第39話

 私の願いを聞いてくれたルークは、私と一緒に使者と会ってくれました。

 全権王族大使との会談も約束してくれたのですが、少々問題がありました。

 それは城下で暮らす場所です。

 本当ならば、王族大使は城内に迎えて歓待しなければいけません。

 その事は何度もルークに話したのですが、私と半人間以外は絶対に城内に入れないと言って認めてくれません。


 だからまたルークを騙すことになりました。

 城を拡張してもらったのです。

 城の外側、今城下と言っている場所に、大使館を集めた出丸を作ってもらいました。

 一旦創り始めると、夢中になるのがルークの性格です。

 どんどん規模が大きくなり、城壁と濠はトーレス城程度なのですが、面積は私達が住んでいる城の八倍もの広大な広さになりました。

 

 結局大魔境の一部も内包する広大な城になってしまい、各国のある大使館坊だけでなく、商人坊や職人坊までできてしまいました。

 いえ、魔獣が闊歩する魔獣坊までできてしまったのです。

 坊とは新たにルークが創った城の出丸を区割りした呼び名です。

 坊は馬車六台が行き交う事ができるほどの大通りで分けられ、坊壁と呼ばれる砦並みの城壁で護られています。

 しかも坊壁の外側は川船が行き交う事ができるほどの濠になっています。

 まさに城の中の城です。


 各国王族大使には、十分城だと認識してもらえるでしょう。

 ルークには城ではなく城下町だと言っています。

 城に入れない外国人の家や商人の家だと言って騙しました。

「坊壁も欲しい。

 濠も欲しい。

 とても素敵ね」

 とおだてて、どんどん作らせてしまいました。

 私もちょっと調子に乗ってしまったのかもしれません。


 でもとても楽しかったのです。

 城を作り町を作るのが、これほど面白いとは思いませんでした。

 ルークも凄く愉しんで作っていました。

 正しく表現するのなら、創り出すと言えるでしょう。

 何もない所に坊壁を創り出し、砦に匹敵する大使館も何もない所から創り出すのですから。

 本当に調子に乗っていまっていたのでしょう。

 これを見た王族使者がどんな気持ちになるか考えもしていませんでした。


 そうなのです。

 父と兄がルークが塔を創り出した事に恐怖し圧倒されてしまったように、王族使者も商人も冒険者も恐怖し圧倒されてしまったのです。

 そしてその気持ちのままに本国に全てを知らせたのです。

 各国の王や重臣はこれまで以上にルークに恐怖してしまったようです。

 同時にとてつもない野心を抱いてしまったのかもしれません。

 私かルークと縁続きになれば、世界の覇者の成れるかもしれないと。

 ルークと私への縁談が山のように送られてくることになりました。

 各国の全権王族大使とその随行員全てが、ルークと私の花嫁花婿候補になってしまったのです

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