【稜side】

【20】友人と居酒屋とダメ出しと①

楽しかった彼女との旅行から日常に戻り今日は週の仕事納め。一週間もあっという間に過ぎ去ろうとしている。今夜は速攻で帰宅をし、次の日の仕事のことも気にせずに、大好きな彼女の声を電話で聞きながらビールを思う存分飲むはずだった…

はずだったのに…


帰り支度を済ませ、部屋を出ようとした俺を見ていたかのように机上の内線スマホの着信音が静まりかえった部屋に鳴り響く。表示された名前を見て、ため息をつくと無言で応答ボタンを押した。


「お疲れ~稜!やっぱりまだいたか~♪

これから何か予定ある~?」


電話の相手は、唯一と言ってもいい

俺の友達であり、同僚の太郎。


「お疲れ~、仕事終わりにテンション

高いな。 帰ってビール飲みながら

春香と電話するくらいだよ。」


「だろうな~稜には、はるちゃん以外の

用事ないよな~僕以外友達いないし~」


確かにその通りなのだが、はっきりと

しかも本人に笑いながら言われると、

少し気分が悪い。


「……、で、話は?」


少しだけ不機嫌そうに答えてみるも

奴にこの攻撃は通用しない。


「ちょっとさ~僕に付き合わない?たまには飲みに行こうよ~♪あ、少しだけ用事あるから、いつもの店に30分後ね?」


なぜ急に誘って来たのか?

思い当たる事は、ただ1つ。先日昼の休憩中に軽く話した、この前の彼女との旅行話を詳しく聞きたいのだろう。


春香が長期出張に行く前から付き合いだした二人の職場恋愛を社内でただ1人知る人物。それが太郎なのだ。本当は断りたいところだが、周りに黙ってくれているという負い目もある為、蔑ろにもできない。そして奴の性格からして、何度でも誘って来るに決まっている。


俺の返事を待たずに切れた電話に向かって

二度目のため息をつくと、指定された居酒屋へ向かうため職場を後にした。

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