第36話 予定変更
「時奈さん!!」
「時奈!!」
僕と舞川さんは飲み物を口にして倒れた時奈さんに駆け寄る。
彼女を調べると首筋に赤い斑点があった。
腕に少し蕁麻疹が見られた。
側で羽音がして僕はシュッとダーツの矢を投げた。
それごと壁に突き刺さる。
それは1匹の蜂だった。
「坊っちゃま!すぐにドクターを手配いたしますので車でホテルへ!」
「わかった!!」
と僕はすぐに彼女を抱き抱え車に乗り込もうとしたが、
そこで観光客を装った男が右手を上着に隠しながら近付いてきたのを鳴島が気付き投げ飛ばした。
「っ!」
男は簡単に縛り上げられたのでプロではないな。
「坊っちゃま!お早く!ここは私が!」
「てんめえ!よくも!」
と舞川さんは既にボコボコと足でそいつを蹴りつけている。
ともかく車に乗せ僕はホテルへ向かう。
ホテルに着くと医者が待ち構え彼女を寝室まで運ぶ。
診察後、医師は
「アナフィラキシーショックですね…」
「は?何だと?」
「薬と抗ヒスタミン点滴をしておきましたのですぐに症状が落ち着くと目を覚まします。全身に毒が回る前で良かった。いくら蜜蜂でも治療が遅ければ死に関わりますので」
「そうか…」
あの店にいた蜂…確かにこの島は蜂蜜も特産だから蜂がいてもおかしくないが僕が予約した店で偶然にも蜂が出るなんて…しかも誰が刺されていてもおかしくない。
「栗生院様…一応本格的な検査は旅行から帰ってから致します。それまで彼女に蜜製品を食べたり飲んだりさせないようにしてくださいね?念のためエピペンを渡しておきますので」
コクリとうなづくと医者は部屋を出て行く。
そこでようやく時奈さんが目を開けた。
蕁麻疹も引いてきたようだ。
「う…わたし…」
「時奈さん!大丈夫?」
「私…急に声が…あ、出る…」
「今処置をしたから落ち着いてるはずだよ?苦しくない?寝てていいよ?」
と手を握る。
「栗生院くん…ごめんね?日射病なんかで倒れちゃって…お土産とか買いに行けるかな?」
と彼女は言う。
「時奈さん…日射病じゃないよ…アナフィラキシーショックだよ…」
「え?…アナフィラキシー?あのテレビでよく見るやつ?私が?まさか…」
と彼女はキョトンとした。
「おそらく蜂毒だよ、店内に蜂がいたんだ…ぶっ殺しといたけど…首筋にチクっと痛みなかった?」
すると彼女はどうだろう?と言う顔になった。
「旅行に浮かれてて虫に刺されたことに気付かなかった…」
と落ち込んだ。
「ごめんよ、もっと早く僕が気付いてれば」
「栗生院くんのせいじゃないよ、私が鈍臭いんだよ…迷惑かけてごめん…」
と彼女は謝る。
「すぐに運んで処置したから…ほんと良かった!」
一歩間違えれば死んでたことに彼女は気付かない。
僕は彼女を抱きしめると
「うぐっっ」
と例の声がした。
蜂は偶然にしてもあの不審な一般人が誰かに雇われたのは明確だ。
もしもあれが僕を狙う人の仕業だとしたら…巻き込んだのは僕。
ぎゅっと彼女を抱きしめると
「ううっ…く、苦しい」
「あ、ごめん…」
と離す。
*
「あの…私…寝てなきゃダメなの?折角来たのに…」
ええー、旅行が私のせいで台無しなんて…と点滴を見てガッカリする。
「…ごめんよ…僕がほんとにちゃんと気をつけてれば…イアでもお土産は買えるから帰りに少し時間が取れたら行こうか…無理はしない程度に」
と申し訳なさそうに栗生院くんが言う。
くっ!こんなイケメンを心配させるなんて!お土産なんてどうでもいいわ!…ん?
「イア?ここって…イアなの?はっ!何か天井丸い!」
見回す部屋は広くて天井は所々丸いドーム型だ。
カントリー調の高級家具がシンプルに置かれて可愛らしさを感じる。
「ここはイアの予約したホテルだよ…急遽運んだから…このホテルは洞窟型をしているんだ…」
栗生院くんの説明で点滴は1時間くらいで終わるけど大事をとって今日はゆっくりしてほしいとのこと。
私は海外に来てまで蜂に刺され情けなさにガッカリする。蜂め!蜂め!蜂めえええ!
「時奈さん…明日のビーチは辞めとく?ゆっくり休んでおく?また蜂や変なのが来てもな…」
と彼は考え込んだ。変なのとは??
「で、でも飛行船乗らなくていいの?あ、私はいいけど…」
って言って赤くなる。
「時奈さんが危険な目に合うようならキャンセルするよ…夕日ならどこでも見れるけど、時奈さんは1人しかいないでしょ?」
と心配される。
「う、うん…栗生院くんがそれでいいなら私は連れてきてもらった身だし、勝手に倒れたのも私だし…」
「だから蜂のせいだって!」
と彼は殺虫剤を常備しなければとブツブツ言った。
しかし、明日の予定は無くなるのか…折角水着を持ってきたけど…
いや、よく考えたら良かった!だってこんな胸晒せないわ!!
「別に水着ならビーチに行かなくてもここでも着れるけどね。上の階にプールがあるからそこで泳ごう!」
「ええっ!!プール??」
ホテルのプールなんて高級仕様テレビで富豪が泳いでるとこしか見たことない。このホテルはどんだけ高級なのか?
「大丈夫、ちょっと予定は狂ったけどプールは貸し切って2人きりにしようね、ガードマンは部屋の外で待機させるから怪しい奴はアリ1匹侵入できないよう徹底的に駆除させるよ、蜂避けの高性能低周波音装置も設置しておこう!」
とまた怖いこと言ってる。
そもそも2人きりのプールなんてめっちゃ恥ずかしいんですけど!
後私は泳ぎも下手だわ!!
ヤバイ!水着に気をとられて泳ぐことを考えていなかった!!
だってなんかビーチボールとかで砂浜で遊ぶことしか頭になかったし!
泳ぎも満足にできないなんて!プールの授業もっと頑張れば良かったああ!
その時、
「時奈!」
と枝利香さんと鳴島さんが部屋に入ってきた。
「大丈夫か?お前っ!?どうなった?」
「枝利香さん大丈夫だよ?私蜂のアナフィラキシーショックだったみたい」
「え?まじで??いつ刺されたんだよっ??…そっか可哀想にな…もう蜂蜜製品食えないな…」
と言われ今更気付いた。そうだ!もう蜂蜜食べれない!!
私はアナラフィラキシーショックと同等のショックを隠せなかった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます