異世界転位 167話目
セレナが創った山脈に、ゴブリンが住み着いたと報告されて半月、ケン達は問題の山にロットリッヒ駐留軍と一緒にやって来ていた。
フェルデンロットからはクッコネンを指揮官にフェルデンロット軍が少し遅れて進軍しており、山の麓で合流する予定だったが、軍の中心でフェリクスや駐留軍の指揮官と進むケンは、腕を組んで悩んでいた。
「うーん、絶対おかしいよな。」
「どうしたんだケン、ここまで来てそんな顔してると兵士が不安になるぞ?」
腕を組んでウンウン唸るケンに、隣に並んだフェリクスが話しかけてくる。
「いやフェリクス、うちの山にゴブリンが出るのがおかしいんだよ。」
「……いや、ゴブリンなんかそこら中に居るだろ?」
フェリクスは何言ってるんだコイツは?っとそう言うが、ケンは少し考えてから打ち明ける。
「いやな? 前にドライトのヤツがこの森にブレスを撃ち込んでるんだ。 その時にアルヴァー達に調べてもらったんだが、フェルデンロットに近い地域、もちろんこの山脈の辺りも濃密な魔力が有って下手な魔物は10年は近づけもしないはずだったんだが……」
「そうなのか? 何か変化が有ってその効果が切れたんじゃないのか? 実際今も魔力は感じないしな。」
そう言うとフェリクスはフェルデンロット山脈の一番高い山、セレナ山を見上げる。
そう、ケン達は今、合流予定のフェルデンロット山脈の麓のすぐそばまで来ていたのだ。
「変化っても、特に変わったことなんか無いぜ? 強いて言えばこの山脈が出来たことぐらいだな。」
「山脈を創ったのはセレナ様だろ? なら問題なんか起きるとはおもえないだかなぁ。」
「そうなんだよな、ドライトのヤツなら時限爆弾みたく今になって爆発したとしてもおかしくないんだが。」
「時限爆弾ってなんだ?」
「そこからかよ……」
ケンが時限爆弾について説明し始め、ドンドンと話はそれていき小一時間経った頃。
アランがやって来てそう告げてくる。
「総督、勇者様、道が出来ました。」
「それでバニーガールってのは、お、よし、前進だ! 全軍前進を開始しろ!」
アランがやって来て道が出来たと告げてくる、そしてケンが前進を命じると馬に飛び乗りフェリクスも隣で馬に乗る。
「体操服にブルマ、水着や修道女の服か……うん、かなり開けたな、これなら軍団として前進出来るな。」
いったい何の話をしていたのやら、フェリクスはブツブツとそう呟くと前を向き確認をする。
そこには獣王国やエルフの里を有する広大な森林があり、そこにかなりの広さの道がフェルデンロット山脈へと延びていたのだった。
「隊列を組んでユックリと前進だ、一匹も逃がすな!」
「オーガが出たぞ! 陣形を変え包囲して倒せ!」
「左方向からゴブリン、およそ500!」
「オークも混じってるぞ、注意しろ!」
新しく切り開いた道を行くこと3時間、ケン達はゴブリンと戦闘になっていた。
ロットリッヒ駐留王国軍がゴブリンや、たまに出るオーガやオークを蹴散らして前進していく。
「やっぱり普通のゴブリンだよなぁ……」
「ケンの話を聞いた後だと俺も変だと感じてきたわ。
お? あれお前の所の娘じゃないか?」
「子爵様~!」
「お、本当だ、ティーアだなありゃ。」
後方からやって来たのはクッコネンの孫娘のティーアだった。 その背後にはフェルデンロット軍の姿も見える、どうやらティーアは俺達がここに居ることに気がつき先行してやって来たようだ。
「おいおい、1人で走ってきてるけど大丈夫なのか?」
「大丈夫だろ、後ろからライナーとアネットも追いかけ来てるし。」
「お、本当だ、あの子達はもうCクラスの冒険者なんだってな?」
「ああ、それにティーアはアンナ達と一緒にドライトに鍛えられてたからな。 かなり強いぞ?」
「……本当だ、前に飛び出してきたゴブリンを魔法で瞬殺してるな。」
走りよってくるティーアを眺めていると、ティーアはゼェゼェ言いながら2人の前にやって来る。
「し、子爵様、たいへんです!」
「おう、どっちの子爵様だ?」
「本当にたいへんなことなんです! 真面目に聞いてください!」
「お、おう?」
ふざけていたケンだったが、普段はおとなしいティーアに怒られて身をただす。
「ゴブリンの事を聞いたアンナちゃん達が、懲らしめてやると山に行っちゃったんです!」
「は、はあぁぁぁ!?」
ティーアの話を聞いたケンは、慌てて軍をそのままクッコネンに任せて、自分達はアンナを追いかけるのだった。
「この先がお山なのかしら?」
「森に入って結構来ましたからね、そろそろ山が見えるはずですよ!」
「フェルデンロット子爵が道を造っていたはずじゃがのう? 少しずれたかの。」
幼女3人衆は森の中をさ迷っていた、エルフのエルザが居るのでさすがに完全に迷っていないようだが、目的地からは少し離れていた。
「戦いの音も聞こえないわ、やっぱりあそこに見えてるのは別のお山なのかしら?」
「うーん、クッコネンのおじさまと一緒に来ればよかったですかね?」
「それじゃとわらわ達が活躍できんからのぅ……」
3人はそんなことをのんきに話ながらとりあえず目の前にそびえる山に向かう。
よく幼女達だけで魔物や野性動物に襲われないな? アンナ達はドライトに鍛えられていたのでかなりの実力をもつ、だが教われない理由は身に付けている装備だった。
ドライトが与えた神器、シルバークレセントムーンセットを見るなり感じ取った魔物や野性動物達は、こりゃあかん!っと我先に逃げ出しているのだ!
「それにしても静かな森なのね、ゴブリンさんもぜんぜん出てこないわ。」
「もしかしたらもう討伐が済んでいるのかもしれんのう?」
「なら……戦闘の音です!」
アクリーナが熊耳をピクピクさせながらそう叫ぶと、アンナがアクリーナの横にならびエルザが一歩下がる。
そして互いにうなづくと、一気にアクリーナの顔を向けている方向に走り出すのだった。
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