237 イゼリア嬢と二人っきり!?
「あのっ、イゼリア嬢! 少しよろしいでしょうか!?」
すったもんだはあったものの、無事に残りの配役も決まり、食後のお茶とケーキも終わって解散となったところで。
俺は気合をこめてイゼリア嬢を呼び止めた。
「何ですの?」
振り返ったイゼリア嬢が、いぶかしげにアイスブルーの瞳を細める。
「あのっ、先ほど、『白鳥の湖』のラストは、ハッピーエンドがよいとご提案くださったでしょう? そのことで、もっとイゼリア嬢のご意見をうかがいたいと思いまして……っ!」
俺はあわてて説明する。
やっぱり、変えるならできるだけイゼリア嬢のご希望に添いたいもんな! 聞き取りをするついでに、イゼリア嬢と二人っきりでおしゃべりできるし……っ! 我ながらいいアイデアだぜ!
「よろしければ、この後、少しお時間をいただけませんかっ!?」
祈るように告げると、
「そういうことでしたら、かまいませんわ。今日は屋敷へダンスの先生が来られることになってますから、あまりゆっくりとはしていられませんけれど……」
と、こくりとイゼリア嬢が頷いた。
「では、このまま生徒会室を使うかい? それとも、わたし達も同席したほうがいいのかな?」
さらり、と金髪を揺らして首をかしげたリオンハルトに、俺が答えるより早く、イゼリア嬢がふるふると首を横に振る。
「い、いえっ! わたくしとオルレーヌさんの二人で大丈夫ですわ! ねぇ、オルレーヌさん!」
「は、はいっ! もちろんです! 私とイゼリア嬢の二人っきりで大丈夫です!」
ふぉおおおおっ! イゼリア嬢が俺と二人っきりになりたいって言ってくださるなんて……っ!
何これナニコレ!? 放課後の生徒会室にイゼリア嬢と二人きりだなんて、これからいったいどんなイベントが起こるんですか!? いやが上にも期待が高まるんですけど……っ!
最推しのイゼリア嬢と二人っきり……っ! なんて甘美な響きっ!
なんかもう、実際に二人っきりになる前に、想像だけで鼻血を噴きそうなんですけど……っ!
「では、お茶のお代わりとお菓子をご用意いたしましょう」
シノさんが心得たように告げる。
「いえ、お茶だけでけっこうですわ。あまり長居する気はありませんし……」
えぇぇ~っ! そんなぁ~っ! イゼリア嬢! せっかくの機会なんですから、きゃっきゃうふふとガールズトークをしましょう! 俺、イゼリア嬢となら何時間でも、徹夜して一昼夜でも、一緒におしゃべりできますから!
「イゼリア嬢! お話ししやすいですし、お隣に行ってもよいですか!?」
返事も待たずに立ち上がり、いそいそと移動し始めた俺に押し出されるように、リオンハルト達も立ち上がる。
「では、わたし達はお先に失礼するよ」
「リオンハルト様、皆様、ごきげんよう」
「はいっ、さようなら! 忘れ物はないですよね!? お疲れ様でした~っ!」
鞄を持って生徒会室を出て行こうとするリオンハルト達に、イゼリア嬢がしとやかに一礼する。俺も笑顔で挨拶をした。
さあっ! イケメンどもはとっとと帰れ! 一分一秒でも早く、俺をイゼリア嬢を二人っきりにしろ――っ!
イケメンどもや姉貴が生徒会室を出ていき、紅茶のおかわりを持ってきてくれたシノさんも下がった瞬間。
「イゼリア嬢っ!」
「きゃっ! 何ですのっ!?」
突然、イゼリア嬢に向き直って身を乗り出し、がしっと両手を掴んだ俺に、イゼリア嬢が小さな悲鳴を上げる。
悲鳴であってもイゼリア嬢のお声ってば可愛い……っ! ずっと聞いていたくなるお声だぜ……っ!
「いえっ、私のお願いを聞いてくださった感謝をお伝えしたくて……っ! お時間を取ってくださって、本当にありがとうございます!」
しかも俺と二人っきりなりたいだなんて……っ! 天にも昇る気持ちです! いや、今、こここそが俺にとっての天国です! 聖地です!
ああっ、このまま時間よ止まれ……っ!
「だ、だからと言って、急に手を握らないでくださるっ!?」
きっ! と俺を睨みつけたイゼリア嬢が、邪険に手を振り払う。
ああっ、イゼリア嬢のお手が離れてしまった……っ! でも手のひらに残ったぬくもりだけでも十分ですからっ! 今日は帰りの電車で絶対に吊り革を握らずに帰って、家で手のひらを眺めてによによしよう……っ!
「それで、聞きたいことは具体的には何ですの? なければ帰らせていただきますけれど?」
冷ややかな声に、妄想に陥りかけていた俺は、はっと我に返る。
イゼリア嬢ご本人が目の前にいらっしゃるのに、それを放って妄想の世界に行きかけるなんて、馬鹿馬鹿っ! 俺の大馬鹿者――っ! イゼリア嬢に失礼すぎるだろっ!
だが、帰るなんて言いながらも、優雅に椅子に腰かけたイゼリア嬢は立ち上がる様子もない。
もーっ、イゼリア嬢ったら俺を驚かせるなんて――っ! そんなお茶目なところも可愛すぎますっ!
それは「わたくしにかまってくださらないと
も~っ、イゼリア嬢ってば、ほんとツンデレなんですから~っ! そんなところも可愛すぎてによによが止まらないんですけれどっ!
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