異世界転移 117話目
「蘇生しまたしよ! 私の医術で!」
「お前のは医術じゃないだろ!」
「坊やーーー!」
「う、うそ! 生き返った!?」
ドライトのよく分からん力で子供が生き返った。
「さぁさぁ、治療しますよ!」
「壊れた壁の修理も任せて下さい!」
「ご飯はまだですか?」
よく見るとワラワラと現れたドライトの分身体達は治療や建物の修理などを始めている、3分の1ぐらいが飯の要求しているが……。
「っと言うわけで、アズ・エーギグ・エーレ・ファ、エルフの国についてはベヒーモスがやってくる前の状態まで戻してあげます。
ただし重犯罪者などは除きますが。」
「ドライト様、ありがとうございます。」
「邪神の討伐に続き、このような温情をいただけるとわ。」
「さすがはドライト様じゃ!」
ドライトを褒め称えるエルフリーデ達、だがちょっと待ってほしいと考えたケンは、ドライトの目の前に行くとにらみながら質問をする。
「アホのエルフリーデ達は誤魔化せてるが、俺は誤魔化せないぞ?
獣王アクロフの神罰の件といい、エルフの国に追い込まれたベヒーモスの件といい、お前が気づいてないはずないはずだ、なのに何で放置して……俺達を巻き込んだ!」
「ケ、ケン!?」
「ご主人様、いったい何を……。」
「お前、マジでぶっ殺す「……リア姉。」なんだよアンジェ、止める……ゲ!」
ケンの言葉にエルフリーデとクリスが驚きの声を上げ、カーネリアが何かしようとしてきたようだがアンジュラが止めてくれたようだ。
なんにしろケンの問いにドライトは驚きながら答えてくる。
「な、なんですか、私のおかげでみんな助かったのに、なんで怒ってるんですか?」
「当たり前だろうが! アクロフの件はただのごっこ遊びなんだから問題ないはずだ、実際にアクリーナに大嫌いって言わせただけだしな。
そしてアズ・エーギグ・エーレ・ファにベヒーモスが向かったときだってお前は感知していたはず、ならその時点で父親なり嫁になり連絡してればエルフ達にこんな迷惑をかけることはなかった。
なのにお前はそのどちらにも介入して騒ぎを大きくした、何故なんだ!?」
ケンが怒鳴りながら指摘したことに、ドライトは心外そうに怒りながら言う。
「何を言うんですか、これはお互いにWIN-WINなことなんですよ!
まず獣王国はフェルデンロットと関係が持て、食糧や武器防具などの売買がしやすくなりました。
エルフ達は獣王国と関係が深められて万々歳、ケンさんにフェリクスさんはエルフの種子が手に入りよかったよかった、違いますか?」
「そ、そりゃそうだが、ならなんで色々と黙ってたんだよ!」
思わず言いくるめられそうになったが、そう言い返すと、
「それはしゃべらない結果、右往左往するケンさん達を見ることが出来て私は笑えました。 ね? WIN-WINでしょ?」
「と、止めるなクリス! 本気で1回槍で刺させてくれ!」
「ご主人様、どうせ効かないんですから諦めましょう!」
「ちくしょーーー!」
ケンはドライトの余りの言葉に激昂して槍を取り出して振り回している、そしてそれをクリスが必死になって止めている。
「まったく、ケンさんは何をあんなに怒っているんですかね?
私のおかげでエルフの種子が手に入り、驚きと興奮に満ちた冒険を楽しめたのに。」
そしてそのケンを見ながらドライトはのほほーんっと見ている、だがそんなドライトに冷めきった声がかかる。
「そう、ドライトはそれが正しいことだと言えるのね?」
「撤収です!」
その声を聞いた瞬間、ドライトはディアンの手からスルリと抜け出して逃げ出そうとするが。
「……夫、切った梨を食え。」
「あ、後でいただきます、ああ!?」
綺麗に切り揃えた梨を持ったアンジュラに絡み付かれて逃げられなかった。
そして声がした方を見ると、ドライトの母親であるセレナが立っていた。
「まったくもう! なんてことをしたの!」
「で、でもWIN-WINなんです!」
「そんなわけがないでしょう!
それにあなたもあなたです、ベヒーモスを狩るのは良いとして、何故結界を張るなりして逃がさないようにしなかったのですか!」
「い、いや、久しぶり狩りが楽しめると……。」
「まったくもう! リアにアンジェもです、夫がバカをしでかさないようについていかせたのに、あなた達まで一部のベヒーモスが逃げたのに気がつかないだなんて!」
「わ、私もベヒーモスがいっぱい狩れるって思ったら……。」
「……セイネ。」
「は、はい! へ? ……えーっと、アンジェ様はディアン様とリア様は気がついてると思ってたそうです!」
「アンジェ、言い訳までセイネにさせない!」
「……ごめんなさい。」
ディアンを踏んで押さえ、ドライトを抱きしめて捕まえているセレナ、カーネリアを押さえたのも彼女のようでセレナの前でカーネリアとアンジュラが土下座をしている。
っと言うか、アンジュラは言い訳を部下にさせるなよ……。
こうして諸悪の根元はセレナに捕まったのだった。
「みなさん、今回は家の夫と息子に嫁達が迷惑をかけたわね。」
「そうですね[ゴス!]いで!?」
「い、いえ、助かった部分も有りますので、謝罪など無用です!」
頭を下げるセレナにケンがそうですねっと言うが、ミラーナが殴って黙らせて謝罪は無用だと言って頭を下げる。
「まったくもう、最近は遊び道具の神々が内輪揉めで相手をしてくれないから、暇だ暇だって言ってたと思ったらこんなことを仕出かして!」
セレナがハッキリと神を遊び道具と言いながら、ドライトを叱りつける。
それに対してドライトは、「WIN-WINです、WIN-WINなんです!」っと言いながらジタバタしているが、セレナはそれを無視している。
そしてセレナは1つため息をつくと、ドライトと踏み潰しているディアンを見て、次に周りを見回して命令し始める。
「何にしろ今回の一件は完全にこちらに非が有ります。
正式にセレナの名において謝罪します、すいませんでした。
そして、被害の補填についてですがエルフの王国の都、アズ・エーギグ・エーレ・ファに結界をドライトが新たに構築します、維持にはあなた方の力が必要ですが今現在のものと比べたら遥かに強力で使いやすくなるはずです。
次に獣王国にはより効率的な気功法の使い方と習得方法を教えます、ドライトが。
こちらもあなた方の努力を必要としますが、習得できれば魔法を使うのが苦手なあなた方自身を守る力となるでしょう
次にレーベン王国についてですが……うーん、困りました。」
セレナが今回の補填として提案した、新結界、気功法、それぞれが素晴らしいものだったが、レーベン王国の番になったとたんに悩み始める。
これには期待していたミラーナも驚いて質問をしてしまう。
「あ、あの、何故レーベン王国には何も提案してくれないのですか?」
質問をしたミラーナにアンジュラの側に控えていたセイネが「不敬ですよ。」っと言ってくるが、それをセレナが手で制して答えてくる。
「エルフにしろ獣人にしろマリルルナの信徒で子達だから、ドライトが責任をとって補填するのは問題ないのだけど、レーベン王国、いえこの場合はケンさんにはあまり良いものを与えられないのよ?」
「な、何故ですか!?」
セレナの言葉にミラーナは思わず叫ぶようにそう言うと、セレナは心底困ったように言う。
「ケンさんはドライトの使徒でしょ? つまり部下なら上司の理不尽にもある程度は付き合わないとだから……。」
「「「そんな理由で!?」」」
しょうもない理由で褒美がもらえないと知り、ミラーナやフェリクス達はあ然とするのだった。
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