異世界転移 54話目
「おーっし、ここが北の森だ、ここにテントを張るぞ! 皆も野営の準備だ!」
「「「はーい!」」」
「よし、良い返事だ! ライナー、アネットはリーダーとして皆の指導を忘れるなよ。」
「「はい!」」
ケンはそう言うと、百人は居る子供達が元気に返事をする。
それを見てケンは満足そうにうなずくとテントを張り、来る途中で捕まえた野性動物を捌いて焼いている少年の所に歩いていく。
「お! 猪か、これは中々の大物だな!」
「ここまで来る途中で捕まえたんだ! 俺達の夕飯だぞ?」
「ほー、お前達だけで捕まえたのか?」
「……皆に手伝ってもらった。」
「じゃあどうするんだ。」
「……皆! 猪の肉を別けるぞ! 取りに来てくれ!」
少年の言葉を聞いたケンは自分の腰の物入れに手を伸ばす、そして魔物のワイルドボアやグレートチキン等を取り出すと少年の前に放り出して、
「こいつも捌いとけ、多少は食い扶持が増えるだろ?」
っと言うと振り返り自分のテントの場所に向かって行く。
ポカンとしていた少年や肉を捌いていた他の少年少女達は、ハッとして顔を見合わせるとケンに頭を下げ大きな声で言うのだった。
「「「ありがとうございます!」」」
こうして子供達は森のそばで1週間にわたり野営や探索などの訓練をして、王都に帰ってきたのだった。
「だ、男爵! こんなに幼い子供達を連れて、森でキャンプをしたのか!?」
ケンの話を聞いた国王は、あきれると共に怒ってケンを叱責しようとした。
「その話は私も聞きたいさね?」
だがそこにペトラを連れたヘルダがやって来て、間に割り込む。
「ヘルダか、男爵の屋敷に行っていたのではないのか?」
「わたしゃそこまで暇じゃないよ。
北に有る小さな森で異変が起きてね、その調査やらで忙しかったのさ。」
「北の小さな森……。」
北に有る小さな森と聞き国王達もケンを見る。
「おお、ちょうど行ってたな。」
「そうかい、それでその森にはオークが住み着いてたはずなんだがね、それが1週間前からキレイサッパリ見なくなってね?
偵察を出したら他のちと危険な奴等、いわゆる初心者殺しって言われる魔物もぜーんぶ居なくなってたんだよ。」
「そうか良かったな、北の森が安全になって!」
「……ちなみにそのオークの巣のボスはね、豚王の斧って言う珍しい武器を持ってるって言う情報があってね?」
「それなら今回のキャンプの経費のために売っ払ったぞ。」
「やっぱりあんたかい!
討伐するのは良いけど報告はするさね!?」
ヘルダは怒りながら、ペトラは冷静ちに話を聞くとケンは子供達の安全のために先行して森に入り、危険な魔物を片っ端から討伐しておいたのだそうだ。
「ぜんぜん魔物が出ないから変だなとは思ってたんですが、ケン様が倒しておいたのですね。」
「おっちゃん、2、3時間しか居なかったのに、その間に全部倒したのか……。」
アネットとライナーがそう話していると、走り来る集団がいた。
「居たわ!」
「ご主人様、どこに行ってたのですか!」
「主人様! 飯くれ!」
走ってきたのはミラーナ、クリス、チェルシーだった、後ろからはフェリクス達も走ってきている。
「おう、どうした?」
「どうした、じゃないわよ!
チェルシーがやっと部屋の鍵を開けられたから、中に入ったら居ないから探してたのよ!」
「おお! あの鍵を開けられたのか! えらいえらい、ご褒美になんか欲しいもん有るか?」
「飯! 飯くれ!」
「よしよし、オークキングの肉がちょうど有るからこれでも食ってろ。」
「美味そうな肉だ!」
チェルシーは肉を受けとると、早速火を熾して焼く準備を始める。
そんなチェルシーにクリスは慌てて駆け寄ると肉を調理してあげ始める。
「仲良きことは美しきかな……。」
「アホなことを言ってないで何で森に子供達を連れていったのか教えなさい!」
思いっきりミラーナに怒られたケンはなぜ森に行ったのか説明をするのだった。
ケンが屋敷に帰ってふて寝をしていると、ライナーがアネットを連れてやって来た。
「お? 逢い引きか、ガキが出来ないように気をつけろよ?」
「バ、バカなこと言うなよ!」
「ケン様、子供はまだ早いと思います。」
ライナーは真っ赤になって怒り、アネットはとんでもない事を平然と言う、そのためライナーはますます赤くなっている。
「ハハハ……今の話をアルヴァーとフェリシーにはするなよ? お前らも俺も死ぬことになるからな。」
ケンがそう言うと、アネットは真剣に、ライナーは真っ青になってうなずく。
こいつ等、本当に変な事をしてないだろうな? そう考えながら何か用かと訪ねると、ライナーを真面目な顔で言ってくる。
「おっちゃん、何時になったら修行をしてくれるんだよ!
ロットリッヒでそのうちに武術を教えてやるって言ってただろ!?」
「ああ……その事か……。」
ケンは言われて思い出す、ロットリッヒに居た時から何でも良いから武術を教えてくれ、出来たら気功法を! っとせがまれていたことに。
「うーん、歩行法と呼吸法はちゃんと覚えたか?」
「「はい!」」
「体力作りはどうだ?」
「毎日走ってるぞ!」
「朝にライナー君とアンナちゃんとで運動もしてます!」
「……しゃーないな、少し教えてやるか。」
「「やったー!」」
ケンがそう言うと、ライナーとアネットの2人は飛び上がるように喜ぶ。
「ってことでライナー達に気功法と野営術に警戒なんかのレンジャー系の技術を教えてたんだが、そこに70人ほどの貴族や騎士達が来てな? 頼みが有るから聞いて欲しいって言うんだよ。
何事かと思ったらフェルデンロットの近くに土地を持つ貴族や騎士達で、俺の寄子になりたいって言ってきたんだよ。 」
ケンはそう言うと、その時の事を話し出すのだった。
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