第42話


 季節は変わり秋になった。

僕達はその日、秋季サッカー大会に出ていた。

 試合は相手のエースにハットトリックをされて完膚なきまで叩きのまされた。最後の選手の整列が終わると僕は悔しくて地面を強く蹴った。

僕は故郷でするべきことが全て終わったのを感じた。

履いたスパイクが重く、僕は何も言えなかった。この頃になると皆は僕が町を離れ大阪へ行くことは知っていた。

事実僕は明日大阪へ向かう。

「ナッちゃん」

 勝彦が僕に声かけ来た。

「負けたね」

 うんと言った。

「皆と最後の試合だったから勝ちたかったけど、負けちゃった」

 ツトムが僕の肩を叩いた。

「また、宮崎に帰ってきたらしよっちゃ、サッカー」

 僕は頷く。するとツトムが真新なサッカーボールを出した。するとボールをポンポンと叩いた。

「ほら、ここに皆でナッちゃんへコメントいれよう」

 そう言うとツトムがマジックで言葉を書いた。それを皮切りに試合に出た皆が次々にコメントを書いていく。

 最後に勝幸が書いた。

 じっと僕を見てそれを渡す。

「ナッちゃん、泣くんじゃないっちゃ。もう泣いたらいかん」

 そう言いながら笑うと勝幸は下を向く。

 ボールを受け取りながら僕は皆の顔を見た。

僕を見る皆のユニフォームが泥で汚れていた。その泥と汚れは今日が僕とのラストゲームだと知っていたから誰もが力を抜くことなく戦った証だ。

僕は満足した表情で空を見ながら言った。

「うん、また僕はここに帰って来るよ。それで皆と戦う。だから僕はそれまで大阪で頑張って強くなるよ。強くなって、皆に負けないくらいの大人になってまたここに帰って来る」

「本当か?」

 ツトムが少し茶目っ気ぎみに言う。

「おう!」

 そう言うと皆が一斉の僕の頭を叩きだした。

やがて叩く音が集まって僕を囲むとやがて輪になった。

 自然と円陣を組むと、僕は言った。

「頑張れよ、皆!次は負けんなよ!!絶対約束だそ!!さよなら!皆元気で!」

 皆が一斉におう!と言って円陣を崩した。それぞれの顔は皆からりとしていて莞爾とした笑顔だった。

 だれも別れの寂しさなどみじんも感じさせなかった。

 やがてそんな僕達の側に監督がやって来て言った。

「写真を撮ろう。試合には負けたけど、明日勝つための記念に」

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