【37】烏賊とドライブと鶴の城?(終)

城について語りだすとあれこれと話を拡げ放っておくと数時間は、一人で喋り続ける彼。

先ほどまでのテンションを引きずったまま颯爽と車を降りて、助手席へと走ってきたかと思うと…


「姫!拙者の手をお使いください!!」


彼の頭の中に、恥ずかしいという言葉はきっとないのだろう…片膝をつき、すっと手を差し出してきた。

侍にでもなったつもりなのか?

宮殿ではなく日本の城にきたから

早速、戦国仕様に変更したのか?


昔の彼女の話などは聞いたこともないけれど彼は、私以外の女性にもこういうことをしていたのだろうか…。私はこういう行動を恥ずかしげもなくする稜さんに軽蔑の念はなく、ただただ、興味深く面白い人物!という感情しかないのだが、今どきのキラキラ女子がこれを受け入れるとは思えない。仮に彼が年上の女性と付き合っていたとしても、年上女性が素直にこの行動に付き合ってあげるとも思えないし…。


『一つ聞いていい?』


「姫、何でしょうか?」


『これ、いつまで続けます?』


「姫!…、やめ時がわかりませぬ!!」


『本当、オチないよね~。』


「通常営業です!はるさん?松本城はさ天守閣まで上らなかったけど、ここは上まで行くことにします!理由は上で説明しますね♪」


『そうなんだ?まぁ九州の城までくること

あまりないしね~いいんじゃない?』


「姫?手を繋いでくれますか?」


『ばーか。』


「嬉しいくせに♪」


入場料を支払い、手を繋いで城内を散策。

唐津の歴史や、唐津焼の展示物を見た後

展望フロアへと到着。


「はるさん恒例城クイズ!ここ、唐津城は別名"舞鶴城"と呼ばれています。さて、何故そう呼ばれるようになったのでしょうか~?」


『鶴?昔、鶴が沢山飛んできてたとか?』


「ファイナルアンサー?」


『もういいよ?言いたいんでしょ?』


「正解は~?海沿いにさ、松林見えるでしょ?あれ虹ノ松原っていうんだけど、あそこを羽に見立てて、この城を中心に鶴が羽ばたいているように見えるってことらしいよ?」


『へー、遠くから見ないとそれは実感できないということだね。昔の人は、稜さんみたいな変わった考えの人多かったのかもね~』


「今、褒めました?貶してます?」


『…、想像力豊かってことで!』


「想像とか妄想は、誰にも迷惑かけません!はるさんが俺のことを迷惑だと思っていなければですけれど…?」


少々面倒だと思うこともあるが基本的には許容範囲内だ。そういえば、私は彼のことをあまりよく知らないな?私も自分の過去のことは、ほとんど話してはいないのだけれど。

今日の夜は、あの話をしなければならない。

稜さん、何て言うかな…。

唐津の街を見下ろしながら、呑気に写真を撮りまくっている彼を見つめる。


うん、きっと大丈夫!

そろそろ九州一の繁華街福岡県へと

出発しますかね~。

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