異世界転移 56話目




「じゃあ、後はハロネン子爵達に任せるわ……。」


「はい、ロボネン男爵等と移動にかかる資金と日数の計算に入ります。」


「出していただいた資金は、決して無駄にしませんぞ!」


ハロネンとロボネンの2人はそう言うと、早速他の貴族達と相談に入ろうとする、そして俺はライナーとアネットの方に向かおうとするが、クッコネン将軍に声をかけられる。




「ところでフェルデンロット男爵殿、そこの子供達と何かするのですか?」




「ん? ああ、この男の子はクリスって言う俺の嫁の弟でライナー、女の子はロットリッヒの冒険者、堅守のアルヴァーってやつの娘でアネットってんだ。


それでこのチビどもが武術とか教えてくれってんでな、取りあえず気功法を教えてるんだよ。


ああ、明日辺りからは近場の森にでも行ってみるかな?」


「なんと! 武芸や野営などの訓練をしてあげてるのですか!?」


「あ、ああ? そうだがどうかしたのか?」


俺の言葉に大きく反応するクッコネン、その反応の大きさに他の貴族達も何事だとこちらを見てくる。


「実は男爵殿、それがしの10歳になる孫が軟弱なことを申してましてな。」


「軟弱なこと?」


「はい、将来は魔導士になるともうしまして。


あ、いや、魔導士になるというのは良いのです、才能もあると教育係も言ってますし、ですが魔導士なのだから最前線に出ることはない、接近戦なんて必要ないと言うのです。」


「お前、それ死ぬぞ? 研究室にこもってるならともかく、軍だろうが冒険者だろうが実戦に出たらほぼ確実に死ぬぞ?」


「そうなんですが、私が何度も注意してもオンボロの爺ちゃんには言われたくないと言いまして……。」


そう言いながら哀しそうな顔をするクッコネン。


「よし、1発殴ってやるからそのガキを連れてこい!」


「い、いえ、殴るのは勘弁して下さい!


それよりもあの子達と一緒に孫に訓練をしてやってくれませんか?


孫はフェルデンロット男爵の事をすごい魔法を使う魔導士だと尊敬しておりまして、あなたの言うことなら聞くと思うので……。」


「んー……。 まぁ、良いけど俺の訓練は結構キツいぞ? 実戦重視だからな。」


「構いません! 是非お願いします!」


「あいよ。


まぁ、会ってみてからどう鍛えるか考えてみるわ?」


俺がそう言うとハロネン子爵にロボネン男爵、その他の貴族達も俺の前に来て一斉に言うのだった。




「「「うちの子達もよろしくお願いします!」」」




「で、あんな事になってるんだよ。」


そう言ってケンは自分の後ろを指差す、そこには遊び始めた100人の子供達が居た。


子供達は仲間同士や知り合いと集まって話したり追いかけっこを始めて遊んでいる。


「なるほど……それで子供達が居たのか……。」


ケンの説明を聞いてやっと納得した国王、その国王に少し困った顔でアイヒベルク侯爵が言う。


「しかしハロネンにロボネンとクッコネンか……優秀な者達がそろいすぎましたかな?」


「うーむ、他の者も考えると人が集まりすぎている気もしますが。」


ロットリッヒ辺境伯もそう言うが、国王は反論をする。


「いや、西の大森林や帝国との交易に盗賊対策、さらに復興を考えるならそのぐらいの人材は必要だろう。


我等が選ぶ手間がはぶけたし、元々彼等の領地だからな? 頑張ってくれるだろうて。」


「なるほど。」


「そうですな。」


ローデリヒ国王の言葉にアイヒベルク侯爵とロットリッヒ辺境伯は納得しながらうなづく。


「そして私はなにもしないで遊べると言うわけですな!」


「そんなわけないでしょ! ほらケン、皆の訓練を見てあげて!」


「アランさ、アランが困っていますから。」


「主人様、もっと肉を下さいませ?」


横で聞いていたケンはそう言うが、ミラーナが怒ってケンを引っ張る。


淑女教育と貴族の心構えを勉強しているクリスも、アランを様付けしそうになりながらケンを引っ張る。


チェルシーは淑女教育を最初からやり直すか諦めた方が良いだろう。


なんにしろ、そんな感じで仲良く去って行くケン達4人を国王達は見守るのだった。




「んで、アランのやつは兵士の訓練もできねえのか?」


「そんなことはないんだけど、何にしろ屯田兵の数が多すぎて士官の数が足りないのよ。」


「ん? ちょっと待て、おいアラン、お前は屯田兵の訓練までしてるのか?」


「は、はい。


男爵の命令通りに全ての騎士や士官に、従軍経験豊富な兵士達を動員しておこなっています!」


「……俺、なんて命令したっけ?」


「は! フェルデンロット地方軍の練兵をしろと!」


アランの言葉を聞いたケンは目を覆いながら言う。


「俺、フェルデンロット地方軍の第1大隊の練兵をしろって言ったつもりだったんだが……。


なんでまだ居なかった屯田兵の訓練まで始めてるんだよ……。」


「え……次から次へと来るので、志願兵かと……。」


そして見つめあうケンとアラン。


「やっぱり指揮官はちゃんとしてないとダメだな、クッコネンにでもやらせるか……。」


「ダメに決まってるでしょ! っていうかあなたが軍の練兵をするのよ、子供達は私達が面倒をみるわ!」


ミラーナはそう言うと、クリスとチェルシーを連れて子供達のところに向かってしまう。




「しゃーねぇな、兵士達の練兵でも見るか……。」


「お願いします。」


仕方なくケンはアランを連れて兵士達を見て回る。


さすがにミラーナの私兵の騎士達や兵士に、王国から斡旋されてきた者達の練度は高かったが、その他の者達は最低限の事も出来ない状態だった。


「おう、整列も出来てねえな。」


「はい、これでは戦場になどは連れていけません。


しかし男爵、この者達はどこから連れてきたのですか? 男爵の許可を得ていると言うのですか。」


「ああ、こいつ等は……お? ちょうど来たな、オーイ! こっちだこっち!」


アランにこの新兵がどこから来たのか説明しようとしたケンだが、お揃いの鎧などで身を固めた一団がやって来るのをみて、手招きして呼び寄せる。




ケンに呼ばれて来たのは、ハロネン子爵達だった。



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