異世界転移 148話目
「まだまだ寒いな。」
「雪は大分に解けてるんだがなぁ……まあまだ2月だし、仕方ないんだろうな。」
ケンとアルヴァーは、2人でならんで帝国との国境にもなっている山脈を眺めていた。
ここは発見されたダンジョンの近くに有るハロネン子爵の領都の建設予定地で、周りの平原には窪地などに少し雪が残っていて、遠くに見える山脈にはまだまだ雪が見えていた。
そしてケンとアルヴァーの周りにはケンの兵やロットリッヒ辺境伯の兵、ロットリッヒや王都からも来た冒険者達があふれている。
「しっかし、集めすぎじゃねぇかこれ?」
「しょうがねぇだろ、王都のギルマスが召集しちまったんだし、辺境伯様は国王陛下から早急にダンジョンを何とかしろって言われたらしいからな。」
「それだよ、ヘルダのババアはコリンズから聞いて冒険者を送り込んだ、陛下も辺境伯から聞いたのは分かる。
でも集めすぎだろうが!」
そう言うとケンは周りいる2万以上の兵士や冒険者達を見回して叫んだ。
「……なんでまたこんなに集めたんだろうな、しかもフェリクス様まで寄越すとはなぁ。」
アルヴァーもそう言って首を傾げていると、そのフェリクスがペトラ嬢を伴ってこちらにやって来るのが見えた。
「おうフェリクス様、新しい浮気相手はペトラ嬢か?」
「会っていきなりとんでもないことを言うな! ペトラ嬢には案内してもらっただけだ!」
「……酷い、昨夜のことは遊びだったんですか?」
「ペトラ嬢、私が着いたのはつい先程です!」
フェリクスはそう叫んでペトラに詰め寄る。
「フェリクス様、落ち着いて。
ペトラ嬢もフェリクス様で遊ばないでください。」
見かねたアルヴァーがそう言って間に入ると、フェリクスはしぶしぶと、ペトラはコロコロと笑いながらケン達の前に来る。
「よおケン。 国王陛下の命令で助けに来たぜ。」
「冒険者ギルドの総代表として私が派遣されてきました、よろしくお願いします。」
フェリクスはここに居る全員に、先日に先に着いていたペトラはフェリクスに向かって挨拶をすると、全員で雑談をしながらダンジョンの入り口に向かう。
「しかしケン、こんなに戦力が本当にいるのか?」
「知らねぇよ、ヘルダのババアと国王陛下はドライトの言葉を重要視しているらしいが、たんに見落としていただけってことも考えられるしな。」
「でもドライト様は、自分の記憶に無いダンジョンだと断言したんだろ?」
「ええ、ドライト様も未確認で、発生したのも感知していないとのことです。
ならここのダンジョンは、邪神に関連している可能性が高いはずです、ここはできうる限り戦力を投入するのが一番の方法でしょう。」
ペトラの言葉にフェリクスは悩むように空を見上げ、ケンは嫌そうに顔を反らす。
アルヴァーは賛成のようでウンウンと頷いており、ペトラは表情を変えずにダンジョンの入り口に向かう。
何故、こんなにもの大軍がダンジョンの調査と討伐に派遣されたのかと言うと、あの日、アランがダンジョン発見の報告をした日にさかのぼるのだった。
「……俺も行けって?」
「そうです、このダンジョンの討伐にはあなたも行くのです!」
「よし分かった! アランに先陣を任せる、フェルデンロットから屯田兵を千出してハロネンの町の建設予定地に全線基地を造れ、その後はクッコネンと冒険者達を送り込み、一気にダンジョンを討伐する! 以上だ!」
「……ケンさんはどうするつもりなんですか?」
「ここで指揮を取る!」
「あなたも行けと言っているのです!」
にらみ合うケンとドライト、慌ててフェリシーが間に入り2人をなだめる。
「ちょ、ちょっと待ってくださいドライト様、ケンに行けとの命令ですが、何かしら理由が有るのなら教えてください。」
フェリシーの言葉にケンはどうせたいした理由はないだろっと、クッコネンとアランに指示を出すために向き直り、ドライトはもっともだと回りを見回してから言う。
「知っての通り私はこの世界に攻め込んできていた邪神を捕まえて、とてつもなく面白い目にあわせてます。
そしてその際に邪神を探すために私はこの世界、マナルの隅々まで探索しました! ……ですが、ここにダンジョンは無かったはずなのです!」
「前半が気になるがスルーするとして、無かったダンジョンが有るのなら新しく出来たんだろ。」
ケンはダンジョン討伐のために必要な物資や兵員を確認するために、クッコネンやアランにアルヴァーと書類を見ながらそう断言する。
だがドライトはいつになく真剣な表情で話し始める、ドテラを着ていてアンナを背負い、手にでんでん太鼓を持っているが。
「……そんなに単純なことではありません。 いいですか、私は邪神を捜索するさいにこの世界のあらゆるところに監視システムを構築し、設置しました。
しかし! その監視システムにあそこにダンジョンが発生した記録が無いのです! これは異常です、私の監視システムは並の邪神に誤魔化せるものではないのにですよ!」
ドライトの言葉に真剣に話を聞いていてフェリシーだけでなく、ケン達も驚きドライトに向き直る。
「お前、そんなもんを設置していたのかよ!」
「マリルルナさんの弱味を見つけてつけ込んでやろうと設置したものですから、かなりの物です。
それすらも感知しなかったのですから、一大事なのですよ!」
ドライトの言葉に唖然とするケン達、そしてドライトは大きな声を出してしまったのでグズリだしたアンナを慌てて落ち着かせている。
そして、この話を聞いたミラーナからの命令で、ケンは仕方なくダンジョンの討伐に来たのだった。
「それでミラーナ様が魔導具で国王陛下やらに連絡して、援軍として辺境伯の兵士やロットリッヒ駐留軍も動員されたんだろ?
それは分かるんだが……やっぱりこんなに戦力は要らないだろ。」
フェリクスはそう言って指を指す。
そこにはダンジョンの入り口が有り、辺りは整地されていて軍のテントや冒険者達のテントが多数建てられていて、多くの兵士や冒険者達が忙しそうに動いていた。
そしてダンジョンの入り口の前には―――
「準備は完了です、この程度のダンジョンなどあっという間に走破してみせますよ!」
「まあ暇潰しには良いと思うわ。」
「この世界の管理神として私達がトップで走破するのよ、いいわね!」
「龍の眷属として恥ずかしい結果は残せませんね。」
「みんなで頑張るのよ!」
ドライトとその分身体達、そしてドライトの嫁達にマリルルナが率いるマナルの神々、さらにドライト達の眷族であるキャロリン達、あと何故かアンナ達がパーティーを組んでダンジョンの前に集まっていたのだった。
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