異世界転移 115話目
「ほぅ……我が威圧を受けて動けるか。 名を聞いてやろう。」
「ぐ……! てめぇに名乗る名などないぜ!」
「ハハハ、なるほど、死にたいのであれば早く言えばいいものを、永遠の死をくれてやろうぞ。」
ケンの啖呵に黒龍は笑いながらその身からあふれる力を増したのだった。
「ちょっとケン! 死ぬなら1人で死んで!」
「そうじゃ、エルフを巻き込むな!」
「さすがに不味すぎるだろ……。」
「ははは、我等の力を結集してなんとかなるとか言う相手ではないな。」
ケンの言葉にエルフリーデ、フリッツ、フェリクスにアクロフが汗をダラダラ流しながらそう言うが、ケンは黒龍を見ながらさらに言葉を続ける。
「ふん! だいたいなんだその黒色は、テクタイトのマネか?
それにしては色が違うな!」
「貴様……我が黒色をテクタイトより劣るとでも言いたいのか?」
怒りのためか黒龍は声を潜めながらケンに問いただす。
ケンの周りではコイツはなんて事を! っと言った感じで皆がケンをにらんでいるが、体が動かないのか止められずにいた。
「ふん! だったらどうしたと言うのですか!」
「よし、我がブレスに耐えられれば赦してやろう。
周りの者達は運がなかったと諦めるんだな! [バシン!]ぬぅ?」
「ディアン様、あれあれ。」
とうとう黒龍は激昂してブレスを放とうとしたが、いつの間にか現れた赤い龍が尻尾で頭を叩きアンナ達を指差す。
「……何か居るな?」
「それにほら、暴言を吐いたあいつも真っ青になって否定してるし。」
そう言って赤龍がケンを指差すと、いまだに黒龍をバカにするようなことを言っているが、顔色は真っ青だし手を振って必死に否定していた。
「よし、嬢ちゃん達、退きな。」
アンナ達の目の前まで移動してきた赤龍はそう言って、アンナ達の中心に居る何かを確認しようとする。
「ダメなのよ、ここはゆずれないのよ!」
「死守します!」
「わらわ達も守るべきものが有るのじゃ!」
「うん、私達は逃げたいわ。」
「足が動かないのです!」
「私なんか少し漏らしちゃったわよ!」
「ここで死ぬのかぁ~、これから子供をバンバン作って繁栄する予定だったのになぁ~。」
だがアンナ達は決死の覚悟で動かず、パール達は黒龍の威圧で動けなくなっていたようだった。
っと言うかアルマは漏らしてるようだし、ポリーは全てを諦めて逆に穏やかな表情になっている。
「仕方ないね……ほら、動けるだろ? ちょっと退かしてくれねぇかな。」
赤龍が何かしたのかクリスやパトリシア達が動けるようになり、慌ててアンナ達やパール達を回収する。
「やーなのよ! ここを守るのよ!」
「良い子だから来なさい!」
「お、お祖父ちゃんにリンカさん、私は動きません!」
「姉者もフリッツも近づくでない、ち、近づくでないわ!」
「た、助かった……出来ればこのまま世界の果てまで連れていって。」
「私は、何処かの個室で着替えさせて。」
「私は産婦人科にお願いします~。」
「大混乱なのです!」
アンナ達はドライトを守っているつもりなのか姉や祖父等に抵抗して必死になっている、対してパール達は自分から移動して逃げていった、チェルシーは何故か残っているが……。
なんにしろアンナ達と言う壁が無くなった先には、寝そべって梨等の季節の果物を食べながらマイクを持ったドライトがいた。
「なんか赤いのもいますね、赤いと言うことは炎でも吐けるんですか? 吐けるものならそちらに用意したバーベキュー用の炭に火でもつけておいてくださいよ。」
そしてドライトがマイクに向かってそうしゃべると、ケンの口から同じ言葉が紡ぎ出される。
そして赤龍がヒクヒクとしながら見ると、ドライトが指差した先にはバーベキュー用と書かれた炭の箱が置かれていた。
そしてドライトが出てきたところで黒龍はフェリクスを掴んで捕まえると、顔を寄せて何かをボショボショと言う。
驚いた顔でフェリクスは黒龍を見ると、諦めた顔をして叫ぶように言う。
「……この黒龍の黒は本当に汚い色だな! 正直、塗り直した方がいいと思うぞ!」
その声に今まで身を縮めて果物を食べながらマイクを握っていたドライトは立ち上がって叫ぶ。
「なんですと! 父様の黒色をバカにするんですか! 正直、もし私が銀色でなかったら父様の様な黒龍になりたかったほどの綺麗な黒色なのに! 今の銀色は父様と母様の色を同時に受け継いだ色だと誇りをもって言えますが、男の子として黒も良かった、出来れば父様の様な綺麗で格好いい黒も良かったと言えるほどなのに!」
立って怒り始めるドライト、それを見聞きして黒龍は泣きながら「我が龍生に一変の悔い無し!」なんて言い始めている。
そして赤龍をはじめ全員がドライトと黒龍をあきれて見ていると、ドライトの背後にいきなり水色の髪をオカッパにした美少女が現れ皆がギョッとする。
それこそ本当になんの前触れもなくいきなり現れたのだ、そしてその少女は右手に梨を握っていた状態で振り上げると、ドライトの頭に振り下ろした!
「……食らえ。」
[ゴッ!]
「梨痛い!? ……ってアンジェ!」
「……夫、……梨は美味しかった?」
「汁は最高でしたが実も食べたかったです!」
こうして、アズ・エーギグ・エーレ・ファに龍が4体も現れてしまったのだった。
「息子よ! 父は嬉しいぞ、我が色をそんな風に思っていてくれたなんて!」
「と、父様、抱っこはともかく舐めるのは止めてください!」
ドライトはあっという間に泣く黒龍に捕まり、ペロペロと舐められている。
ちなみにフェリクスは黒龍がドライトを捕まえるときに城壁の外に投げ捨てられている。
まぁ、あいつの事だから大丈夫だろう。
「ったくもう、あの親子は……。
ああ、あっちはほっといて私の名はカーネリア、気安くリアって呼んでくれ。」
「……アンジュラはアンジェ。」
そう言って赤龍と水色のオカッパ頭の少女は自己紹介してくる。
そしてケンの方を見ると、アンジュラと名乗った少女はカーネリアと名乗った赤龍の手招きして、耳が有る辺りに顔を寄せるとボショボショと何かを言っている。
そしてカーネリアは―――
「おめぇさ、いい加減に人見知りとしゃべるの嫌がるのを何とかしろよ……。
それでお前、お前がダーリンの使徒か? シリカの姉御やアンジェの言う通り、パッとしねえな?」
っといきなり言ってきた。
「……へ?」
あ、あの美女はそんなことを言ってたのかよ!
「あ、あの、良ければどのような方々なのか教えていただければ……。」
俺とカーネリアの話に入り込んできたのはエルフリーデだった、本人は嫌がっていたがパトリシアやミラーナに背中を押されて嫌々に言ったようだ。
「あ? てめえダーリンの使徒との話し合いに割って入るって「……リア姉。」っち、あたいはドライトの第3夫人でアンジェは第4夫人だよ、あっちの黒いのはダーリン、ドライトの父親のディアン様だ、不敬が有ればこの世界ごと滅ぼされるから気をつけろよ?」
カーネリアはそんなエルフリーデをにらむが、アンジュラが間に入り舌打ちをして説明をしてくれる。
そしてその説明に、ますます真っ青になるケン達だった。
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