入った。
「ヒーローグリーン?司令部の近江だけど…なんか怪人出たらしいわ。お前暇だろ?行ってきてな?場所は南区の駅前の展望タワーな?んじゃよろー…」
と切られた。
近江…こいつ…連休で司令部もガラガラだからって適当すぎる!
上司と女の子がいる時だけビシっとしやがって!
仕方なく俺はヒーローグリーンになってバイクに乗った。
「あ!ヒーローグリーンだ!」
公園で遊んでいる子供が指さした。
「グリーン連休なのに出動してる…がんばれー!」
と珍しく応援された!!
ありがとう!子供らよ!
お前らが前に俺のカードばっかゴミに捨ててるの見た時はぶっ殺してやろうかと思ったけど勘弁しておいてやるぜ!
タワーに着くと客の悲鳴が聞こえた。
「助けてええええ!」
おばさんが逃げ遅れて妙に生傷だらけの警備員の服を着た怪人に襲われていた。
背中にほんとは(自宅警備員)って書いてるけど自宅がバッテンの傷で消され警備員の文字だけ残っている。
「俺は自宅を卒業して過酷なサバイバルを生き残り、見事に警備員に受かったんだ!!人間共!連休だからって弾けてんじゃねーぞ!!そこのババア!ゴミ箱をひっくり返して知らんぷりしてたな?見てたからな!?」
言われたおばさんは青ざめ
「なっ、何のことかしら?あーたが勝手に転んだんじゃなくて?」
と動揺した。
「クソババア!制裁を受けろおおおお!!」
と警備員怪人が懐中電灯型の武器から光線を放った。
俺はおばさんを抱えてジャンプした!
「あっっ!れっ…なんだグリーン?」
クソババア!!お前後で交番で反省しろ!
しかもレッドって言おうとしたし!
「ちっ!ヒーローか!他の連中はどうした?」
「うるせえ!お前ごとき!この俺一人で十分さ!おら、来いよ!」
「ふっ…ゴリアン様に比べたらお前なんかバナナの糞にも劣るぜ!やってみろ!グリーン!」
そして俺と整備員怪人の闘いが始まった!
素早い動きに意外とやるなと感じた!
光線は隙がないように当ててくるから物陰に隠れながらこちらも武器を出そうとポケットのベルトから銃を出してみて気付いた。
そういや連休だから武器を整備に出しといたんだ。
代わりに入っていたのはレッドが休暇前にふざけて入れたけん玉だった。
「…………」
光線がビュンビュン飛んでくる中、俺は白旗を上げた。
ようやく光線が止まると物陰から出ていく。
「あん?どうした?さっきの威勢は」
怪人はちょっとイライラしている。
「すいません…だって武器整備に出してこれしかなくて今。今日はそっちの勝ちってことでいいんで…」
と言うと怪人がブチ切れて
「お前えええふざけてんじゃねぇぞおおおお!」
と俺はラリアットで倒れた所足首を怪人に持たれグルグル回されてゴミ箱に突っ込まれた。
仕上げに怪人にぺっと唾を吐きかけられ
「このゴミめが!それでもヒーローかよ!!オラ!人間共!こうなりたくなかったらゴミを路上に捨てんじゃねえぞおおおお!!」
と勝利の叫びを上げ警備員怪人は去って行った。
さっきのおばさんが
「やっぱりグリーンだけじゃね…」
とゴミ袋を足元に置いて去っていく。
やれやれ…深追いはするなって占いでも言ってたし。
別に悲しくなんかない。
ゴミの中に俺のカードが捨ててあった。
悲しくなんかないぞ?
俺はアパートに帰る前に風呂屋により身体を洗う。
老人がクサっと鼻を摘んだ。
湯船につかりやっと一息。
上がって牛乳を飲み干して帰路に着く。
俺のアパートは……燃えてなかった!
「今日は…いい日じゃん…」
夕日が…身に染みるな…。
あ…荷物!!
アパートの管理人が代わりに受け取ってくれていた。
「若竹さん、お疲れ様」
と渡してくれた。
「ありがとう!管理人さん!」
「皆はグリーンのこと馬鹿にしてるけど俺は応援してるからな?頑張れよ?」
「あ…ああ」
たった今負けてきたけど…次はもっと頑張るよ…。
部屋に戻るとレッドから国際電話。
「はろー?隆元気ー?俺は超元気だよ息子が」
「うるせえ下ネタ怪人!死ね!」
「怪人出た?なんか、日本のニュースこっちでもやっててお前ゴミに投げ飛ばされたの映ってて爆笑したよ!だせえ!」
「それ言うためにかけてきたのか?トルコから?」
「当たり前じゃん?最近怪人強くなってきてるから心配したんだよ?これでも…」
「いや爆笑したんだろ?もう切っていい?」
こいつと話してるとムカつくし後ろから女の子の甘えた声するしマジ切りたい!縁も切りたい!
「ああ、そうあのさ、肝心なこと言い忘れてたわ…実は…お前への土産なんだけどキモイアニメの女子のプリントTシャツこっちでも売ってたから50着くらい発送しといたわ」
「な…なんだと?」
レッドが俺に土産を!!
な、ななんて日だ!!
「いやあ、爆笑させてもらったお礼だよ、んじゃまたなー!」
と電話が切れた。
俺は嫁の入った箱を丁寧に開けて嫁を取り出して眺める。
「占いすげえな…ちょっとやってみっかな?」
今までの俺は運が無かったんだ!運さえあればこんな平和が手に入るのかも知れない!
そして占い詐欺に引っかかったのは数日後の出来事だった。
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