異世界転移 94話目




「じゃあ、帰るわね?」


「シリカお姉様、アンナちゃんをもらえないからって、アッサリしすぎですわ?」


アンナに加護が与えられないと知ったシリカはアッサリと帰ると言う。


出来ればアンナに付与されている変なものを、取っ払ってもらいたいのだが……




「「私達は残って人々を導き「ダメに決まってるでしょ?」い、嫌です! アンナちゃんとも遊んで……ああ!?」」


「それでは、失礼しますわね?」


「はぁ……私も帰るわね……」


残ろうとしたステラとルチルだったが、サルファに捕まり転移で消えてしまう。


シリカも帰ろうとするが、俺は慌てて呼び止める。


「ちょ、ちょっと待ってくれ!」


「ん? 何か用があるの?」


俺が呼び止めたのに気がつき、シリカはこちらを向いてくる。




「いや、ちょっと聞きたいんだが、マリルルナ様はどうしたんだ?


ドライトが好き勝手してるし、邪神の生き残りがまだ居るって言うのに、全然姿を見せないんだが?」


「ああ……マリリルナなら彼女のボスと夕飯のオカズでもめて、ケンカ中ね? だからマナルに来ないのよ?」


「そ、そんな理由で……」


シリカの言葉に皆は絶句しているが、シリカは涼しい顔で続ける。


「正直ね、この世界に攻め込んでいた邪神なんか、私達にはお話にならないレベルの相手なのよ。


私達龍や、マリルルナのような上級神だと相手にするのもバカらしい相手なのよ?」


「……弱いってことか? ならなんでマリルルナ様は苦戦をして、ドライトは邪神との戦いを始めたんだ?」


「あんまり教えたくないんだけど、夫の使徒だし教えてあげるわ。


マリルルナさんはね? 油断したの、油断していっぺんに多数の邪神が入り込んだのよ? 想像してごらんなさい? あなたの部屋にゴキブリとかの害虫が大量に入り込んだと。


殺虫剤なんかを撒けば言いと思うかもしれないけど、その部屋には移動しにくいペットや植物があったとしたら? そんなもの撒けないでしょ?」


「ま、まさか……」


「そう、それでイチイチ一匹づつ、潰してたってわけよ。」


シリカの暴露に唖然としてしまうマナルの面々、俺もそりゃないだろ? っと顔をしかめていたがドライトの事を言わないのでうながしてみる。




「それでドライトが参戦したのは、マリルルナ様やマナルの人々を助けるためなのか?」


「……違うわ。 さっきも言ったけど、私達龍は短気なの、だからよ?」


「? ドライトは例外的に温厚だって?」


「そうね、だけど、だからこそ怒ったら怖いわよ? そして邪神達はドライトを激怒させてしまったの、その結果が邪神の捕縛なのよ……アッサリと殲滅するだけじゃ物足りないぐらい怒ったから、捕まえて拷問部屋送りになっちゃったのよね?」


「ご、拷問部屋……いったい邪神は何をしでかしたのですか?」


俺とシリカの話を聞いていたミラーナが、たまらなくなったのかシリカに質問をする。


するとシリカはニコヤカな表情を消して真面目な顔で言う。




「邪神はね……? セレナ様にステラとルチルを薄汚いって言っちゃったのよ。」


「……はぁ?」


「いやぁー、あの時は私も怖かったわ。


夫が妹達を連れてマリルルナにお年玉をもらいに行くって言って、帰ってきたらニコニコ笑ってるんだけど、もの凄いオーラを駄々漏れにしててね?


そのちょっと前に、分身体達が完全武装で飛び出していったから、何かあったな? とは思ってたんだけどね……」


恐ろしく、下らない理由でドライトは大軍で邪神との戦いを始めていた。


「く、下らねぇ……」


「そうね? そう思うかもしれけど、そのおかげでこの世界が救われたのも事実よ?」


「あ、あの……もしかしてなんですが……」


邪神戦争の真実が色々分かってしまい脱力していると、今まで黙っていたクリスがオズオズとシリカに話しかける。


「ご主人様が、ケンがこの世界に送り込まれたのはドライト様が邪神を見張るために、送り込まれたのでは……?」


クリスの言葉に、ハッとして皆がシリカを見ると、シリカは手をヒラヒラ振りながらそれはないと言う。


「夫の監視網を逃れられる事が出来るなんて邪神だったら、ドライトが1番に捕まえて研究しつくしてるわよ。」


「あれ? 王都で邪神に逃げられたような……?」


ミラーナが王都での大公家跡の事を思い出してそういうと、シリカは少し目をつぶり何かを探るように思案する。




「……こいつか、こんな弱いのドライトもどうでも良いって放置してたんでしょうね。


このレベルの邪神ならあなたと、フェリクス? っとか言う現地の勇者が居たから討伐できたと思うわよ? 仲間と王都の民はほとんどが死んだでしょうけど。」


「な!?」


「そ、そんな!?」


シリカの言葉にミラーナとクリスが非難するような声を上げる、ケンも流石に一言言おうとするがそれをシリカは手で制して言う。


「酷いなんて思わないでね?


あなた達だって蟻が蟻地獄に落ちてて気にする? そう言うことなのよ?」


「じゃ、じゃあドライト様はなんでケンをこの世界に?」


「さあ? 知らないわ? マリルルナを驚かすとかそういった下らない理由じゃないかしらね?」


シリカは感でドライトの行動を読み当てる。


ケンは思い当たることが有るのか顔をしかめ、ミラーナ達は流石にそれはないと言いたいが言えずにいた。


「まぁなんにしろ質問はこれ以上受け付けないわ、聞きすぎとかじゃなくってちょっとディアン様とセレナ様が呼んでるのよ?


すぐに行かないと不味いから、じゃあね?」




そう言うとシリカは軽く俺達に手を振る、俺の左右でミラーナとクリスが慌てて頭を下げて挨拶をする。


「シリカ様、色々とありがとうございました!」


「数々の不敬、お許しください!」


「があ! お達者で~!」


ミラーナとクリスの声に送られて、シリカは凄い驚いた表情で俺達の方を見ながら消えていった。




があ! お達者で?




「お帰りなしゃい、ドラしゃん!」


そこにはアンナに抱っこされたドライトが居た。



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