異世界転移 102話目




「帰ったな……」


「帰りましたね……」


テクタイト達、竜族に乗って帰るケン達。

それを見ながらフェリクスとパトリシアは疲れきって言う。




「あ、あの若、良いんですか?」


「お、おお! 待たせたな、巨人族の生活は任せてくれ!

我が家の忠臣を不当にあつかえば、民だけでなく先祖に申し訳がたたんからな!」


ケン達を見送っていて忘れていた巨人族の長にフェリクスは向き直る。


「ありがとうございます!

……いえ、そうではなく石材を持っていかせてよかったのですか?」


「ん? それは仕方ないだろ、俺にも引け目があったしな。」


「はぁ……しかし岩山3つ分は多すぎたのでは?」


「「………………へ?」」


ケン達がパクった石材の量が岩山3つと聞き、フェリクスとパトリシアは呆然となるのだった。




「というわけで、代金を払え。」


「ハハハ! 失せろスケコマシ。」


「黙れ女の敵君、それでなんでまた石材の発注をしたんだよ。」


あれから2ヶ月、季節は夏になっていた。

そしてフェルデンロットにはフェリクス一向がやって来ていた。


「いえね、私達も石材が売れれば利益になるから、売ってくれと言われれば売らしてもらうけど……あなた達、岩山3つ分も盗んでいったでしょ。

なのに足りないなんておかしいじゃない?」


「パトリシア姉様、それでわざわざ来てくれたのですか?」


「ええ……あと、大森林の奥の獣王国にも行こうと思ってね。」


「姉様、そっちがメインなんじゃ……。」


「ホホホ……。」


「なんにしろケン、あれだけの量を持っていったのに足りなかったのか? 普通の城塞都市なら充分に足りるはずだぞ?」


フェリクスがそう聞いてくるので、ケンはため息をつきながら答える。


「確かに俺達は岩山3つ分の石材を回収した、自分達のをだ、だがな、岩山3つ分をどうやって持って行けると思う?

俺や他のアイテムボックス持ちにフェルデンロット家の魔法袋をすべて使っても、あの量の10分の1しか持てないんだぞ。」


「それは……おい、まさか?」


「ああ、大部分を持ってたのはドライトだ、俺達はドライトが運びやすいように粉々に吹っ飛ばした物の一部を持ってきただけさ。」


「……それで肝心のドライト様は居ないのね?」


「ああ、例の女の子に連れられてから帰ってきてない。」


そう、ドライトは採石場で連れていかれてから2ヶ月、まだ帰ってきてなかったのだ!




俺の石材を持ったまま!




「お前のじゃないだろうが……なんにしろ追加で買うのか? それでドライト様が来たから返品するって言われても、無理だからな。」


「ああ、それは大丈夫だ、ってかいよいよになったらドライトを呼び出す算段がない訳じゃないんだよ。」


「そうなのか? なら呼び出せば良いじゃないか。」


そう言ってくるフェリクスにケンは顔をしかめながら説明をする。


「それがな、呼び出せるのが……アンナなんだよ。」


「へ? アンナってクリスの妹のアンナちゃんのこと?」


「ああ……前回呼び出したのも実はアンナなんだ、それでクリスが試したら少し反応が有ったが来なくて、俺がやったら反応すらなかった、ちなみにミラーナが手料理を捧げたら祭壇が爆発した。」


ケンの暴露にフェリクスとパトリシアは目を見開きミラーナを見ていて、ミラーナは真っ赤になってケンに裸絞、チョークスリーパをかけているがケンは涼しい顔……ではなくエロい顔で背中に当たる胸の感触を楽しんでいる。


「ならケン、アンナちゃんに頼んでまた呼び出してもらえばいいじゃない。」


「いや、クリスと一緒に頼んだんだけどな?」


そう言ってケンはアンナに頼んだときの事を2人に話す。




「クッソー、ドライトの野郎が石材を持ち逃げしやがったから城壁の分が足りねえ、何とかして俺の石材を取り返さないと!」


城壁の建築具合を見ながらケンはそう愚痴る。

その横ではクリスが必死にアンナを説得していた。


「ねえアンナ、ドライト様に頼みたいことが有るの、呼び出してくれない?」


「ダメなのよお姉しゃま、ドラしゃんはママと一緒に居るの、家族の団らんを邪魔するのはいけないことなのよ?」


「あのね、何も何日もって訳じゃないの、頼んで石材を出してもらえば一瞬ですむ話なの、だから無理を言ってお願いしてるのよ。」


「アンナ、前に欲しがってた熊の縫いぐるみを買ってやるから頼むよ。」


クリスの説得ではらちが明かないと思ったケンが、物で釣ろうとしたが。


「物になんか釣られないのよ、そんなに安い女じゃないのよ、私は。」


「……アンナ、そんなしゃべり方を誰に習ったの?」


アンナの言葉にクリスの顔から表情が無くなり、それを見たアンナは慌てて答える。


「ケ、ケンのお兄しゃんなのよ!」


クリスが振り向きケンを見たときには、ケンは全力疾走で背を向け逃げ出していたのだった。




「ってな事が有ってアンナに会わせてもらえないんだわ。」


「このバカ! 何考えてやがるんだ! しょうがない、俺がアンナちゃんを説得してやるよ。」


ケンをバカにしながらフェリクスはそう言うと、ミラーナはフェリクスをじっと見てから言う。


「パトリシアお姉様、お願いします。」


「なんでだ!?」


こうして4人で連れだって歩いて、チビッ子軍団と子竜達と一緒に城壁の周辺を練り歩くアンナの元に行く。


「お、いたいた。」


「……おい、なんでテクタイト様も居るんだ、山に帰ったんじゃないのか?」


「テクタイト様は冬になったら帰るらしいんですよ、さすがに眷族達はほとんど帰らせましたが……」


練り歩くアンナとそのすぐ近くにて周りを警戒し、威嚇しまくっているテクタイトが居る、すぐ近くにクリスが居たのでフェリクスが近づきそう聞くとクリスが答えてくれて納得する。


「誰だ! ……なんだフェリクスか、アンナ様を狙う不逞の輩かと思ったわい。」


強者が近づくのに気がついたテクタイトが、フェリクスとアンナの間に壁になるよう立つが、来たのがフェリクスだと気がつき警戒を解く。


そんなテクタイトにフェリクスが近づくと、アンナに用があると言う。




「ちとアンナちゃんに用があってな、話をさせてくれ。」


「なんだフェリクスよ、お前もアンナ様を説得してドライト様を呼び出そうと言うのか?


ならば無駄だから止めておけ。」


「テクタイト様、無駄かどうかはやってみなければ分からないでしょう、話だけでもさせてください。」


フェリクス代わりパトリシアがそう言うと、テクタイトはパトリシアの方を見て言う。


「いや、無駄だ。


何故ならドライト様ならほれ、そこに居るのだからな。」




テクタイトがそう言って指差した先、練り歩くアンナの影にドライトが居たのだった。



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