283話 魔王軍の夜





 前回のあらすじ?


「クオン、今は私の事で話をしているのに、アキトの話をするのはよしてもらおうか…」


 アリーシスはクオンから出た別の男の名を聞いて、いつもの紳士な態度を一変させるとクオンを強引にベッドに押し倒すとそのまま彼のシャツも引きちぎるように強引に脱がせる。


「や、やめてくれ、アリーシス!!」


 ##


「そっ それから、どうなってしまうのですか!?」


 アキのクオンシリーズのこれからの構想を聞かさたエレナは、大興奮して続きを聞くが勿論返ってくる答えはこうである。


「それは、もうやりまくりにするよ。なにせ昼は紳士な王子のアリーシスも、夜は野獣だからね」


「アキトや他の者達が居ない所で、そんな事をするなんて… 紳士なアリーシスがそのような狡い事をするでしょうか?」


 アリーシスは紳士な王子の設定なので、そのような抜け駆け行為をして、更に強引にクオンを自分のモノにするのかと疑問に思いエレナはアキに訪ねてみた。



「あの計算高いアリシ― アリーシスが、二人きりの夜という好機を逃す筈はないからね。チャンスとばかりに今頃は巧みに紫― クオンの部屋に入り込んで、一夜を共にしようとするのは当然のことだよ。むしろこうしないと物語として、不自然になると思うよ」


 アキはモデルのアリシアが恐らく自分達がいない間に、紫音の部屋に行っていると読んでおり、お陰でうっかり言い間違えそうになる。だが、何とか誤魔化しながらこのような構成を考えた説明をエレナにおこなう。


 そして、最後にこのような格言を言った。


「それに、私の国の昔の偉い人が言っていたよ。恋愛において、『速さは力』だと! どれほど魅力的な相手に出会っても、『遅ければ他の男と仲良くなっている』と! つまり、『先手必勝』で、相手より『速く!!』行動して、先に仲良く(意味深)なればいいという事だよ!!」


(※なお、この引用の解釈には、アキの主観が大いに入っていることをご留意ください)


 #####


 その頃オーガ本拠点では―


 魔王とリーベ(真悠子)とエマが、洋酒を片手に酒盛りをしてすっかりご陽気になっていた。

 何故、魔王がここにいるかというとそれは昼間に遡る。


 一人アルトンの街で留守番をしていて寂しくなった魔王は、昼間頃にやってきて『魔物精製魔法陣』増設を手伝うと晩御飯前には作業は完了したので、そこから差し入れで持ってきた酒で大人女子会という名の酒盛りを始めたのであった。


 そして、女神の懐中時計の針が指すのは夜の9時―


 二時間にも及ぶ酒盛りで三人はすっかり出来上がっており、泥酔したリーベこと真悠子はエマにこのような事を言い出す。


「エマは美人だし、頭も良くて運動もできたから…、スクールカースト上位で… アレでしょう…?  自由の国だから、酒と薬をキメながら、アメフトの選手と乱交していたんでしょう?」


 リーベの問い掛けは、海外ドラマの影響で偏見に満ちていた。


「なんですか、その偏見と悪意に満ちた想像は… いくら、真悠子さんでも許しませんよ!? 私は敬虔なクリスチャンとして、聖書の教えに則ってそのような不埒な真似はしていません!」


 エマは敬虔なクリスチャンなので、聖書の教えを守って婚前交渉は駄目だとしている。


「そういうお二人はどうなのですか? お二人共美人だし、学生時代はモテたんじゃないですか?」


「「私達も… その… 敬虔なクリスチャンだったから…」」


 魔王とリーベは目を逸しながら、そう言い訳をするとエマは敬虔なクリスチャンを馬鹿にされた気がして少しイラッとしてしまう。


 その表情を見たリーベと魔王は、彼女に謝りつつ学生時代の腐女子だった頃の話をする。


「私は… 男は付き合う対象ではなくて…、×(掛け算)を楽しむ対象だったわね…」


「私も真悠子と一緒ね… BL三昧だったわ… カプの順番で、友達とよく激しい論争をしたわ… 兎○か虎○か、空○か折○で、よく揉めたわ。そして、お約束のカプ違いによる喧嘩別れよ… 私も若かったわ……」


 そう言った魔王が遠い目をしながら、過去を懐かしんでいる。


 一時間後―


 椅子に座ったまま眠るエマ

 空のコップを片手に持ったままテーブルに突っ伏して眠るリーベ

 テントで眠ろうとしたが、入り口で力尽きて酒瓶を持ったまま眠る魔王


 そこには酒に呑まれてしまった駄目なお姉さん達の姿があり、それを見たクロエは幼いアンネにこう言って聞かす。


「アンネはお酒を飲み過ぎて、呑まれてしまうような駄目な大人になっては駄目だよ」

「わかったの~」


 二人はアンネのぬいぐるみ達の力も借りて、酔って眠ってしまったお姉さん達をテントまで運び込む。


「以前もこうやって、エマ姉をテントまで運んだような… そうだ、オーク本拠点の前日だ! 確かあの時は、次の日に寝坊して大変だったなぁ… 今回はああならないといいけど…」


 クロエはこの泥酔したお姉さん達が明日の朝、寝坊せずに起きられるのだろうかと心配しながらテントへと運び込む。


 そして、運び込みが終わるとクロエとアンネは、自分達のテントで寝袋に入り明日に備えて眠り就こうとする。


「アンネ、眠るためにお話をしてあげようか?」

「いいの~ クロエお姉ちゃんのお話は変だから余計に眠れないの~」


 アンネは前回の経験からクロエの申し出を断るが、彼女もそこは反省しているらしくこのような提案をしてくる。


「大丈夫、今回はバトルのない『3匹の子豚』にするから」

「それなら、お話してほしいの~」


 クロエの提案を信じたアンネは、お話を聞かせて貰うことにする。


 だが、30分後―


 自分色に脚色した『3匹の子豚』を熱く聞かせるクロエと、彼女にお話を頼んだことを後悔するアンネの姿がそこにあった。


「『くらえ! ハリケーンウルフブレス!!』


 狼が前の2つの家と同じ様に大きく息を吹きかけても、レンガの家はびくともしない!


『いいだろう!! 今度は木っ端微塵にしてやる! あの豚共のようにな!!』


 狼は壊れる様子のないレンガの家を見て、苛立ちながらそう吐き捨てるとその言葉に三男豚が反応する。


『あの豚共のように?…

 兄さん達のことか…

 兄さん達のことかーーーーっ!!!!』


 兄達をバカにされた事で、怒りに燃える金色に光る三男豚は狼にむかって… 」


「もうねたいの~」


 ここから、小一時間ばかりクロエの『3匹の子豚・改』は『魔人編』まで続き、クロエとアンネは今回も夜ふかしする事になった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る