番外編 アッキーちゃんねる 導かれし腐女子達と+1
いつもの茶番のつもりでしたが、思った以上に話が膨らんでしまったので、今回は急遽番外編とさせてもらいます。
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それは、紫音達が元の世界でJCだった頃―
伊川詩織はその日、『俺とお前の学園クロニクル』の開発が一段落ついて、久しぶりに家で休日をのんびりと過ごしていた。
すると、昼から大学時代からの後輩で、今は会社の後輩でもある黒沢真悠子が尋ねてきて、一緒に彼女が動画投稿サイトで見つけた動画を見ましょうということになった。
「先輩、このゲーム実況動画の主がよく私達が会社で作ったゲームや学生時代に作った同人ゲームなんかを紹介しているんですよ」
「へぇ~、そうなの」
伊川も自分達が過去に作ったゲームをプレイしてくれていると思うと制作者として嬉しく思い、実況動画は声優のモノしか興味がない彼女も一緒に見ることにした。
自分の分と真悠子の分のコーヒーを持った伊川は、部屋の中央に設置しているガラス製のおしゃれな机の前に座り、横に座る真悠子にコーヒーを渡す。
コーヒーを受け取った真悠子は、持参したタブレットを伊川にも見えるように机の上に置くと件の動画を再生させようとする。
するとあることに気づいて、井川にこのようなお願いをしてくる。
「先輩、新着の動画が上がっているみたいなんで、そっちを見てもいいですか?」
「別に構わないけど…」
可愛い後輩のお願いに、伊川は無下にも出来ずに了承する。
「ありがとうございます! では、再生!」
「どうも~、アッキーちゃんねるのアッキーです!」
画面に映ったのは、口にマスクを付けて顔を隠しているJCのアキであった。
アクティブオタクであるアキは、その明敏な頭脳による軽快な喋りと編集技術、マスクをしていてもわかる可愛さと何よりJCということでそれなりに人気があり、この動画サイトで得た収益をBLゲームや本を買う資金の一部としていた。
「ねえ、この子JCよね…?」
自分達のゲームを紹介しているということは、当然18禁ゲームも紹介しているわけであり、JCであるアッキーが紹介するのはもちろん問題行為であるため、伊川は動画を勧めてきた真悠子に確認してみる。
「いえ、本人は20歳って言い張っていますよ?」
すると、彼女からはこのような返事が返ってきたので、更に突っ込んだ質問をする。
「言い張るって、アナタもこの子の事、JCだって思っているわよね?」
「きっと、合法ロリですよ」
確かに真悠子の言う通り世の中には、実年齢より幼く見える女性はいるので、伊川はコーヒーを少し飲んでから、彼女もそうなのだろうと納得しておくことにした。
「あと、今回は私の親友のポニーちゃんもいますよ!」
画面に現れたのはJCの紫音で、同じくマスクをして顔を隠している。
「ねえ、アッキーちゃん。これ本当にマスクをしていたら、身バレしないよね? ね?」
紫音は親友のアキに懇願され、断りきれずに動画出演を承諾したが正直後悔し始めていて、正体がバレないか確認を何度もしてくる。
「大丈夫、大丈夫。もう何個も動画出しているけど、まだ凸されたこと無いから」
アキは心配する紫音にそう言って、不安を取り除く。
「何! この可愛い黒髪ポニーテールちゃん! 頭に黒猫耳つけさせて、黒猫メイドにしたい!」
「真悠子… 犯罪だけはやめてね…」
そう言いながら、興奮して画面に食いつくように見ている後輩に、伊川は心配しながらそう言葉をかけた。
「それでは、今回プレイするゲームはこれ! あの国民的ゲーム『ドラクエ4』です!」
「それなら、私も聞いたことあるよ。有名なゲームだよね」
『ドラクエ4』とは、正式名称『ドラゴン・クエスチョン4』という国民的ゲームの4作目で、ゲームに疎い紫音でも知っている超有名ゲームである。
「因みに私のPTは、勇者♂、戦士♂、武闘家♂、僧侶♂で、設定は少し幼い顔の総受け勇者とガチムチの俺様戦士とストイックな武闘家、そしてクールで知的な僧侶となっています!」
「その設定必要ないよね!?」
ツッコミ要因ポニーちゃんのツッコミが早速入り、動画にメリハリを与える。
「まずは、城の周りでLV上げをします」
アキは最初の城の周りで、軽快なトークをしながらLV上げを始める。
紫音はこんなLV上げなんて単調な作業を見せられて、視聴者は楽しいのだろうかと思いながら、退屈そうにアキのプレイを後ろから見ている。
「さあ、HPとMPも減ってきたから、宿屋で回復させるかな」
アキはそう言って、操作しているPTを城の中に入ると宿屋に向かって進ませる。
「一泊10ゴールド払って、宿泊と」
アキはニヤつきながらそう言うが、マスクで顔半分が隠れているために、紫音は気づいておらず、アキが<はい>を選ぶと画面は宿泊の効果音と共に暗転する。
すると、暗転を終えた画面には裸の勇者と裸の筋骨隆々の戦士が絡む、18禁画面が映し出される。
「ひゃあわあああああ!!??」
紫音は突然画面に映し出された18禁絡みシーンに驚いて、変な声を出しながら顔と耳まで真っ赤にして画面から顔を逸す。
その紫音の反応を見たアキは、お約束のようにこう言い始める。
「おまっ、おまえこれ、おまえ、『ドラクエ4』は『ドラクエ4』でも、『”ど”んどん出てくるドラクエのイケメンキャラ達が”ら”たい(裸体)になって、宿屋で“く”んずほぐれつ(組んず解れつ)、PT”4”人全員で、昨晩はお楽しみでしたね。』略して『ドラクエ4』やないか!!」
予想していた方もいると思うが、アキがプレイしていたのは『ドラゴン・クエスチョン4』ではなく、伊川と真悠子が作った同人BLゲームであり、もちろん18禁である。
しかも、このゲームRPG要素は最初の街の周りで同じ敵と戦えるだけで、メインはPTメンバーによる宿屋での絡みシーンである。
「また私を騙したんだね、ア<ピー>ちゃん!!」
テンパって本名を言ってしまった紫音のセリフに、編集で入ったピー音が鳴った後に、アキは前回と同じようにバシバシ叩かれる。
「ごめん、ごめん、ポニーちゃん」
アキが謝罪すると紫音は、彼女がゲームを間違えたことに対して突っ込む。
「また、ワザと間違えたでしょう!!? 前回も思っていたけど、そもそもゲームの名前の長さが違いすぎて、間違えようがないよね!? それと流石に、タイトルの略し方が前回よりも無理矢理だよ?!」
確かに今回の略し方は紫音に突っ込まれなくても、かなり無理矢理だという事は、アキ自身がわかっていた。
だが、例え無理矢理な略し方で視聴者には気付かれたとしても、アキには紫音さえ騙せれば良かったので、これぐらい雑な略し方でも良かった。
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