異世界転移 93話目




シリカから発せられた輝きは、そのままアンナに向かい―――霧散した。


「……あら?」


「ア、アンナ! 大丈夫なの!?」


「アンナ!」


シリカは不思議そうな顔をしてアンナを眺めて、クラーラとクリスは慌ててアンナに駆け寄る。




「んー? アンナちゃんが嫌がった訳じゃないのに、私の加護が跳ね返された……? あ! あの娘達ったら、こんなところまでドライトに似ちゃったんだから!」


「あ、あの、妹に、アンナに何かあるのですか?」


今までずっと黙っていたクリスが、妹の事なので流石に我慢できずにシリカに質問をする。


「この子に私の加護を与えようとしたら、ステラとルチルが先に自分の巫女とするって称号を与えちゃってたのよ? それでそれに跳ね返されちゃって、加護が与えられなかったの。 あ、来たわね?」


「来たって……あ!」


「「私達の巫女が危ない!」」


「待ちなさい!」


シリカの来たと言うとほぼ同時に、ステラとルチルがまたやって来る。


その後ろには先ほどの金髪の美少女が追いかけて来ているので、逃げられたようだ。


「こらあなた達! 勝手に巫女の称号を与えちゃダメでしょ!」


「「シ、シリカ姉様こそ加護を与えようと!」」


「大人の私は良いのよ?」


「ズルいです!」


「卑怯です!」


「……ステラちゃん、ルチルちゃん、シリカ姉様が年長なんですから文句を言ってはなりませんわ?


どうしても文句が言いたいなら、シリカ姉様よりも力が上だと実力を示さなければいけませんわよ?」


「「そんなの無理だよ!」」


サルファの言葉にステラとルチルはそう叫ぶのだった。




「よし、復活したぜ?

それであんた方がドライトの女房だって?」


「「……懲りない奴ですね? シリカ姉様とサルファ姉様に対して失礼よ?」」


シリカに殴られたダメージからやっと復活したケンの言葉使いに、ステラとルチルがにらみながらそう言うが、2人の隣に居るサルファが何かをしているようで今回は圧力が無かった。


「俺は生まれが高貴じゃないんでこれが通常のしゃべり方なんだよ? 仕方ねえだろ?」


ケンの言葉にステラとルチルはますます視線を強くするが、サルファがニコニコと笑いながら2人の頭の上に手を置くとシュンとしてしまう。


「それで、うちのアンナに何かしらしようとしたようだが、何をしようとしたんだ?」


「あー、それなんだけどね? あんまり話せないのよ?


神々の協定に引っ掛かっちゃうから……そうね、あなた達の基準で言えば、貴族にしてあげようとしたら他の王家や国なんかからもう認定されていたから、システムに弾かれたって言えばいいのかしら?」


「うーん? イマイチ分からんな?」


ケンがイマイチ分からないと首を傾げていると、サルファも説明に参加してくる。


「ケンさん、あなたは最近レーベン王国から貴族に列せられましたわよね? するとあなたにはレーベン王国と王家から権力と言う力を授かりますでしょ?」


「ケンの知り合いで1番分かりやすいのは……フェリクスって言う勇者が居るわね、しかもあなた視たこと有るようね?


なんにしろそのフェリクスに勇者の称号と加護が付いてるでしょ? しかも主神のマリルルナから授けられた、そしたらフェリクスはマリルルナから力が送られてくるから強化されるのよ?」


「貴族になればさっきも言ったように、王国や王家から権力と言う力を授かる、でもその権力も爵位や授かった国や王家の力によって変わってくるでしょ?」


シリカとサルファの言葉にステラとルチルがそこまで言って良いの? っと言うような視線を送るが、シリカは手をヒラヒラと振りサルファはニッコリと笑ってステラとルチルを黙らせる。


なんにしろ2人の説明を要約すると、神々や龍などが授けるものには三種類あり、1つが守護、加護、祝福等は力をそのまま与える行為で、あなたはお気に入りだから自由に過ごして良いよ? ってことで次に勇者に聖女、使徒に巫女などの称号は力をあげるけど仕事もしてね? っと言うことらしい。




そして1番強烈なのが、眷族としてしまうことなのだとか。




これが先ほどの2つとどう違うのかと言うと、先ほどの2つが力を与えると言うか、貸し出すようなものだそうなのだが、眷族にすると言う行為はその相手の格自体をあげ、完全に力を渡すので実質的に別の生物に変えるとも言える行為なのだとか。


そして重要なのが力を与えた存在がどんな存在かと言うことだ。

極端に今回居る面子で言えばステラとルチルが加護を与えたすると、それは小国の貴族になったようなもので、これがシリカやサルファだと普通の規模の国から貴族として爵位を与えられたと言うことになるらしい。


そして当たり前だが同じ爵位でも国の力の関係で優劣が出てくるのと同じように、与える神や龍の格によって力にも差が出るそうだ。


ちなみにドライトはどのレベルなのか聞いたら超大国クラスとの事だった……マジか?




「なんにしろアンナちゃんには私の加護を与えます。


これは決定です、良いですね?」


「そ、そんな!」


「私達の巫女なのに!」


「だまらっしゃい!」


シリカとステラとルチルがもめ始めたので残った1人、サルファに疑問に思うことがあったので質問してみる。


「な、なぁ、サルファ―――様だっけ? なんであの3人はあんなにもめてるんだ?」


「ふぅ……旦那様の選ぶ方は変り者ばかりですわね……普段通りで良いですわ。


それでアンナちゃんの所有権で何故もめてるのかと言うと、私達のような高位の存在は魂や心の美しいものに引かれるのよ? 特にアンナちゃんの魂と心は素晴らしいわ? 正直、争奪戦に私も参加できるなら参加したいけれども、無意味ですから参加しませんわ?」


「ふぅーん……ん? 無意味って「どういうこと「「ですか」」よ!?」うぉ!?」




俺とサルファが話していると、サルファの発言に今まで言い争っていたシリカにステラとルチルがどう言うことか詰め寄ってきた。


「シリカ姉様もステラちゃんとルチルちゃんも大事なことを忘れてますわ?


アンナちゃんは、ケンさんのお嫁さんの妹さんなんですわよ?」


「……あ!」


「? それがどうかしたのですか?」


「シリカ姉様は何が問題なのか、分かったのですか?」


シリカは何かに気がついたようで、ガックリとうなだれている。


ステラとルチルはイマイチ分からないようで不思議そうにしている。


「……アンナちゃんは、クリスちゃんの妹だったわ……ケンの、ドライトの使徒であるケンの嫁の妹だった。」


「「……あ!?」」


諦めた表情のシリカに対して、ステラとルチルは何かに気がついたようでアンナを凝視して何かに気がつき驚いている。




「まぁ、そうですわよね? しかもすぐそばに居たみたいですし、旦那様がしっかりと確保してますわよね?」


「夫の……ドライトの祝福がしっかりと付与されてるわ……キッチリ隠蔽されて。」


「「さ、流石は兄様!」」


クリスの妹のアンナに、珍妙なものが付与されてしまったらしい。



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