男なのに乙女ゲームのヒロインに転生した俺の味方は、悪役令嬢だけのようです ~ぐいぐい来すぎるイケメン達にフラグより先に俺の心が折れそうなんだが~
278 演技上達のアドバイスに、イケメン達の興味津々!?
278 演技上達のアドバイスに、イケメン達の興味津々!?
「でさぁ、ハルちゃんってば、いったいどんな魔法を使って急にこんなに上達したワケ?」
「……はい?」
脳内でイゼリア嬢と熱い友情を結ぶ未来を思い描いていた俺は、ヴェリアスの問いかけに間の抜けた声を返した。
ちょっ! 今まさに脳内で、『イゼリア嬢! 私、ずっとイゼリア嬢に憧れていて……っ!』『あら、オルレーヌさんったら可愛らしいことを言うのね。嬉しいわ』なんて二人で手を取り合ってるところを妄想してたのに、邪魔すんじゃねぇ――っ!
「確かに、どんなアドバイスを受けたのか、わたしも気になるところだな」
クレイユもヴェリアスに続いて聞いてくる。
はっ⁉ クレイユもヴェリアスももう十分に演技が上手なんだから聞く必要ないじゃん!
「さっき話していたけど……。脚本を書いてくれた人にもアドバイスをもらったんだよね?」
エキューの言葉に、なぜかイケメンどもが表情を変える。
「それは、ぜひとも聞いておきたいな」
と、リオンハルトが言えば、ディオスも、
「ああ、ぜひとも。いったいどこでどんな風にアドバイスを受けたのか……」
と、真剣な表情で同意する。
何だ何だ? 急にどうした? やっぱり脚本が素晴らしかったから、シャルディンさんのアドバイスを聞いておきたいってことか?
さすがシャルディンさん! 確かに、シャルディンさんのアドバイスのおかげで、今日の読み合わせはイゼリア嬢にも上手になったって言っていただけたもんなっ!
「確かに、今日のオルレーヌさんの演技は別人のように上達してらしたものね。秘密があるのでしたら、わたくしもうかがっておきたいですわ」
「はいっ! イゼリア嬢がお望みでしたらもちろんお話ししますっ!」
きゃ――っ! イゼリア嬢が俺に興味を持ってくださるなんてっ!
これはさっそく『ライバルからやがて親友へ』効果が出てる⁉
「えっとですね……」
背筋を伸ばしてソファに座り直し、イゼリア嬢に視線を向ける。
「その、憧れのイゼリア嬢と共演できると思うと、どうしても緊張してしまって、うまく演技ができなくて……。それを相談したんですけれど……」
きゃーっ! イゼリア嬢に『憧れの』って言っちゃった~!
内心でどきどきしながら言を継ぐ。
「そうしたら、イゼリア嬢のことを意識しすぎるのがよくないと言われまして……。舞台の上ではイゼリア嬢ではなくて、オデット姫。あんまり緊張しすぎるなら、イゼリア嬢ではなくて、別人と思って接するといいって……」
「なるほど〜! 確かにそう考えたほうが演技しやすそうだね!」
エキューが納得したように声を上げる。
「ハルシエルは優しいからな。いくら劇とはいえ、同じ生徒会の仲間であるイゼリア嬢につらく当たるのはつらいだろう」
ディオスが気遣うようなまなざしを俺に向ける。
そうなんだよ! わかってくれる⁉ この気持ちっ⁉
最推しであるイゼリア嬢につらくあたるのがオディールの役柄とはいえ……。ほんとツラいんだよ!
イゼリア嬢が哀しげなお顔を見せるだけで、俺の心がどれほど血の涙を流していることかっ! そのうち、心の出血多量で気絶するんじゃね⁉ って思うもんっ!
「だが、別人と思う程度で、そんなに急に演技がうまくなるものなのか?」
いまひとつ釈然としない様子で呟いたのはクレイユだ。
「ええとそれは、別人と思うだけじゃなく、腹立たしい相手だと思って演じるようにしたので……。思った以上に効果が出たみたいです」
「おや、ハルシエル嬢にもそんな相手がいるのかい?」
リオンハルトが意外そうに目を
いるよ! 聖人君子じゃあるまいし、そんな相手がいて当然だろ!
腐女子大魔王とか、弟を腐妄想の材料にする姉貴とか、そこでニヤついてやがる理事長だとか……っ!
あ、これ全部同一人物だわ。
いやでも、姉貴だと、前世で心に刻みつけられたぜってぇ勝てねぇ感が強すぎて、責め立てる気持ちにはどうにもなれないんだよなぁ……。だって後が怖すぎるし。
だから……。
「へぇ〜! いったい誰を想像してたワケ? もしハルちゃんに嫌な思いをさせてるヤツがいたら、オレがただじゃおかないぜ?」
不穏な表情で口を開いたヴェリアスの言葉に、他のイケメンどもも顔を引き締めて頷く。
えっ⁉ なんでいきなり張り詰めた空気になってんの⁉
っていうか……。
「いえあの、私が想像して責め立ててたのは、他でもないヴェリアス先輩ですけど……?」
告げた瞬間、沈黙が落ちた。
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