第13話

自転車が夏空の下を行く。小高い山際に並ぶ住宅街の中の小さな小川を右手に見ながら僕達は進む。僕達はこの小川沿いの小さな地区を山川と言っている。静かなところでお城から下る坂道があってそこから僕達はいつも学校へ向かう。

僕達の学校はお城の中にある。お城を「飫肥城」と言った。正確に言えば飫肥城が僕達の学校だった。日本でも珍しくお城の中に学校の校舎がある。城は山城だ。だからお城を中心に方状線に伸びた道が坂道になっており、そのそれぞれの通りを学生は歩いて学校へ向かう。

僕達は広渡という地区に住んでおり、普段はこの山川を歩き、学校へと向かっている。

そう、そんないつもの登下校の道を僕達は自転車で進んでいた。




 時折吹く風が小川の上を進み、それが僕達の頬に当たっては流れて行った。先頭を勝彦と勝幸兄弟が行き、その後を少し遅れて僕とツトムが並んで進む。

 僕は並んで自転車のペダルを漕ぐツトムの方を見て、前の二人に聞こえないように小さく言った。

「ツトム、お母さんとは最近会っているの?」

 僕の声にツトムが首を振る。

「会ってないっちゃ。この前の五月の連休のときに一度。それっきりちゃ」

 ツトムは真っ直ぐ進む方向を見ている。

「そう・・」

 僕は前を向き向き直った。

 また小さな風が吹いて、僕達の頬に当たる。

「寂しく・・、ない?ツトム?」

 僕は聞いた。

 ツトムの大きく息を吸う音が僕の方まで聞こえた。

「ナッちゃん、やっぱり寂しいちゃよ」

 ツトムが僕の方を見た。

 すこし寂しそうにした瞳が僕を見ている。

「ツトム、この前の日曜日。お母さんが僕ん家に遊びに来ていたよ」

 ツトムが前を見る。

「母ちゃん・・元気にしちょった?」

 僕は頷く。

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