男なのに乙女ゲームのヒロインに転生した俺の味方は、悪役令嬢だけのようです ~ぐいぐい来すぎるイケメン達にフラグより先に俺の心が折れそうなんだが~
235 イゼリア嬢からのご提案に否と言うワケがありませんっ!
235 イゼリア嬢からのご提案に否と言うワケがありませんっ!
「ハルシエル、そんなに『白鳥の湖』に思い入れが……」
「事前にそこまで考えてくれてたなんてすごいね!」
ディオスとエキューが感心した声を上げる。リオンハルトがゆったりと頷いた。
「王子側で二人、ロットバルト側で一人増やすという配役は、バランスもとれていていいと思うよ。実際のところは台本を見てみないとわからない部分もあるだろうが、方向性としてはそれで進めていいのではないかな?」
テーブルの面々を見回したリオンハルトに、他のメンバーも同意の頷きを返す。
「じゃあ、それで台本を変更してみますね! ありがとうございます!」
やった――っ! これでイゼリア嬢のヒロインが守られたぜ――っ!
「文化祭は十一月だからね。無理をしなくて大丈夫だよ。もし困ったことがあったら、いつでもわたしに相談してほしい」
にこやかに微笑むリオンハルトに、割って入ったのはクレイユだ。
「いえ、会長であるリオンハルト先輩にお手数をかけては申し訳ありません。ここは、文化部長であるわたしが引き受けましょう。ハルシエル嬢、相談なら、わたしが受けるから何でもわたしに言ってくれ」
「え~っ、クレイユこそ、文化部長なんだから、これから準備でどんどん忙しくなるじゃん! ってワケでハルちゃん、相談ならオレがいっくらでも乗るからね~♪」
「あっ、あの……」
シャルディンさんに相談に乗ってもらうから、イケメンどもはまったく全然お呼びじゃないんだが……。
でも、シャルディンさんには、協力することを内緒にしてほしいって頼まれてるしなぁ……。
っていうか、もしシャルディンさんがいなかったとしても、イケメンどもに相談する気なんざ、欠片もねーよっ!
「ごめんね、ハルシエルちゃん。僕も手伝えたらいいんだけど、あんまり役に立てる気がしなくて……」
エキューがしょぼん、と肩を落としてうなだれる。
いやっ、それでいいんだぞ、エキュー! リオンハルト達もエキューを見習え!
「いえっ、『白鳥の湖』を提案したのは私ですし、責任を取って、まずは私ひとりで考えたいと思います! 図書館で台本も借りてますし!」
毎年、文化祭で演劇をするクラスが少なくないからだろう。広い図書館の一画には、戯曲や演劇関係のコーナーがあって、そこで『白鳥の湖』の台本もあったのだ。文才のない俺じゃ、さすがに一から書くなんて真似はできない。
「私だって、生徒会の一員ですし、自分の責任を果たせるように頑張ります!」
だから、放っておいてくれたらいいから!
きっぱりと言い切ったところで、イゼリア嬢が遠慮がちに俺を呼んだ。
「……その、オルレーヌさん……」
「はいっ! 何でしょう!?」
思わず食い気味に減じすると、イゼリア嬢が
「その……」
言うか言うまいか迷うように、アイスブルーの瞳が揺れる。可憐な面輪は恥ずかしそうに、うっすらとピンク色に染まっていた。
えっ!? 何これ滅茶苦茶可愛いんですけどっ!?
うっすらと頬を染めてもじもじしているイゼリア嬢なんて、激レア過ぎる……っ!
恥ずかしがりつつも、何かを懸命に伝えようとする姿に俺の妄想がぎゅんぎゅんと加速する。
もしかして……っ! 俺、今から告白されたりしちゃうのっ!? バッチ来いですっ、イゼリア嬢っ! イゼリア嬢の熱い思い、バッチリがっちり受け止めてみせますからっ!
どきどきしながらイゼリア嬢の言葉を待っていると。
「その、配役を増やして台本を変えるというのなら……。結末も、悲劇からハッピーエンドに変えませんこと? そ、その、ジークフリート王子と、オデット姫が結ばれるように……」
もじもじと胸の前で両手を合わせながら、イゼリア嬢が遠慮がちに提案する。
「せ、せっかく皆様に観ていただく劇なのですもの。やっぱり、ハッピーエンドで幸せな気持ちで終幕を迎えてほしいと思うのですけれど……」
「イゼリア嬢のおっしゃる通りですねっ!」
俺は一も二もなく提案に頷く。
「そりゃあ、バッドエンドより、ハッピーエンドのほうが、観ている人も幸せな気持ちになれますもんね! 演じる側だけじゃなく、観客のことまで考えられるなんて、やっぱりイゼリア嬢は、なんでお優しく清らかなお心なんでしょうっ!」
天使だ……っ! 蒼天から舞い降りた天使がここにいる……っ!
ああっ、尊すぎて麗しのお姿を直視できない……っ!
「あ、あら。オルレーヌさんもわたくしの案に賛成してくださるの?」
俺の賛同に、イゼリア嬢が意外そうに目を瞬かせる。
「もちろんです!」
間髪入れず、大きく頷く。
イゼリア嬢のご提案に否を返すなんて……っ! そんな不敬、働くわけがありませんっ! イゼリア嬢がおっしゃれば、黒いカラスも白と言い切ってみせますっ!
「まあっ、嬉しいですわ!」
イゼリア嬢が薔薇が咲くように華やかに微笑む。
きゃあぁぁぁ――っ! う、麗しすぎるぅ~……っ!
この微笑みだけで、俺、もう昇天しそう……っ!
お任せくださいっ、イゼリア嬢! イゼリア嬢のお望みというのなら、俺、誰が見ても、最高のハッピーエンド! と、観客全員がスタンディングオベーションするようなエンディングを書きあげてみせますっ!
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