第九話 【国会】




「父を助けてって……どういうことですか? もう少し詳しいことを聞かないと助けられません」


 葵の肩を掴み、そう懇願するユウコに、葵は疑問を投げかけた。

 今のユウコの言葉では言葉足らず過ぎて、何をするにも情報が足りなかったからだ。

 ユウコは今にも零れ落ちそうなほどの涙を拭い取り、はいっと一から説明を始めた。


「父は初代勇者様の残した『異界から人を喚ばない』という言葉を破ったことで一年ほど前から糾弾されていたのですが、六日前、この国に暮らす人々の個人情報を一括管理しているデータバンクに不正なアクセスがあり、そこにあった個人情報が何者かに閲覧された可能性があるとして、父が責任を問われていて――」

「ちょっと待って、それが重大なのはわかるけどその前に。ユウコさんの父親って誰?」


 説明になってない、と一度ヒートアップしているユウコを鎮めて、大前提から聞き直す。

 葵が前提を知らないとわかっていなかったのか、申し訳ないような表情になり、すぐに説明する。


「私の父は、総理大臣のコージ・ハツカです。一年前に、父が初代勇者の言葉を違えた時点で、記者や野次馬やらが家に押し掛けるだろうから、と旧友だったケンジさんに私を匿っていてもらったんです。それ以来、私に影響があるかもと、ほとんど会えていません」


 その言葉を聞いて、葵の中で初めてユウコと会った時に、コージの名前を出した時の反応が理解できた。

 あれはこの国のトップとの関係があることに驚いたのではなく、もう一年近く会っていない父の名前が出てきたことに対して、色々と思うところがあったのだと。


「コージさんとの関係は理解した。コージさんがやったことも、それに対する周りの意見も理解した。それでも、ユウコさんはコージさんを助けたいんだね?」

「はいっ。初代勇者様の言葉を破ったことはともかく、個人情報のデータバンクは初代勇者様が残した自動調整システムなんです。その管理は首相に引き継がれますが、自動調整なのでそこにハッキングがあったとしても父に責任なんてないんです。父を糾弾している人たちは、父へ責任を押し付けて、首相という座から引き下ろしたいだけなんです!」


 誰が、何の目的があって、この国に暮らす人たちの個人情報を盗んだのかはわからないが、それの責任を取るのは間違いなくハッキングをし、情報を閲覧した犯人であってコージじゃない。

 それに、コージは異世界から人を喚ぶな、という初代勇者の言葉を破ったが、破ったなりに色々と召喚者に対してしてくれた。

 召喚者に人権を持たせ、最低限度というにはあまりにも豪華なほどの生活を保障し、葵に関して言えば、この国で動きやすいようにと色々と便宜を図ってくれた。

 だから、責任を問う場所が間違っているという責任感と言う意味でも、恩を返すという意味でも、コージを助けることに何ら躊躇いはなかった。


「――ただ、コージさんを助ける術がない、ということが問題か」

「そのハッキング? って言うのをした人を捕まえて、この人がやりました! って連れていけばいいんじゃないの?」

「いや、議員の人たちの目的は犯人を見つけて罰を与えることじゃない。ソウファの言っていることは正しいけど、今回の場合に限って言えば、それをやっても意味は薄いと思う」


 葵の苦言の呟きに、ソウファが至極真っ当な答えを提示した。

 普通の裁判であるならば、情報を取った、閲覧した、という証拠を集めて、真犯人として、裁くことができるだろうが、ユウコの話を聞く限り、コージが犯人だと糾弾しているわけではなく、コージに責任を追及している感じなのだ。

 それが正しい行いなのかどうかは置いておいて、責任を問われている以上、例え真犯人がこの人です! となったとしても、コージへの責任追及が止まるとは思えない。


「それに、今の父は国民からの支持率がかなり低く、このまま糾弾が続くようであれば、今日中には解任の流れを作られてしまいます」


 不安そうに俯くユウコを見て、一つだけ疑問が浮かんだ。


「……不快に思うかもしれないけど、一つ聞いていい?」

「はい」

「ユウコさんは、コージさんが首相から降ろさせたくないの?」


 間違ったことが許せなくて、また追及されている立場が身内だから守りたいのか、それとも父の立場を守りたいのか。

 そこが気になった。

 どちらにせよ、葵のコージを助けたいという気持ちは変わらないが、ユウコの本心を聞いておきたかった。


「……父は、首相に就任した当時から、一年前の初代勇者様の言葉を破るまでの三年間、ずっと国民の為を想って色々と苦労していました。国民がより良い暮らしをできるようにって、ずっと考えていたんです。でもそれが、たった一つのことで覆されて、最近は事件も多く治安が悪いと言われ、今回の件では国民からもいい目では見られていない。確かに、この国を創り、世界の常識を変えた初代勇者様は偉大です。その偉大な人の言葉を破ったのはよくないことだとわかっています。でも、それでも、父がやってきたことは、全て人の為を想ってのことだったんです! だから私は……今まで頑張ってきた父に、少しでも報われて欲しいんです。こんな悲しい終わり方なんて……」


 俯き、ズボンを強く握りしめて、声を震わせてユウコは言った。

 ユウコの言葉は、この国の住民からすれば、自分の父親を守りたい娘の身勝手な言葉に聞こえるかもしれない。

 それでも葵には――葵たちにとっては、それが当たり前の言葉に聞こえた。


 “頑張って人に報われて欲しい”

 “恩を仇で返しているのが、見ていられない”


 その感情は、例え親子でなくとも抱くものであっていいはずだ。

 それに、ユウコの言葉からは、父を糾弾する見当違いな者への罰も、自分の父を悪く言う人たちへの小言も何一つなかった。

 純粋な助けだけを求めた。

 そんなユウコの期待に応えないのは、人としてどうかしている。


 それに――


「――これももう呪いみたいなもんだな」


 初代勇者がかけた呪いは、科学を使用した武器の製造とそれに関する輸出入。

 だが、今のユウコの話を聞いて、初代勇者という五千年も前の偉人を、現代を生きる人々は崇拝している。

 それはもう過剰なほどに。

 そして妄信的に。


 ユウコは初代勇者の言葉を破ったことに対し、良くないことと言った。

 確かに、これはしないでね、という言葉を破るのは、あまり好ましくはない行為だろう。

 それでも、それをしなければならない状況に置かれ、最大限の気遣いを残した人のことを、良くないと表現する人間はひねくれていると言っても過言じゃない。

 だがユウコは、葵が接してきた限りでは歪んでなんていないし、父親を悪く思っているわけでもない。

 だと言うのに、そんな発言が飛び出してくるということは、初代勇者という存在そのものが洗脳じみた効力を持っていると言える。


 質が悪いのは、その洗脳が洗脳だと誰にもわからず、当人たちに自覚もなければ今ここで解く方法もないということ。

 時間をかけさえすればいずれは解けるものではあるだろうが、要求されているのは即時にコージを助けることであり、呪いじみた洗脳をゆっくり解いている時間はない。

 ただ、国民からの支持が大きく関わってくる民主主義国家である以上、議員を何とかする前に国民の支持だけでも回復したい。

 しかし、時間的問題が立ち塞がる。

 八方塞がりだ。


「……ごめんなさい。無茶を言ってしまって」


 葵が考え込み、返事をしないのを無理と捉えたのか、ユウコは申し訳なさそうに頭を下げた。


「葵さんは凄い人だとケンジさんから聞いていましたし、父との交流もあるとお店にいらしたときにお聞きしていたので、もしかしたら、と思って頼ってしまいました。すみません」

「……俺の方こそ、すみません。どうにかしたい、という気持ちはありますし、コージさんには色々と便宜を図って貰っているので、助けたい気持ちはあるんですが……聞いた状況だと俺にできることがなくて」


 こんな言い訳をしたいわけじゃない。

 でも、葵の口から洩れるのはそんな情けない言い訳だった。

 本当は、今すぐにでもコージの元へ行って助けたい。

 ユウコの望みを叶えて、恩人ともいえるコージも助けて、大団円で事を終えたい。

 でも、それに至るための手段がない。

 もしこうなる前に、こうなることを予測して動けていたら、なんて“タラレバ”が頭をよぎる。


「いえ、無理を承知でお願いしているのはこちらです。葵さんが気に病む必要はありません。私も含めて、誰もが初代勇者のように万能で完璧ではありませんもんね」


 悲しそうな笑みを浮かべて、ユウコはそう言った。

 その表情はとても痛々しくて、そんな表情をさせてしまう自分が酷く情けなくて腹が立つ。


 結愛ならこうなる前に動いていただろうか。

 結愛ならこんな状況になっても、諦めずに道を模索しただろうか。

 結愛なら――なんてことをいくら考えても、綾乃葵は結愛じゃない。

 結愛を目標にしていても、結愛にはなれない。

 それでも、葵は何かを生み出すことはできない。

 今までも、そしてこれからも、誰かの歩いた道を辿り、後を追うことしかできない存在だ。


 そこでふと、一つの考えが頭を過った。


「……いや、あるかもしれない」


 荒唐無稽。

 無茶で無謀で、下手をすれば葵自身が破滅するかもしれない、諸刃の剣。

 それでも、やる価値はある。

 だって、これは俺にしかできないことだから。


 ラディナたちの方を振り向く。

 そして、覚悟を決めた表情で、覚悟を込めた言葉で願う。


「皆。俺はコージさんを助けたい。だから、力を貸してくれ」


 その言葉に、頼もしい仲間たちは頷いてくれた。





 * * * * * * * * * *






「――以上のことから、コージ・ハツカ首相は総理大臣に相応しくないと考えます!」


 芝居がかったように、大声が響いた。

 その場所は、ニュースなどでよく見るような国会の討論をしている議場と酷似している。

 そんな議場の中心で、声高にそう叫んだのは、既に後退し始めた髪を少し長めに伸ばし誤魔化している、男性議員だ。

 その男性議員の声を受けて、後ろから野次のような同意が響く。

 まるで、子供の討論会でも見ているかのようなそれは、この議題自体が芝居そのものなんじゃないかと錯覚させる。


 そんな声を一身に受けて、なおも平静を装うコージに、対立する議員たちは聞いているのか! と激高する。

 それを受けてようやくコージは立ち上がり、マイクの前に立って弁明を始めた。


「先ほどから申し上げていますように、個人情報を管理するデータバンクは初代勇者様が残したシステムによって防御が成されています。私は首相として、その管理を任されてはいるものの、実質的な関与は不可能であり、責任を問われるべきは私ではないと考えます」


 それだけ言って、コージは再び席に戻る。

 その最中も、後ろから野次のような声が届いてくるが、それらは聞くにすら値しない暴言なども含まれているので、耳を傾けることすら無駄と言える。

 そもそも、先ほどから言葉を変えているだけで、内容自体になんの変化もないこの問答を、いつまで放映し続ける気だ、と少しだけ苛立ちを覚えていた。


 今の国会が、あまりいい印象を持たれていないことは知っている。

 その要因を作ったのが私だということも、最近、この国が物騒になっていることも知っている。

 それでも、今この座を退くわけにはいかない。

 召喚者に対して、まだやらねばならない責務が残っているからだ。


「この話題は平行線ですね。今日はこの議題を続けていても結論は出ないでしょうから、議題を変えましょうか」


 そう言いだしたのは、コージと対立する立場にある議員の男性だ。

 前回の総理大臣選挙において、コージに負けた一人でもあり、現在の国会が解体された場合、次期総理大臣と目される人物でもある。

 名を、ヒカル・タカナシ。


「二年ほど前、コージ首相が参加したと言われる第十次人魔大戦対策会議において、異世界から人を喚ぶことに同意したと言われ、そのことに対し今もなお弁明をしないというのはどういう意図があるのか、お聞かせ願いたい」

「それは今、関係のある話ですか?」

「ええ、ありますとも。コージ首相の信頼をより確かなものにし、あなたの発言の正しさを証明するためにも……ね?」


 いやらしいな、とコージは顔には出さず、内心でヒカルを睨みつける。

 確かに、異世界から人を喚ぶということを発表し、その後、弁明らしい弁明を避けてきたのは事実だ。

 というより、弁明をしても、それを曲解され、誤解され、ありもしない妄想を事実として捉えられてから、弁明に意味がないと悟った、というのが大きな要因だ。

 そして、曲解や誤解を流布したのがヒカルの陣営であり、つまるところ、このやりとりも茶番なのだ。


「以前にも言いました通り、現在、勇者様の行方がわかっておらず、我々の戦力は魔王軍よりも明確に劣ります。故に、強大な力を持つとされる召喚者様を喚び、力を借りようとした次第です」

「そもそもそれが間違っている。初代勇者様は、異界から人を喚んではならないと言っておられた。たとえ民の為だろうとも、たとえ初代勇者様の直系であられるコージ首相にであっても、それを破ることはよろしくない」

「そのことについては理解しています。しかし、この国の民だけではない。この世界に暮らす、あらゆる人類の存続の為に、六か国の代表が選んだことです。全体の利益から見ても、私が反論できる余地はない。故に、召喚された者たちが、せめて自由を損なわないような約束を結んできました」

「その程度のことは、私でもする。そもそも、問題としているのはそこではなく、召喚に賛同したということだ」


 この話題において、コージがどう反論しようとも、どう説明しようとも、ヒカルたちからの賛同は得られない。

 何せ、彼らは初代勇者こそ絶対であり、初代勇者の教えに背くことが悪だとすら思っているからだ。

 それは、ヒカルたちに限ったことではない。

 この国に数十数百世代に渡って暮らす国民は、そう言った思想を持っている。

 彼らの祖先が初代勇者の革命を見てきた世代であるが故に、子や孫へその思想が受け継がれるのだ。


 しかし、何の因果かは知らないが、初代勇者の系譜にはそう言った思想が植え付けられていない。

 当の本人が子供に対して、自分の功績をこれ見よがしに語らなかったからか、それ以外の何かがあるのかわからないが、コージはその矛盾の中で、こうしてヒカルたちと対面している。


 しかし、このままでは埒が明かないのも確かだ。

 正直に言えば、この国の為を思って四年ほど続けてきたこの総理大臣を降りるのは残念ではある。

 だが、こんなくだらないことの為にこの国の行く先を決めるための有意義な時間を使うことと天秤にかけた時、優先されるべきは後者だ。

 コージもヒカルも、この国をより良くするためにこの場にいるという一点は、変わらないのだから。


「……わかりました。そのことに関しては、あとでいくらでもそしりを受けます。だけど、今は待って欲しい。まだ私は、我々の我が儘に付き合わせてしまっている召喚者の皆様へ、恩を返し切れていない。だからせめて、人魔大戦が終わるまでは――」

「――そうはいきません」


 コージのせめてもの譲歩に、ヒカルはにべもなく首を横に振った。

 なぜ? と言葉では言えず、しかし表情で悟ったのか、ヒカルはいいですか、と前置きした。


「この国は今まさに、悪くなっている。代表的なのが治安の悪化。今回の議題であった個人情報のデータバンクを閲覧されるという大きな犯罪から、零区の組合近くで起こった大規模のいざこざなどがあります。それは全て、コージ首相が初代勇者様の言葉に背いた辺りから始まったこと。つまり、必要とされていることは、その悪化を招いた可能性のあるコージ首相が、今すぐにでも総理大臣という座から降りることにあります」

「それではダメなのです! どんな立場になったとしても私は召喚者の皆様に対し恩を返すつもりではありますが、総理大臣かそうでないかは返せる恩に大きく関わってきます」

「時間をかければ、同程度の恩を返せるでしょう?」


 ヒカルの言葉に、コージは首を横に振って答える。


「召喚者様は大戦に勝利した後、世界間転移魔術の準備が整い次第、すぐに帰還されます! 時間的余裕はないのです!」

「では、あなたがその身を削ってでも恩を返す必要がありますね。その結果を招いたのは紛れもなく新名自身なのですから、ご自身の粗相はご自身で片付けるのが道理でしょう?」

「それはっ……その通りですが……」


 ほら見なさい、とでも言いたげな表情をヒカルは浮かべる。

 見る人が見れば憎たらしい表情をしているが、今はその表情をただ受け入れるしかない。

 ヒカルの言っていることは筋が通っている。

 根本も根本は異常ともいえるが、それ以外の部分においては正しい。


 自分の尻は自分で拭く。

 当たり前の摂理だ。

 それが理解できてしまうから、コージは何も言えない。

 どれだけ言いたいことがあっても、何も言えなくなってしまう。


 完全に、流れをヒカルに持っていかれてしまった。

 もう、コージに勝ち目はない。

 その正論を壊せる何かを、コージは持っていないのだから。


 ヒカルが目で訴えかけてくる。

 早く選べ、と。

 何をかなんて言うまでもない。

 総理の悪事を糾弾し、総理が取る行動と言えば二つしかない。

 解散か総辞職か。



 この映像を見ている国民はどう思っているだろうか。

 当たり前の結果だと思っているだろうか。

 何かがおかしいと感じているだろうか。


 ユウコは、ユミ、どう思っているだろうか。

 一年もの間、無理を強いてきてこの様では愛想をつかされているだろうか。


 わからない。

 私は初代勇者様マキ・ハツカではないから、人の心はわからない。

 目の前にいるヒカルの表情が、悪しきものに見えて仕方がない。

 先ほどは国の為を想って動いているだろうと思ったが、本当はただ、総理という役職に就きたいだけではないかと、そう思えてきてしまう。


 わからない。

 私はどうすればよかったのだろう。

 召喚にもっと反対していればよかっただろうか。

 それをしていたら、今頃はどうなっていただろうか。


 ぐるぐると、色々なことが頭を巡る。

 何度も、何度も巡回しているが、一向に答えは出ない。

 それもそうだ。

 初めから答えの出る問答ではないのだから。


 総理大臣を辞めてから、どうやって召喚者様に恩を返そうか。

 葵くんには、申し訳ないことをしてしまった。

 翔くんや日菜子くんたちも、申し訳ない。

 昨日、あんなことを言ったが、それを果たすのはもう少し先になってしまいそうだ。



 この流れが止まらないと悟り、コージは心の中で、ここにはいない召喚者かれらへ謝罪する。

 だが召喚者へ恩返しを諦めたわけではなく、総理大臣を辞めるという判断を下しただけだ。

 ヒカルの思惑がどうであれ、この国を良くしてくれるものだと信じて、コージは素直に、その座から降ることを決めた。


「わかりました。私は――」


 ――総辞職を選ぶ、という発言は、突如大きな音を立てて開かれた扉によって遮られる。

 そちらの音の方を向けば、そこには見覚えのある少年が立っていた。

 短い黒髪に黒目を持ち、黒っぽい服装に身を包んだ、腰に刀を携える少年だ。


 その少年が扉を開け放ち、議場にいた全ての人間の視線を一身に受けている。

 この国会を放映しているカメラでさえ、その少年の姿を大きく映し出している。


 それを知ってか知らずか、少年はニヤリと悪戯っぽい笑みを浮かべて――


「俺の名前は綾乃葵! 此度、魔王軍との戦いに参加する、召喚者の一人にして、この国の――いや世界じょうしきを作った初代勇者の遺志を継ぐものだ!」


 ――誰憚だれはばからず、そう宣言した。



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