273話 オーガの足を止めろ その2
前回のあらすじ
JCアキにセクハラ行為を受けた事を思い出した紫音であった。
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「オーラを浪費させずに、できるだけ効率よく足に攻撃をして、四天王の動きを止める!」
紫音は走りながら、脇構えに持ったムラクモブレードにオーラを溜めて、オーラの大太刀を作り出し撤退するオーガ軍の殿を務めるホシグマに迫る。
「いけっ! ゴッデスマガタマファミリア(GMファミリア)!」
紫音の命令を受けたGMファミリアは、左肩の上に浮いているプラットフォームから、飛び立つとホシグマに向かって飛んで行き、その眼前や頭の周りを飛び回り注意を引きつける。
そうなると、目の前を飛ぶ鬱陶しいGMファミリアをホシグマは、武器や腕を振って叩き落とそうとするが、走りながらの攻撃では素早く動くGMファミリアには上手く当てることが出来なかった。
ホシグマは立ち止まると手に持った大剣を両手で握りその場で回転して、自分を中心に回転する大剣とその回転で発生する風で周囲を飛ぶGMファミリアを一網打尽にしようとする。
「馬鹿! やめなさい、ホシグマ!!」
その行動に気づいたリーベが、薙刀に付いた宝玉で中止命令を出したが一歩遅かった。
「やあっ!!」
リーベの命令より早く紫音のオーラの大太刀が、ホシグマの右足を達人のような太刀捌きで見事に切り裂き改めて主役の実力を見せつける。
右足の膝から下を斬り落とされたホシグマは、その場で右膝を地面に付いて片膝をつく体勢となり、紫音は忌まわしい過去を思い出してしまったが、オーガ四天王の一体の足を止めることに成功した。
「よし、上手くいった! それでは、撤退!!」
ホシグマが動けなくなったことを確認すると、敵に背中を見せる事を恥と思わない主人公である紫音は、追撃することもなく脱兎の如く後退して距離を取る。
「シオン・アマカワ…! これ以上は、好きにはさせない!」
「待ちなさい、エマ! ここは、ホシグマを置いて退くわよ!」
エマが踵を返して、紫音に戦いを挑もうとするとリーベがそう言って制止した。
「これ以上、あの娘の好きにさせるのは!」
「アレを見なさい!」
リーベの指差す方向を見ると、紫音の側にはソフィーが追いついており、更にその遥か後方ではあるが、大勢の人影が迫ってきているのが見える。
「どうやら、人間側はこちらの意図に気づいて、足止め部隊に遭遇する度に割いた戦力に相手をさせて、本隊は追撃を続けて来たみたいね。アナタの国の一昔前の多段式ロケットみたいなものね」
「私は行きます!」
「今は耐えるのよ! 生きてこそ得られる勝利のために! アナタの命私が預かるわ!」
リーベはどこかで聞いたような説得力のあるセリフでエマを説得し、彼女は臥薪嘗胆の想いで従う。
リーベはもちろん閣下×悪夢である。
その頃、吶喊を成功させ逃げてきた紫音は、追いついたソフィーと話をしていた。
「やったじゃない、シオン先輩!」
「私の華麗な活躍を見ていた、ソフィーちゃん? この頼れるお姉さんを慕ってくれても良いんだよ?」
「その後、一目散にコッチに逃げて来たけどね」
「あうぅ!? 見られていた!」
紫音がオーガ軍の様子を、一向にデレてくれないソフィーと一緒に窺っていると、オーガ軍はホシグマを置いて再び撤退を開始する。
「オーガ軍本隊が、逃げるわ! 追いかけなくては!」
「駄目だよ、ソフィーちゃん。私達だけでは追いかけても、返り討ちにあっちゃうよ!」
紫音の言う通り、オーガ軍本隊にはまだ無傷のリーベ、エマ、もう一体の四天王が残っており、返り討ちにあう可能性が高い。
「そうなれば、ドジっ子メイド<シオニャー>とツンデレメイド<ソフィニャー>に、されてしまう可能性が高いんだよ!! あっ、でもツンデレメイド<ソフィニャー>は見たいかも!!」
「だれが、ツンデレメイドよ! あと、アナタが心配で追いかけてきたわけじゃないんだからね! 勘違いしないでよね!」
ツンデレメイドを想像して興奮する紫音に、ツンデレ少女はツンデレツッコミをおこなう。
フラット姉妹が楽しそうにしているうちに、ユーウェイン率いる追撃部隊50人が追いついてくる。
「どうやら、四天王一体の動きを停めてくれたみたいだな。シオン君、感謝する」
「よーし! 後は俺達に任せな!」
ユーウェインの感謝の言葉の後に、スギハラがそう言って刀を鞘から抜く。
彼は紫音の手柄を横取るつもりでそう言いたわけではなく、これ以上年上として紫音達年下に負担を掛けたくないという気持ちからであり、敵本隊が既に撤退を再開させてしまっている以上、ホシグマだけでも自分達が倒そうと思ったのである。
「そうだな…。これ以上、我ら大人が不甲斐ないばかりに、シオン君達に負担を掛けるわけにはいかないな。シオン君、後は我らに任せてくれないか?」
ユーウェインは剣を抜きながらそう言うと、二人は紫音の返事を待つ。
何故ならば、前述したとおり紫音にまだ戦う気があるなら、手柄を横取りする悪い大人と彼女に思われてしまうからであり、よって彼女の返事を聞いてから行動に移さねばならないからである。
そして、紫音の返事は勿論こうである。
「ぜひ、お願いします!」
「即答じゃない!!」
その即答ぶりは、ソフィーが思わず突っ込んでしまうほどの何の迷いのない、素早い返事であった。
紫音が即答したのは、連戦の疲れからか精神的に疲れており、そのせいか既に無念無想状態から元に戻ってしまっているため、二人にお任せしようと思ったからである。
「後は、任せてくれたまえ!」
「ゆっくり休んでいな!」
二人はそう返事をするとホシグマに向かって歩き始めた。
「片足を失っているとはいえ、油断するなよ」
「そんなことは、言われなくてもわかっているよ」
ホシグマは片足を失っているとはいえ、それ以外は無傷であり未だ強力な戦闘能力を有する強敵であることに変わりはない。
「それにしても、俺達大人が情けないばかりに、彼女達若者にかなり負担を掛けてしまっているな…」
ユーウェインの自分の力不足で、紫音達若い冒険者に負担を掛けていることに対して、申し訳ないという気持ちを聞いたスギハラはこう答える。
「そうだな…。俺達がもっと艱苦奮闘して、若い奴らに楽させてやらねえとな。まあ、とりあえずは、コイツを倒さないとな!」
「そうだな!」
二人はホシグマに近づくと、気合を入れ直して戦闘態勢に入った。
こうして、王国騎士団の双剣対ホシグマによる追撃戦最後の戦いが始まる。
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