317話 王妹様の実戦訓練
<激闘! 牛追い祭り>
<午前6時00 ミレーヌ邸 裏庭駐馬車場>
早朝から裏庭に設置された黒で塗りつぶされた看板の前に立たされる紫音とソフィー。
その黒一色の看板は赤い目に頭には上に角らしきモノが2つあり、あきらかに牛の頭を象っており、更に紫音の首には赤い布が巻かれているためソフィーは嫌な予感を感じる。
㋛「それでは、今回の企画発表の前にこの方をお呼びしましょう。FTV(フェミニーステレビ放送)のマスコット、ShiONちゃんです!」
ShiONちゃん(中の人アフラ)が現れ、元気よく動き回る。
㋞「朝から鬱陶しいのよ!」
だが、牛追い祭りが気になるソフィーは、その動きが鬱陶しく感じて、理不尽に叩いてしまうが、親友の気持ちが解るアフラは特に反撃はしてこない。
㋛「それでは、今回の企画をこの看板を使っておこないましょう」
看板はよく見ると文字を隠すために、上からいくつかのシールが貼られており、それを剥がして徐々に企画を発表しようという考えが見て取れる。
紫音が一番上のシールを剥がすとそこには<激闘!>の文字が書かれていた。
㋞「激闘…」
㋐「タイトルの頭に激闘が来ましたね」
アキがニヤニヤしながらそう発言すると、紫音は2枚目を剥がす。
すると、そこには<ソフィー>と書かれており、
㋐「何かの激闘にソフィーちゃん参加決定!」
㋞「なっ!?」
紫音はその横のシールを剥がすとそこには、<シオン><ShiONちゃん(アフラ)>と書かれている。
㋐「紫音ちゃんとアフラちゃんも参加決定だね」
ShiONちゃん(アフラ)は、猛牛とのバトルに胸を膨らませて、シャドーボクシングを始める。
淡々と3枚目のシールを剥がす紫音。
<私がトップだっ!>
㋐「トップといことは、何かを競争するということだね」
㋞「何の競争をするのよ?」
㋛「それは、次のこのシールを剥がせば解るよ」
<□□追い祭り>
紫音はそう言って、4枚目のシールを剥がすとそこにはこのような文字が書かれており、前2つの文字は更に隠されている。
㋞「追い祭り!? 何を負わせるつもりなのよ! <牛追い>なの!? 牛を追わせるつもりなの!? この眼鏡先輩!」
㋐「それはこの二文字のシールを剥がせば解るよ。紫音ちゃん、ソフィーちゃんが期待に胸膨らませているから剥がして」
㋞「膨らませてないわよ!!」
ソフィーの反論を無視して、紫音は次のシールを剥がす。
<う□追い祭り>
㋞「やっぱり、<う>じゃない! 牛追いじゃない!!」
㋐「バカバカしいですが、最後のシールを剥がして紫音ちゃん」
<うさ追い祭り>
㋞「うさ… 追い… これは… どういうこと?」
∩ ∩
( ⚪ ∨ ⚪ )
<激闘!>
<ソフィー、シオン、ShiONちゃん(アフラ)>
<私がトップだっ!>
<うさ追い祭り>
㋛「今回の企画は、可愛いウサギを追って捕まえてから、抱っこして<もふもふ>しようという内容だよ₍ᐢ。 ˬ 。ᐢ₎」
㋞「牛じゃないの?」
㋐「うさぎです」
㋞「じゃあ、この看板の2本の角は何なのよ!」
㋐「耳だよ」
∩ ∩←×角 ○耳
( ⚪ ∨ ⚪ )
㋐「ウサギ追うのに、どうしてアフラが必要なのよ」
牛と戦えないと知ったShiONちゃん(アフラ)は、少しがっかりしている。
#######
朝食後のフルメタルチャバンの後、紫音一行はアリシアの実戦訓練のために街から少し離れた草原に来ていた。
「よーし、みんな戦う準備はできた?」
「はい!」
「じゃあ、リズちゃん。索敵よろしく」
「はいッス」
アリシアは緊張しながら、剣を抜くと盾を構える。
冒険者育成高等学校の授業で、実戦訓練はそれなりに経験してはいるが、あくまで教官達によって安全がある程度保証されたモノであった。だが、これから行われる戦いは、そのような保証はないとアリシアは思っている。
だが、実際には紫音、レイチェル、ソフィー、リズ、ミリア、そして少しランクが落ちるがエレナという一級の冒険者で構成されたこのPTは下手をすれば、その訓練より安全かもしれない。
「ゴブリン、発見ッス!」
イーグルアイによって、リズは遠くの森近くにいるゴブリンの発見報告してくる。
「エレナさん、プロテクションを」
「はい、プロテクション!」
エレナはロッドに魔力を込めると、身体能力や防御力が少しだけ強化される神聖魔法をメンバーに掛けた。
「リズちゃん、ここまで釣ってきて」
「了解ッス!」
リズは久しぶりにグシスナルタに矢をつがえると、ミーが「ホー」と鳴いてGRファミリアを使わないのかと聞いてくる。
「今回はアリシア様の訓練ッス。GRファミリアは禁止ッス」
リズは頭上に浮くミーそう答えると、狙いを頭から胴体に落として矢を放つ。
放たれた矢はゴブリンに飛んで行き見事に胴体に刺さった。
ゴブリンは胴体に刺さった矢を抜くとその矢が飛んできた方向を見て、リズを発見すると物凄い勢いで近づいてくる。
「ミー、撤退ッス!」
「ホー!」
彼女はミーを連れて、皆がいるところまで駆け足でゴブリンを誘引するとアリシアは盾に魔力を込めた。盾には誘引灯が備えられており、魔力によって青く輝きゴブリンを惹きつける。
ゴブリンは虫のようにその誘引灯に惹きつけられると、アリシア目掛けて手に持つ剣を振り下ろすが、彼女の持つ盾<女神武器プリドゥエブル>に傷一つ付けることはできない。
ゴブリンは更に数度斬りつけるが、攻撃を受けるアリシアは微動だにしていないが、周りが一向に攻撃しないので不安になってくる。
「あっ あの~ どうして、誰も攻撃してくれないのですか?」
「よーし、いくぞ!」
「私がやろう!」
「私がやるわ!」
「はうぅぅ…」
「自分がやるッス!」
「どうぞ、どうぞ」
「どうぞ、どうぞじゃないッスよ!」
アリシアが一人攻撃にさらされていた頃、紫音達はその周囲でお約束を行っていた。
それは、誰が攻撃して撃破するか考えていなかったからであった。
「誰でもいいので、早くお願いします!」
流石にこれ以上アリシアに攻撃を受けさせ続けるのは不味いと感じて、レイチェルがゲイパラシュを振り上げ、一撃の元にゴブリンを撃破して魔石にする。
「シオン様~ わたくし怖かったです~」
アリシアは紫音に抱きつこうとするが、彼女はそれを軽やかに回避した。
「もう、酷いです! シオン様、わたくし攻撃を受け続けて怖かったのですよ! シオン様に抱きついて、心を癒やすのは当然の権利だと思います!」
アリシアが紫音への百合行為を、そのような少し苦しい理由で正当化しようとするが、紫音に論破されてしまう。
「何を甘えたこと言っているの、アリシア! 冒険者なんだから、魔物の攻撃を受け続けるのは当然でしょう! その度に私に抱きつくつもり?!」
「心が折れる度に、ミリアに抱きついて心を癒やしていたダメ先輩がよく言えたわね!」
「はぅ!?」
紫音は自分の心が折れる度に、ミリアに抱きついていたのを棚に上げて、アリシアを窘めたことをソフィーに突っ込まれ、年上の面目を潰されてしまう、もちろん自業自得・因果応報である。
「酷いよ、ソフィーちゃん! 今それを言うことないじゃない! お陰でお姉さんは大恥かいちゃったよ! これはもうミリアちゃんを抱きしめて、心を癒やされるしか無いよ!」
「はわわわ~~」
言っている側から、紫音はミリアを抱きしめながらそう言い放ち、ミリアは敬愛する紫音に抱きしめられてドキドキしてしまう。
「シオン様~~」
そして、そんなダメポニーに百合王妹様が抱きつくというおかしな状況になってしまう。
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