205話 オーク本拠点侵攻作戦開始
前回のあらすじ
狼に食べられた赤頭巾!
しかし、それはわざとで狼のお腹の中に囚われているお婆さんを助けるためであった。
狼のお腹の中は異次元空間になっており、探索には苦労したが見事お婆さんを発見した赤頭巾であったが、異次元空間であるために中々脱出できない。
赤頭巾が出口を探していると、目の前に狼が生み出した分身が現れ戦闘状態になる。
その頃、赤頭巾を助けに来た猟師は、分身を体内にいる赤頭巾と戦わせることに夢中になって、自分に気付いていない狼を見つけると鞄からハサミを取り出す。
それはディメンションシザーズ(次元鋏)で、次元を切り裂くことができるものであった。
倒してもすぐに再生する狼の分身に、徐々に追い込まれる赤頭巾であったが、そこに猟師のディメンションシザーズが狼のお腹と次元を切り裂いて、彼女とお婆さんを異次元から救出する。
果たして赤頭巾は狼を倒すことができるのか?
それは、クロエの気持ち次第である。
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翌朝、紫音達は『仲良し三義姉妹』の夜襲を警戒しながら一晩を過ごし、そのためにあまり眠れない冒険者達もいた。ソフィーもその1人で、少し寝不足気味でテントの外で眠そうに体を動かしている。
そして、その横で元気に体を動かしている二人に、だんだん腹が立ってきた。
「能天気なアフラはともかく、どうしてシオン先輩まで夜襲があるかもって状態で、バッチリ眠れましたみたいな感じでいるのよ!」
「ソフィーちゃん、能天気なんてひどいよー!」
その理不尽な言葉にアフラが怒る横で、紫音はこう答える。
「いやー、その時はその時かなって思っていたら、いつの間にか寝ていて朝までぐっすりだよ」
「いつもはヘタレのくせに、どうしてそんな感じで眠れるのよ!」
紫音は”たしかに”と思った。
確かに元の世界では、受験の前夜など緊張で中々眠れないことがあったのに、振り返ればこの世界に来てからは、不安で眠れずに睡眠不足になった事は無い。
これは、この世界に来る前にフェミニースの精神強化のお陰で、“寝不足は仕事のパフォーマンスが下がるから駄目“という、彼女の理念から与えられたものである。
「きっと、弱い私の心が剣術の鍛錬と実戦で鍛えられた事により、泰然自若の精神を手に入れたに違いないよ」
そうとは知らずに紫音は、キリッとした顔でソフィーにそう答えた。寝不足気味のソフィーは今迄の紫音のダメさから“そんな訳ないでしょうが!“と、少しイラッとしてしまった。
オーク本拠点と睨み合いを続ける冒険者達が、昼食の時間が近づいてきたのでその準備を始めた頃、遂にアキのアイアンゴーレムの生成が終了する。
「いでよ、ゴーレム5 伍ータム!」
アキがエメトロッドに魔力を込めると、巨大魔法陣から寸胴の重厚なデザインのゴーレムが出現した。
「また、このずんぐりむっくりなの?」
ソフィーがアキにそう尋ねると、彼女はこう答える。
「前回あまり活躍できなかったから、雪辱戦と思ってね」
「ねえ、アキちゃん。あの可愛い小型ゴーレムちゃん達は?」
紫音は、前回いた4体の小型ゴーレムが見当たらないので、アキに質問してみた。
「前回あの子達のクロスボウ攻撃が、あまり有効ではなかったから今回はやめたの」
すると、アキは前回の反省点から、今回は使用しないと返答する。
(がーん!)
ミリアはあの可愛い小型ゴーレムを気に入っていたので、アキの返事を聞いて心の中で1人ショックを受けていた。
そうこうしているうちに、ユーウェイン率いる本隊が紫音達のいるキャンプ地にやってきて合流を果たす。
彼が率いてやってきた軍勢は、前回同様大型クランも多数参加しており、大軍となっていた。
前回被害の割に宝物を得られなかったので、今回大型クランの参加はないと思われていたが、今回も宝物獲得のために参加していた。
今回こそ沢山の宝物が手に入るかもしれないという人間の欲を、魔王は甘く見積もっている。そのため今回の人間側の戦力は、要塞騎士団と冒険者は数十名ぐらいで総勢150名位という魔王の計算は外れ、戦力は前回と同じくらいの総勢300名位となっていた。
ユーウェインの指示で、前回同様キャンプ地に馬車と必要ではない物資、それを守る守備兵を置いて、オーク本拠点から500メートルの地点まで進行すると、そこに補給物資を置いておく陣営を設置する。
そこから200メートルの地点に投石機を設置して、戦闘準備を始めた。
戦闘準備を終えアキのゴーレムが追いつくのを待つと、ユーウェインの戦いの前の激励が始まる。
「今日この場にいる、勇敢なる兵士と多勢の有志の冒険者諸君! 共に命をかけて戦うことに感謝する。この戦いは我々にとって2度目の敵本拠点の攻略作戦である。前回は我らが勝利したが、今回もそうとは限らない。だが、油断しなければ今回も我らが勝利を掴むはずだ! そして攻略が成功すれば、我らはこれ以降オーク軍からの侵攻を受けずに済むことになる。それは、すなわちこの国と人類の平和へまた一歩近付くという事である! 今回の戦いも我らを守る石の壁と堀はない! だが、その代わりに志を同じくする大勢の頼もしい仲間がいる! だから、何も恐れることはない! 君達と生きて勝利の喜びを分かち合うことを期待している、以上!」
ユーウェインの激励が終わると、そこに居る者たちは、これから行われるオーク本拠点侵攻作戦に挑むために、自らを奮い立たせる為に鬨の声をあげた。
オーク本拠点は、高い石壁と幾重にも堀られた堀に囲まれており、門から続く道以外には逆茂木さらに乱杭が設置されており、その道もあまり幅はなく人間側にとっては攻めづらくなっている。
「火属性魔法スクロール矢で、燃やしますか?」
「いや、それでは鎮火するまでに時間がかるし、煙を隠れ蓑にしたオーク達に奇襲を許すかもしれない。ここは、アキ君のゴーレムに任せるとしよう」
リディアの問いかけにユーウェインはこう答えると、アキに逆茂木と乱杭の撤去を指示する。
アキはユーウェインの指示を受けると、伍ータムに命じて逆茂木と乱杭の上を歩かせた。
全身鉄で作られた伍ータムは、木製の逆茂木と乱杭の上を歩くだけで、その重みで粉々に破壊することができる。
そして、オーク達の本拠点からの遠隔攻撃もその防御力から、余りダメージを受けることはなく、逆茂木と乱杭を順調に破壊していく。
こうして、人間側の本拠点攻撃は順調に開始された。
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