異世界転移 103話目
「むふぅー! 今日はドラしゃんとそのお母しゃんもいるのよ? 気合いを入れて見回るの!」
アンナは気合いと共にチビッ子軍団に号令をかける。
「「「頑張るぞ(わ)!」」」
「「「があぁぁぁ!」」」
号令にチビッ子軍団と子竜達も答えて叫ぶ(吠える)と、アンナは満足そうにうなづきドライトとその背後に居る者達に向き直り敬礼しながら言う。
「ドラしゃん、それにドラお母しゃんも見ててくだしゃい、私は頑張るのよ!」
アンナは緊張してるのか一回噛むが、ドライトとその母親にペコリと頭を下げて挨拶をするとトコトコと城壁沿いに歩き始める。
それをニコニコと見守りながら後を追う美女セレナ、そしてさらにその後ろを自慢気に歩こうとするドライト。
「……あれ?」
だが進まなかった、アンナやチビッ子軍団に母親が遠退くのでドライトは慌てるが、そこで気がつく。
なんと自分が角を掴まれて持ち上げられていることに!
「だ、誰ですか、私の角を掴んで持ち上げているのは!?」
ドライトは顔の向きを変えようとするが、角を掴まれているために体の向きが変わるだけだった。
そんなドライトに冷めきった声がかかる。
「俺だよ。」
「オレオレ詐欺になんか引っ掛かりませんよ!」
「ケンだ、フェルデンロットのケンだ。」
「ケン? ……志村けんさんですか!? 是非ともサインを!」
「違うわボケ! お前がこの世界に送った、都造 建一だ!」
「記憶にありません、人違いじゃないですか?」
「お、おま「ご主人様、おちついて、ドライト様もご主人様で遊ぼうとしないで下さい。」フゥーフゥー……よしドライト、お前が持ち逃げした石材を返せ。」
クリスに止められ、深呼吸をして落ち着いたケンはドライトに石材を返せと言う。
だがドライトはキョトンとすると、ケンの手からスルリと抜け出して腕を組んで考え始める。
「ドライト様、私の、シュテットホルンから持っていった岩山のことです。」
フェリクスにそう言われてドライトは何かを思い出すように首を傾げる、そしてハッとして懐から小石を1個取り出す。
「「「………………え?」」」
ケンだけでなく、フェリクス達もドライトが持ち去った岩山を出すと思って身構えていたが、差し出されたのが小石だったので拍子抜けしていると、ドライトの背後にアンナを抱っこして戻ってきたセレナが声をかけてくる。
「ドライト、あなたこの間の温泉地にピラミッドを造ってたでしょ?
なぜか自分の亜空間に石がたくさん有るって言って。」
「な!? お、お前まさか……。」
それを聞いてケンが驚きながらドライトに向き直る、するとドライトが言う。
「忘れてて使っちゃいました!」
その言葉に天をあおぐのだった。
「まったくもう、ドライトったらうっかりさんなんだから。」
「すいませんでした、ごめんなさい!」
にこやかに笑いながら美女、ドライトの母親のセレナは叱るようにドライトの頭を軽くコツンとする。
ドライトも素直にあやまるが、ケン達にしてみればあやまって済む問題ではなかった。
「まいったわ、今回の城壁分以外はドライト様が持っていったのをあてにしてたんだけど、それがなくなっちゃったわ。」
「……冬の計画を縮小しよう、民には大きな建物の中で集団生活をしてもらう。」
「ケン、いくらなんでもそれはなぁ……半年以上になるとまずいだろ?」
ミラーナの言葉に一瞬考えてケンが決断をするが、フェリクスがまずいんじゃないのかと言が。
「仕方がないだろ、無いものは無いんだからな……諦めるしかねぇよ。」
「そ、そうね……申し訳ないけど、民には耐えてもらいましょう。」
ケンとミラーナはそう言って諦めの表情だ、クリスも落ち込み周りの雰囲気が暗くなったのに気がついた、セレナに抱っこされたアンナも泣きそうになる。
すると―――
「ふぅ……仕方がないわね、ドライトに非があるし、アンナちゃんは泣きそうだから今回は特別よ、サービスもしてあげるわ。」
アンナを抱っこしたままのセレナはそう言うと、腕を一振する。
「な、なんだ!?」
「うお!?」
「ぐ、セレナ様!?」
ケンとフェリクスにテクタイトが真っ青になってセレナから飛び退き距離を取る。
それにたいしてミラーナやクリスに、パトリシアはと言うと。
「へ? な、何よケン、どうしたのよ!」
「ご、ご主人様?」
「フェリクスにテクタイト様も、何かあったんですか?」
平然としていて逆に飛び退いたケンとフェリクス、何かに耐えるように踏ん張ったテクタイトに不思議そうな視線を向けている。
「おいケン、お前の方が龍との付き合いが長いんだ、今のは何だったのか分からんのか?」
「全然分からん、魔法に近い、いや、魔力そのものが溢れ出したように感じたが……」
そしてケンとフェリクスはと言うと、2人して完全武装になっていて槍と大剣という自分達の得意の獲物を持って構えていて何があったのか相談している。
するとテクタイトが「あれを見てみろ、そう言うことだ。」っと言いながらフェルデンロットの外を指差す。
そこには地平線の見える平原が続いて―――いなかった。
標高は最高で600メートル前後だろうか、横幅は目算で15キロメートル。
奥行きもほぼ同じぐらいの山脈が有ったのだった。
日本で言うところの新潟県の櫛形山脈と同等の物がいきなり現れていたのだ!
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