第9話 病院が大騒ぎ

高級車の中で私は栗生院くんの膝の上に乗せられて足を冷やされていた。

ズキズキと痛みが走り顔も歪む。

それに栗生院くんはいつもの笑みを消して心配で泣きそうになっていた。


「大丈夫?栗生院くん…」


「は?雪見さんの方が大丈夫じゃないのに何気遣ってるんですか!」

と怒られる。いつもの余裕がないように見える。それに私はどきりとする。

いつもと違って優しいしそれに守ってくれた時は正直めちゃくちゃかっこよかった!

そりゃそうだ!イケメンなんだから!

窮地を救ってくれた彼氏にときめかないのは嘘になるけどこれは良くきく吊り橋効果?


病院に到着するとそのまま何故か担架が待っていて私は処置室に連れられていく。

ええええ!担架とか大袈裟すぎる!!

そりゃ痛いけど自分で歩けるくらいには…

横に栗生院くんが走って付いてくる。

まるでドラマのワンシーンだよ!!

こんなクソダサメガネが主演女優じゃ決まらないけど!


そして処置室で告げられたのは


「浅達性Ⅱ度の火傷ですから1~2週間で跡は消えるでしょう」

と言われた。良かった。


「むくみと水ぶくれが出てきますけど大丈夫ですよ」

あー…やだなあ…。


「では2週間入院をお願いします!費用はこちらでお支払いしますので」

と栗生院くん。


「待って!軽度なのに入院とか?」

すると栗生院くんはにこりと笑い


「しかし既に外にはマスゴミがたくさん駆けつけてるんです、たぶん店長の仕業ですがあんな中出ていけないでしょ?」


「えっ!マスコミが??」

私はビックリしたがよく考えると怪人が店に来て怪我したのは私一人だし、

それをヒーローより先に倒したイケメンまでいるのだ。

話題にならないはずがない!


私はなんと個室に移された。個室って1日いくらかかるの?


「お金は僕持ちだから気にしないで?大部屋なんかに雪見さんを入れとくとそれこそマスゴミの餌食だよ…」

と栗生院くんはテレビをつけるとなんとこの病院が映っていた!

ゲゲッ!

もう報道されとるんかーい!生中継だ!

【コンビニ女性店員怪人に襲われる!窮地を救ったのはイケメン王子様!?】

と言う見出しだ!私がクソダサメガネ女なことはバレてないのか?

しかしそこで大変見知った人物にカメラが向いた。


「今、タクシーから女性店員の両親と見られる方が到着いたしました!!」

とテレビに映っているのはうちの両親だ!

ゲゲゲッ!

地味目な二人がマスコミにマイクを向けられ


「今のお気持ちは?」


「娘が心配です!怪人に襲われたなんてさっき知って!」


「時奈は大人しい良い子なんです!怪人め、許せないです!」

おい、両親よ…めっちゃテレビに映ってるからってなんだそのばっちり決めたスーツに髪型!

明らかに美容院行ってきてる!なんて奴等だ!!


そこで場面が切替りなんと私の女子校が映り


「ここが女性店員の通っている女子校です!生徒達にインタビューしてみましょう!」

ウゲー!私の女子校まで!!


すると全く知らない女性徒の1人が画面に映り


「雪見さんはいつも大人しくて頑張ってる子です!私隣のクラスなんですけどいつも早く来て花を飾ったりして…そんな子を怪人が襲うなんて…」


「頭も良くていつも皆のために頑張ってる優しい子です」

と社会科の先生が映る。


「ええっ?」

知らん、誰のこと?私は花なんか飾ってないよ!何のこと?

ていうかあんたなんか見たこともないよ!ほんとに隣のクラスか?

先生もこの前私が居眠りしてたら罰として宿題倍にして出したじゃん!何を良い教師ぶってんの!


凄い…テレビが来ると皆全く知らないのに好きなこと言いだしてる!!


「とりあえずテレビ局とかには後で報道規制させとくね?騒がしくてごめんね」

と栗生院くんはこれが大袈裟な嘘だとすぐに判っているようだ。


そこに


「時奈!大丈夫?あ…あら?」

お母さんが来た。そして栗生院くんを見て驚く。


「時奈!お前大丈夫なんだろうな?ん?き…君は?」

とお父さんも来た。

イケメンドル顔の王子様が病室にいるのでビックリするのは当然だ。


「初めまして!僕は栗生院吉城と言います!このような形でお会いすることになり申し訳ありません!僕、時奈さんとお付き合いさせてもらっているものです!」

と栗生院くんが両親に言って


「な…う、嘘でしょ?時奈にこんなっ!こんなイケメン彼氏が!そんなっバカな!!」

失礼過ぎる!まぁ言われても仕方ないけどね!


「そうか!君が時奈を助けてくれたのか?ほ、本当にイケメン王子だ!!しかも時奈の彼氏なんて!信じられん!」

おい、信じろよ、娘の彼氏だぞ?クソサイコだけど。


「僕がもっと早く店に着いてれば時奈さんは怪我をしなくて済んだのに申し訳ありません!大事なお嬢様を!」


「君がいなかったら娘は殺されていたよ。何せ怪人だからね…ありがとう!」

父と栗生院くんはがっしりと握手している。

両親が出て行った後、


「毎日お見舞い来るね?病院ではスマホ使えないでしょ?」


「いやあの…軽い火傷なのに…」


「ダメダメ、ちゃんと安静にして治そう!ね、約束!」

と右手の小指を出す彼に私はどきりとしてしまう。

それに私は指を出して約束してしまう。

ああ、2週間も病院を出られない決定だ。

それに栗生院くんは安心した顔で微笑んだ。

だからいちいちカッコよく笑うんじゃない!

そして何だ?この心音は!


「そろそろ面会終了時間だね…痛み止め効くまで辛いだろうけど我慢してね?」

そして名残惜しそうに私の手を握る。


「雪見さん…」


「はい?」


「………な、なんでもない…」

と栗生院くんは赤くなり


「それじゃあまた来るね!」

と立ち上がり病室を出て行く。

一体何なんだ?今日の彼はおかしい。

しかし廊下からキャーキャーと声が上がった。

他の病室の客が栗生院くんを見てどっかのアイドルと思ってるんだろう。

きっと私のこともすぐ知れ渡る。


明日からまた病院中騒がしくなるだろうな…。

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