334話 例の説明




 前回のあらすじ


“なんという冷静で的確な判断力なんだ!!”


 以上!!



 牧師? に変装したマオは近くの食料品店に入る。幼い子供を人質に立て籠もる暴漢が、要求した金と食料のうち食料を調達するためであった。


 マオが食料を持って、暴漢が立て籠もる建物の前まで来ると、


「待て! そこから一歩でも近づいたら、子供を○すぞ!」


 暴漢はマオを怪しんで制止させる。


「牧師の姿でも近づけないの!?」


 アフラは思わず声をあげた。


「まあ、暴漢の対応が普通だけどね! だって、牧師のコスプレをした幼女だもの! 怪しいもの!」


 ソフィーの空気を読まないツッコミが入るが、彼女のツッコミはまたしても無視され物語は進む。


「まあ、女神の使いである牧師なら、信用できるだろう。ゆっくりとこっちへ来い!」

「信じたーー!?」


 なんと暴漢が一転して、マオを牧師として信じたのか接近を許したのだ。

 これにはソフィーも思わず秒で突っ込む。


「武器は持っていないようだな?」


 暴漢はマオを見て武器を持っていない事を確認すると、彼女に食料を持ってこさせるために更に近づくよう命令するが


「ん? 牧師様、偉く小柄でいらっしゃる。って、牧師と思ったら幼女じゃねえか!」

「味方よりもあの暴漢の方がまともな判断力を持っていたわ!」


 万事休す! 子供の命が危ないと思われたその時!


「まあ、俺はロ○コンだから、幼女の方が良いんだけどな!!」


 暴漢は人質の子供を離すと、マオを代わりに人質にしようとする。


「愚か者め!」

「ぐはっ!」


 マオのアッパーカットが、襲いかかってきた暴漢の顎にクリーンヒットして、その体を上空に吹き飛ばす。


 そして、マオはジャンプして上空に追撃すると、暴漢を空中でカンパーナ(釣鐘固め)というプロレス技を掛けるとそのまま回転しながら更に上昇する。


「くらえ、モアブ・ストレッチ!!」


 そして、暴漢を下にして落下を開始する。


「制式名称 GBU-43/B 通称モアブ(MOAB)”全ての爆弾の母“と呼ばれる爆弾並みの破壊力から、名付けたモアブ・ストレッチだ!」


「本当にそんな威力があるなら、ここにいるみんなに被害が出るんですけど!!?」


 マオの技の説明に、ソフィーがツッコミを入れた。

 だが、ソフィーの心配は杞憂で地面に激突したが、ダメージを負ったのは暴漢と着地点の地面だけであった。


「「「やったー!!」」」


「坊や~!」

「お母さん~」


 暴漢から解放された子供とその母は抱き合う。


「ありがとうございました」

「礼などいらぬ。我は子供を人質にするような卑劣なヤツが許せなかっただけだ」


 マオは母親にそう言うと、ソフィー達の元にやってきて


「三人とも、私のチームに入って戦っていることを期待する」


 そう言って立ち去っていった。


 そして、その背中を見守りながら、ノエミはソフィーにカンペを見せて台詞を促す。


「えっ? 私にこの台詞を言えっていうの?」

「コクコク」


 空気を読んだのか珍しく従うソフィー。


「えっ えーっと… ”命懸けで人助けをしたのに、それを誇るわけでも恩を着せるわけでもない… なんて気高い人なの”… これでいいの? えっ 最後は三人で一緒に!?」


「「「マオちゃん、紫音さんとは違う魅力のある人物……」」」」


 夕日をバックに歩くマオを見送りながら、三人はその小さな背中を称賛の眼差しで見つめ続けるのであった。



 ##############


 アキはメガネをクイッと上げながら、説明を始める。


「説明しよう! <チャック・ノ○ス>とは、私の元の世界― ではなく国でドラゴンの人に敗れた格闘家の名前だよ!」


「っで? そのノ○スさんとアフラに何の関係があるのよ?」


 説明を聞いたソフィーが、疑問を投げかけるとアキは続けた。


「それは、ノ○スさんがアフラちゃんと同じく一撃必殺を旨とする格闘技の使い手で、逆にドラゴンの人が使う格闘技は、サタナエルさんが使う格闘技と同じスピードと威力を兼ね備えたモノなんだよ!」


「それって、つまりアフラとサタナエルさんとの戦いの結末が、その人達と同じ様結果になると言いたいの?!」


「そういうことだね……」


 アキは神妙な面持ちで、再びメガネをクイッと上げると結論を述べる。


「そんな…… アフラ!!」


 ソフィーは心配そうな表情で、アフラを見ると二人はお互いを強敵と認めたのか、念入りに体をほぐすためにストレッチを開始していた。


「なっ なにぃー! ストレッチを開始しただとー!? そんなのまるで、あの戦いの再現じゃないの!?」


「えっ!? その二人も戦う前に、ストレッチをしていたの?!」


「うん…。これは、何かしらの因果に違い無いわ。きっと二人が戦えば、アフラちゃんはノ○スさんの二の舞に…!!」


「アフラ…… 」


 ソフィーは今にも加勢に向かいたい気持ちで一杯になったが、アリシアの護衛任務があるためにグッと堪える。


「まあ、でもノ○スさんはその後、その戦いの敗北をバネに軍隊に入って、大量の悪党どもを懲らしめたり、テキサス・レンジャーになって大量の悪党どもを懲らしめたり、毒蛇が噛んだら逆にその蛇が死んだりと凄い人になったけどね」


「何その人!? 本当にただの人間だったの!? というか、その人に魔王と戦って欲しいんですけど!?」


 驚くソフィーのツッコミが入ったところで、場面はリズ達に切り替わる。


 リズとミリアは、戦場の右端でケルベロスとヘルの両名と対峙していた。

 四人が暫く沈黙を続けた後、ジト目がチャームポイントと言い張るリズが声を出す。


「ケルベロスちゃん! 私と勝負ッス!」

「リズちゃん…… 」


 ケルベロスは、リズとミリアの決意に満ちた瞳を見ながら思う。


(リズちゃん達は、私達と戦う気満々だ… )


 だが、ケルベロスことクロエは、二人と戦う事に躊躇している様子である。


「さあ、ケルベロスちゃん! 私とこの<魔物バトル>で勝負ッス!!」


 腰の女神の鞄から自慢のカードデッキを取り出すと、クロエに見せつけるように前に掲げるリズ。


「えっ!? 勝負って、カードゲームで!?」

「そうッス!!」


 そう答えたリズは、チャームポイント(自称)のジト目を輝かせて自信満々に答えた。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る