俺はヒロインじゃなくていいんですっ! 思惑入り乱れる文化祭準備編
232 始業式から輝きまくっているのは誰だ!?
「おはようございます、イゼリア嬢! 今日も輝くばかりのお美しさですね!」
九月一日、二学期の始業式の日。
登校するなり教室に鞄を置き、車登校をする生徒用の車停めでイゼリア嬢の登校を待ち構えていた俺は、続々と到着する高級車の中で、唯一見分けがつくイゼリア嬢のお車を見つけた途端、駆け寄った。
運転手が恭しく開けた後部ドアから優雅に降りたイゼリア嬢に、心をこめて挨拶する。
ああっ! 始業式って素晴らしい……っ!
夏休みの後半に旅行に行ったものの、その後はイゼリア嬢に会うことが叶わなかったし、いくら脳内で旅行中のイゼリア嬢の可憐なお姿をエンドレスリピートしていたとはいえ、やはり生イゼリア嬢の素晴らしさには
早く二学期が始まらないかと、毎日カレンダーを見て指折り数えながら、どれほど待ちわびていたことか……っ! まさか、こんなに学校が待ち遠しく感じる日が来るなんて、思いもしなかったぜ……っ!
「オルレーヌさん、ごきけんよう。あなたは本当に、いつも元気ですこと」
俺のあいさつに、イゼリア嬢が溜息まじりにクールに返してくださる。
ああっ! イゼリア嬢から挨拶を返していただけるなんて……っ! ビバ新学期! ビバ登校!
しかも、元気がいいって褒めていただけるなんて……っ! もしかして、旅行中に好感度が上がったりしてた!?
これは二学期の始まりから幸先がいいぜっ!
感激に打ち震えながらイゼリア嬢に見惚れていると、
「何ですの? そんなにまじまじと見ないでくださる?」
と、つん、とそっぽを向かれた。
「す、すみませんっ! 久しぶりに拝見するイゼリア嬢のお姿が、あまりに麗しくてまばゆかったものですから! イゼリア嬢は、晴天の日の太陽よりも輝いてらっしゃいます!」
はっと我に返り、あわてて詫びるが、イゼリア嬢はそっぽを向いたままだ。
「の、能天気なあなたに褒められても、言葉通りになんて受け取れませんわ! そもそも、太陽よりもまばゆいというのでしたら、わたくしではなく、リオンハルト様こそがふさわしいでしょう?」
ええぇぇぇ~~。いえ、確かにリオンハルトはキラキラしてますけど……。
なんてゆーか、リオンハルトのきらきらしさは、「電気代無駄遣いしなくていいから!」ってツッコみたくなるギラギラ具合っていうか、間近で見ると目に優しくないから、視界の端っこで光ってるだけでもう十分っていうか、むしろ俺の目に入らないとこで光っててくれたらいいっていうか……。
とにかく! いつまでもうっとりと見惚れていたい宝石みたいなイゼリア嬢の輝きとは、まったく! 全然! 違うんですっ!
イゼリア嬢がおっしゃることなら、白でも黒と認めたいところだが、こればかりは素直に頷けない。
何と言えば、イゼリア嬢のご機嫌をそこねることなく、この世で一番尊い輝きはイゼリア嬢ご本人なのだと伝えられるか悩んでいると。
不意に、周りの生徒達から歓声が上がった。
何だ何だ!? やっぱりイゼリア嬢が一番輝いていますと、俺の気持ちを代弁してくれてるのか!? と思いきや。
「きゃ――っ! リオンハルト様達のご登校よ!」
「長い夏休みの間、皆様のお姿を見ることが叶わず、どれほど寂しかったことか……っ!」
「わかりますわ! わたくしも、一日も早く夏休みが終わりますようにと、毎日祈りながら過ごしておりましたもの!」
「二学期の最初からリオンハルト様達五人のお姿を拝見できるなんて……っ! なんて幸運なのかしら!」
「本当に……っ! 天に感謝の祈りを捧げたいわ……っ!」
口々に感極まった声を上げる生徒達。
その視線が集まる先を振り返ってみれば、そこにいたのは予想通り、ちょうど車から降り立ったばかりの五人だった。
うっ! 九月の強い陽射しのせいだろうか。なんか五人ともやたらときらきらしい……っ!
あれかな? 白いシャツが陽光を反射してるせいかな?
ともあれ、ここでのんびりしていて、イケメンどもに捕まるのは真っ平御免だ!
「イゼリア嬢! 早く教室へ――」
行きましょう、と言い終わるより早く。
「おはよう。ハルシエル嬢、イゼリア嬢。朝一番からきみ達の姿を見られるなんて嬉しいよ。残りの夏休みは有意義に過ごせたかい?」
リオンハルトがにこやかに微笑みながらこちらへやって来る。
まばゆい笑顔に、何人かの女生徒が「きゃーっ♡」と叫んでよろめいたのが視界に入った。
やっぱりあれだよなっ! リオンハルトのキラキラっぷりはどう考えても有害だよなっ!?
ってゆーか、来んな――っ! お前らなんかお呼びじゃねぇっ!
が、男女問わず、車停めにいる生徒全員の視線が集中する中、生徒会長であるリオンハルトを無視して背を向けるわけにもいかず。
「リオンハルト様! 皆様もおはようございます! わたくしも皆様にお会いできて嬉しいですわ。二学期もどうぞよろしくお願いいたします」
と輝くような笑顔を浮かべ、優雅におじぎをしたイゼリア嬢に続いて、
「おはようございます……」
と形ばかりのおじぎを返す。
「おっはよ~、ハルちゃん♪ ってゆーか、何か元気ない?」
「何だと!? それは大変だ! ハルシエル、すぐに保健室に……っ!」
「いえいえいえっ! そんなことないですから! 元気ですから!」
ヴェリアスの言葉を真に受けて、あわてて駆け寄ろうとしたディオスに、ぶんぶんとかぶりを振る。
おいヴェリアス! 余計なことを言うんじゃねえ!
「大丈夫ですわ、ディオス様。オルレーヌさんは先ほど、とても元気に挨拶してらっしゃいましたから。ええ、それこそ
イゼリア嬢が優雅に微笑んでディオスに告げる。
ありがとうございます、イゼリア嬢! 俺を助けてくださるなんて……っ! やっぱりイゼリア嬢は女神ですっ!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます