407 イケメン達のおススメ肉料理は!?
「何ですの? 何か言いたいことでもありますの?」
「い、いえいえいえっ! 今日もイゼリア嬢はとっても麗しいと思いまして……っ!」
恋するイゼリア嬢のお美しさを
ピエラッテ先輩にアドバイスされたとおり、俺はイゼリア嬢の恋心に気づいていないフリでいつもどおりに振る舞わなくてはっ!
「ハルシエルちゃん、遠慮しなくていいから、いっぱい食べてねっ!」
「テーブルの中央で取りにくいものがあれば言ってくれ。わたしが取ろう」
エキューとクレイユが俺の左右に立って話しかけてくる。
俺は改めてテーブルの上を見回した。
ローストビーフに鶏の唐揚げ、野菜の肉巻きに、照り焼き、香り高いビーフシチューまである。
テーブルの中央にででんと置かれている立派な鳥の丸焼きが超気になるんだけど、あれはどうやって食べたらいいんだろう……?
付け合わせの野菜もいろいろ置かれているとはいえ、テーブルの半分以上を占めているのは肉だ。
こんなにお肉がいっぱい並んでるなんて、食べ盛りの男子高校生としてはテンションが爆上がりだ。
あああ……っ、ハルシエルの身体が少食じゃなかったら、好きなだけ食べるのに……っ!
きっとテーブルの上の料理を全制覇するのは無理だろうから、厳選して選ばなきゃ……っ!
ううっ、でもどれもおいしそうで迷っちゃうぜ……っ!
悩んでいると、シノさんがじゅわぁぁっ、といかにもおいしそうな音を立てる鉄板をお盆に載せてやってきた。
「ハルシエル嬢、焼き立てのステーキもございますよ」
「ステーキ!?」
思わず声をはずませると、両隣のエキューとクレイユもすかさず反応した。
「ハルシエルちゃんは、やっぱりお肉が好きなんだねっ! ここのお店のステーキは本当においしいんだよ!」
「ステーキと言えば、肉を味わう王道だからな。せっかくの焼きたてだ。食べてみないか?」
二人とも両側から熱心に勧めてくれる。
うん、やっぱり男子高校生の好物といえば肉だよな、肉!
「食べやすいようにサイコロステーキになっておりますので、ぜひどうぞ。ハルシエル様、よろしければ、どれが食べたいかお教えいただければわたくしがお取りいたしましょう。もう、皆様はそれぞれお皿に取られているようですし」
テーブルの端に鉄板を置いたシノさんが恭しく申し出てくれる。
遠慮しようかと思ったが、よく見れば、俺より早く来ていたエキューやクレイユの皿にはすでにいろいろな料理が載っている。
振り返れば、イゼリア嬢はすでにリオンハルトと一緒に別のテーブルについて、にこやかに談笑していた。
と、尊い……っ! もうっ、幸せそうなあのお顔を見ているだけで、俺まで昇天しそうになっちゃうぜ……っ!
リオンハルトに恋をしていると知ったいま、リオンハルトに向けるイゼリア嬢の微笑みひとつひとつが、いままで以上に輝いて見えて仕方がない。
「ハルシエルちゃん? どうしたの?」
「な、何でもないの。えっと、たくさんあるから、どの料理にしようか迷っちゃって……」
エキューに顔を覗き込まれ、あわててごまかす。
「うんっ、わかるよその気持ち! あのハンバーグとかおいしそうだよね〜!」
エキューがにこにことデミグラスソースがかかった小さめのハンバーグを示す。
もちろん、エキューが持つお皿の上にも同じハンバーグがのっている。
ハンバーグというあたりがエキューらしくて可愛らしい。もちろん俺だって好きだけど!
「エキューが勧めたのもいいが、わたしのおすすめは隣の鴨肉のローストだな。先日、家族と行った時に出てきたが、絶品だった」
エキューに負けじとクレイユもおすすめを教えてくれる。
俺は料理を見ても、どの料理がどんな名店のものなのかさっぱりわからないけれど、きっと名だたる名店のものが集められているんだろう。
このテーブルの上の料理をあわせたら、いったいいくらの値段になるのか……。聞くと消化不良になりそうなので、あえて聞かないことにする。
俺にとっては、タダ飯ってだけで十分嬉しいし!
「え? ナニナニ? ハルちゃんにオススメを教えあってるの? オレのオススメはね〜♪」
にょっと俺の後ろから身を乗り出して、強引に会話に加わって来たのはヴェリアスだ。
「わぁっ、驚かせないでくださいよ! お皿を落としたらどうするんですか!?」
「じゃあ、オレが持ったげるよ〜♪ で、オススメを入れたげる♪」
「あ……っ」
断るより早く、ひょいと俺の手からお皿を取り上げたヴェリアスがテーブルに歩み寄る。
「ちょっ、ヴェリアス先輩っ! 待ってください! あんまり盛られたら食べきれませんからっ!」
「エキューのオススメがハンバーグで、クレイユのオススメは鴨肉のロースト、っと♪」
ひょいひょいと料理をお皿にのせていくヴェリアスをあわてて止める。
食べたいのはやまやまだけど、ハルシエルの少食っぷりは男子高校生の想像以下だろう。食べ残すなんてもったいないことはしたくない。
「おいヴェリアス! 勝手に盛りつけるな! ちゃんとハルシエルの意見を聞かないと悪いだろう!」
厳しい声でヴェリアスを叱ったディオスが、気遣わしげに俺を振り返る。
「どうだ、ハルシエル。きみが気になっている料理はどれだ?」
「え……? あの真ん中の鶏の丸焼きが気になってはいますけど……」
反射的に答えると、
「あれか。よし、俺が切り分けよう」
と、あっさり言われた。
「えぇっ!? ディオス先輩にしてもらうなんて申し訳ないですよ……っ!」
それこそシノさんに……っ! と思って見回すと、いつの間にやら姉貴の皿を持って料理を盛りつけ始めていたシノさんに、にっこりと微笑まれてしまった。
ちょっ!? さっきは盛りつけてくれるって言ってたのに、ヴェリアスが余計なことをしたから、絶対に助けてくれる気がないだろ……っ!? 姉貴と二人でいい笑顔でこっちを見てるし……っ!
イケメンどもに給仕をしてもらう気なんてなかったのに……っ!
いや、でも待てよ……っ!?
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