216話 我の名は
前回までのあらすじ
なんとエマが武器の特殊能力を発動させ、身体能力を強化させ主人公側と同じパワーアップ方法を使ってしまう。
この敵が同じ方法で強化されるという胸が熱くなる王道な展開に!
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エマは、紫音に反撃させないようにスピード重視かつ、近距離で打撃を放っているために威力のある一撃が撃てない。
彼女の計画では、特殊能力発動で強化した身体能力による予備動作なしでの超高速のストレートリードで、紫音に致命的一撃を与えるというものであったが、その攻撃を紙一重で防がれてしまった。
なので、それを防がれてしまった以上反撃されないように、連打で攻撃を封じるしか無かった。
しかし、紫音はエマの連続攻撃の一瞬の隙を付いて、右手を左腰の折れた打刀に手をかけると、居合の要領で素早く鞘から抜刀する。
するとオーラの刀身が伸びその刃で横薙ぎに斬撃を繰り出す。
「やぁ!!」
「くっ!?」
エマは何とか反応してバックステップで回避する。
紫音はエマの攻撃を防ぎながら、少しずつ打刀にオーラを溜めておき、抜刀した時にオーラの刀身を作り出したのであった。
「オーラウェイブ!」
打刀を振ってオーラの光波をエマに向かって放つと、紫音は打刀を納刀してオーラのサーベルだけで、オーラウェイブを回避したエマに突進して斬撃を繰り出す。
エマは紫音の袈裟斬りを回避するが、すぐさま紫音は刃を返して横薙ぎを放つ。紫音はエマに懐に入られないように、今度は自分が連続で斬撃を繰り出した。
身体強化されたスピードで、高速で移動しながらエマの死角に回り込み、攻撃を繰り出すが同じく強化されているエマはその攻撃を回避し続け、隙があれば反撃を試みる。
エマはこのままでは、埒が明かないと思い一度距離を取った。
そして、紫音も距離を詰めずにオーラのサーベルを中段に構えると、オーラを溜め始める。
それは、エマが次の一撃で勝負を決めに来ると直感で感じ、自分も“蒼覇翔烈波”で対抗しようと考えたからであった。
エマは利き手利き足を前にして、オン・ガード・ポジションで構えたまま利き足の右足にオーラを溜めている。
そして、お互い相手から見ても解るほどオーラを溜めると、エマはオーラと同時に左手に溜めていた魔力を使って、紫音の目の前に魔法陣を発動させた。
「スパーク!」
エマは、雷属性の最高位魔法”スパーク”を紫音の目の前で発動させると、魔法陣から轟音と共に激しい雷が眩しい光を放ちながら放電され続ける。
「眩しい!!」
紫音はエマの動きを見るために、魔法陣越しに彼女を凝視していたために、スパークが放つ激しい光に目が眩んでしまい一時的に視力を失ってしまう。
雷属性無効化の能力を持つエマは、スパークの中を駆け抜けてくると、そのスピードを活かしたまま跳躍して強力な飛び蹴りを紫音に放つ。
「シオン・アマカワ…もらったぁ!」
エマの渾身のオーラの飛び蹴りが、視力を失った紫音に命中する!
―と、思われた時!
「悪いが、そうはさせんぞ!」
紫音の前に再びフードマントの人物が現れ、右手を前に出しマジックシールドを発動させてエマの飛び蹴りを受け止めるが、エマの飛び蹴りの威力でマジックシールドは破られてしまう。
だが、右の掌で飛び蹴りの残りの威力を受けきって、エマを押し返して彼女と距離を取った。
(私の渾身の飛び蹴りを防いだ!?)
押し返されたエマは地面に着地すると、すぐさま構えを取り邪魔をした人物を見ると、エマの飛び蹴りを受けた時の衝撃波で被っていたフードが外れ素顔が顕になっている。
「!?」
その素顔を見たエマは驚きの余り声が出せなかった。
この世界では女神の加護による能力強化で、アンネやアリシアのように見た目ではその強さはわからない。
だが、この恐らく10歳以下であろう幼すぎる姿に、あれ程の力があるとは流石に思えなかったからであった。
(アンネよりも幼いかもしれない…。こんな子が私の飛び蹴りを防いだというの……)
エマは信じられなかったが、自分の飛び蹴りを止められた事は、確かな事実である為に認めざるを得ない。
「アナタ! 一体何者なの!?」
エマは目の前の少女に、何者なのか尋ねる。
「我の名はマオ…。マオ…………」
マオと名乗った少女は、ファーストネームを名乗った後に、セカンドネームを名乗ろうか迷って少し黙ってしまう。
「マオである! セカンドネームはあるが、言いたくないから教えぬ!」
そして、結局言わないことにした。
(この幼女ボイスは、あの時の幼女ちゃんだ!!)
紫音はその年下ちゃん好き能力をフル発揮して、マオの声を照合し見事正解させる。
そして、ようやく視力が回復して目が見えてくるようになり、目の前に立っている少女の姿が目に映った。
その紫音の目に映った少女の姿は、アンネと同じか少し小さい体にフードマントを装着し、髪はリズより明るめの白銀色でこめかみの少し上あたりでツインテールに結んでおり、ツインテールの長さは左側より右側のほうが短くなっている。
そして紫音が何より印象的に感じたのは、マオがこちらを振り返った時に見たルビーのように紅く輝いた瞳であった。
「綺麗な紅い瞳……」
紫音がその瞳に思わず感想を呟く。
「どうやら、眼は見えるようになったようだな、シオン・アマカワよ。言いたいことは山のようにあるが、まずは目の前のアヤツをどうにかするぞ」
すると、それを聞いたマオは紫音にそう言って、再びエマの方に向く。
(なんだろう…。マオちゃんとは、何故か初めて会った気がしない…。ずっと昔から知っていたような気がする……)
マオを見て理由はわからないが、何故か昔から知っているような気がする紫音。
(やっぱり、私の思った通り可愛い幼女ちゃんだった! 後で私の推理を”年下ちゃん好き乙”って態度を取ったソフィーちゃんとリズちゃんに、デレ謝りしてもらわないと!)
自分の事を白眼視した二人に”萌える謝罪”をしてもらおう、そう心に思う紫音であった。
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