異世界転移 63話目
「おーっす、来たぜ?」
「男爵様、10日ぶりですね?
アルコールは抜けたんですか?」
「おう、おかげでまたえらい事になりかけたがな?」
ケンは皆を連れて冒険者ギルドに来ていた、早速にやって来たペトラに挨拶をすると、真っ青になったフェリクスにアルヴァーがやって来る。
「……ケン、悪いがアルコールを抜いてくれ。」
「……おえぇぇぇ! ヘルダ様はともかくペトラ嬢は化け物か?」
そう言う2人に、ケンはキュアとハイヒールをかけて回復してやると、何があったのか質問をする。
「悪いな……ヘルダ様も俺達に回復魔法をかけてくれれば良いのによ?」
「いや、それよりもペトラ嬢だろ? なんで俺達より“あれ”を飲んでるはずなのに、平然としていられるのか……」
アルヴァーとフェリクスがそう言って事情を説明する、アルヴァーは完全に酔いつぶれていて起きた時にはケンとフェリクスにヘルダは居なかったそうだ。
そして真っ先に帰ってきたヘルダに、回復魔法をたのんだのだが、
「嫁のフェリシーに頼みな!」
っと、その場に居ない人の名を告げて自分の執務室に帰ってしまったのだとか、そしてそのあと直ぐにフェリクスが帰ってきたのだが、2人で他に誰かアルコールを抜いてくれる人が居ないかギルドの中を探すと、いまだに酒を飲むペトラと酔いつぶれたコリンズを見つけたとの事だった。
「そ、そりゃまた……ってか、やっぱりアホの酒が原因かよ!」
「おう、それよりもお前もなんかあったのか?
ってか、奴隷の娘が2人ほど増えてるな?」
「お前、まさかまた……」
「そうだよ! 今回も買った時の事を一切覚えてないよ!
ってか、フェリクスよぉ、お前は盗賊だのをぶっ殺し回ってたのを覚えてるか?」
「はぁ? お前何を……って、マジか?」
フェリクスはケンが冗談を言っているか、また騙そうとしていると思ったがケンの真剣な表情を見て本気なのだと理解する。
「おや? 小僧共は何をやってるんだい?」
そんな事を話していると、ヘルダが執務室の有る上の階から降りてくる。
「おう、ババアは盗賊だのの事を覚えているか?」
「? 何を言ってるんだい、私はさっき起きたばかりだよ? ……ん? なんか記憶が曖昧だね?」
ヘルダにも盗賊や違法な奴隷狩りの事を伝えると、目を見開いて驚いている。
そこにペトラがやって来て3人に討伐の報奨が出ていると伝えた。
「えー、フェルデンロット男爵には白金貨で3枚、シュタインベルク子爵には2枚、ヘルダ様にも2枚が出ていますね?」
「ちょっと待ちな、なんでそこのくそガキだけ1枚多いんだい?」
「討伐数や捕まえた数はほぼ変わらないんですが、何故か男爵の働きが素晴らしいと市民らに情報が広まっていて、それを考慮しての事らしいんですが……」
「おい、お前なんかやったんじゃないのか?」
「おいおい、俺も今日になってやっとアルコールが抜けたんだぜ?
それなのに何が出来るってんだよ?」
ペトラの話しを聞いて、フェリクスはいぶかしげにケンを見るが、ケンは肩をすくめて知らないと言う。
「チェルシーが情報操作してたって噂が有るんだけど、本当に知らないのかい?」
フェリクスと一緒に居たらしいジャンナがそう言ってくるので、ケンはチェルシーを呼んで確認をする。
「チェルシー、おーいチェルシー!」
「わふん!」
「よーしよしよしよし、チェルシーに質問なんだが、なんか情報操作をしたのか?」
「情報操作なんか知らないです! わふ~ん。」
「ほれ、正直者のチェルシーはこう言ってるぞ?」
チェルシーは元気よくそう言ってくる、そんなチェルシーをケンはなでながらジャンナに向き直る。
「……そうかい、ところでチェルシーは何を握ってるんだい?」
「主人様にもらった小遣い、これでいろんな肉を買う!」
チェルシーはジャンナに握っていた白金貨を見せる。
「ほ~白金貨かい? たいした小遣いだね? それとその可愛いポシェットって魔法袋だろ? 結構したんじゃないかい?」
「これも主人様にもらった!」
「なんでもらったんだい?」
「情報操作のご褒美にです!」
「「「やっぱりしてるんじゃないか!」」」
情報操作が速攻バレた。
「何にしろ評価は変わりません、市民の総意ですし、ギルドの評価がコロコロ変わるのは問題ですからね。
それとフェルデンロット男爵は今日は何かご用があるんですか?」
「あー、この2人の冒険者登録だ、さっきもフェリクス達に言ったが買ったことを覚えてないんだけどな。」
「ども、カリーナです。」
「シリヤと言います。」
「「私達、無理矢理ご主人様の女にされました。」」
ケンに手招きされてやって来た2人は挨拶をしてから爆弾を落とした、フェリクスにアルヴァー達は目を見開いて驚きケンに非難の視線を向ける。
「そうですか、良かったですね、宝くじに当たる位のラッキーですよ?
それで適性検査からで良いですか?」
ペトラはグッジョブっと親指を立て2人を祝福してから、普通に冒険者登録を始めようとする。
「ちょっとペトラ嬢、そんな反応で良いのかい? 冒険者ギルドとしてケンにひと言、言うべきなんじゃないかい!?」
ペトラの反応に皆が驚き固まるなかで、ジャンナが同性のカリーナ達を憐れみの目で見ながらペトラに詰め寄る。
だがペトラはそんなジャンナを見て1つうなずくとハッキリと言う。
「ジャンナさんは獣王国を出てからフェリクス様とずっと行動を共にしてるんでしたね?
そちらの2人も奴隷の悲惨さを知ってれば、先ほどのような事を言えないはずです。
いいですか、奴隷は物です、売買が認められている物なんですよ? 若い女なら娼館に売られるのは当たり前、ひどい事例になるとオークの巣に突っ込ませてオークが取り合い等で混乱してる間に、大規模攻撃魔法を放った例も有るんですよ?
それに比べたらどうですか? 今の生活は、昔の生活に比べてもです。」
続けてヘルダも補足するように言う。
「その冒険者も罰せられなかったさね、奴隷にそんな事をさせちゃいけないなんて法は無いからね?
まぁ、国民や他の冒険者達からは蛇蝎のごとく嫌われたけどね?」
ヘルダの言葉に静まり返る一堂、するとシリヤが小さく言った。
「……伝え聞くオークよりも精力絶倫な人に3日間も抱かれ続けましたけど、どっちがひどいですかね?」
こうしてカリーナとシリヤの冒険者登録はすぐに出来なくなったのだった。
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