93話 リザード軍撤退
紫音、ユーウェイン、ミリアの【女神武器】の新たなる特殊能力の発動によって、リザード軍に大打撃を与えたので、リザード軍は副官2名と残り40名ぐらいになっている。
ミトゥルヴァのお腹の装甲が開くと、光輝く女神の宝玉が現れそこから声が聞こえてきた。
(この声は、ハンニャ―仮面のお姉さんの声ッスね……)
リズは何故彼女の声で、この様な発言がなされたのかを訝しがったが、貰えるものは貰っておくことにする。
「今は力が貰えるなら、ありがたく貰っておくッス。」
「ホ――」
「ミーから、魔力が送られてくるッス! これならやれるッス!」
リズは飴玉を口に含んで、脳への糖分補給を行なうと着弾予測眼で近くにいるリザード三体の頭にターゲットマーカーを付け、ミーに目標の指示を行なう。
「ミー、GCファミリア発射ッス!!」
「ホ――!」
特殊能力発動中のミーの目はいつもの可愛い丸い目ではなく、つり上がった逆三角形の様な形で赤い色になっていた。
特殊能力が発動して魔力がブーストしているため、GCファミリアから放たれた魔法の矢は通常時よりも2倍程の大きさになっている。
頭に魔法の矢を受けた三体のリザードは、そのダメージから標的をリズにして彼女を攻撃するべく近寄ってきた。
「ミー、次弾発射ッス!!」
「ホ――!」
魔力ブーストのお陰で次弾装填も瞬時に完了しミーは、すぐさま第二射を向かってくるリザードに行ない、さらに第三・四・五射と連射で発射しリザード三体が接近してくる前に撃破する。
「これは、凄いッス! ミー、魔力の続く限り発射して、リザードを撃破ッス!」
「ホ――!」
リズは自ら敵を求めて移動すると、リザードの弓兵に狙われてしまう。
「ホ――!」
すると、ミーは矢の接近する方向をリズに知らせる。
リズは慌てて回避する為に後方へジャンプすると、自分の予想以上に身体能力が上がっていることに気付く。
「これは……、体も何か軽いッス! ミーもそう思うッスか?」
「ホ――!」
リズはそう言って、ミーの方を見ると
「ミ―、目赤っ!! しかも分かりやすい逆三角目になってるじゃないッスか!?」
彼女は今更になって、相棒の変化に気づく。
「ミーも気合十分ってことッスね! ミー、さっき矢を撃ってきたリザードにお返しッス!」
「ホ――!」
GCファミリアから強化された魔法の矢が六発放たれ、全て頭に命中した弓兵リザードは一瞬にして魔石に姿を変える。
「この際、後方にいる弓兵を倒せるだけ倒すッス!」
リズは強化された身体で飛んでくる矢を回避しながら、ミーに命令してGCファミリアで弓兵リザードを一体ずつ倒していく。
「ホー(衰)」
最初に倒した一体から、さらに弓兵を四体倒した所でミーが、特殊能力の停止をリズに告げた。
「ええ、もう終わりッスか!?」
リズがミーに問い質すとすぐに効果が切れ、彼女自身も体が一気に重くなるのを感じる。
「これは、まずいッス……」
リズは重くなった体で慌てて後方へ下がろうとするが、そこに残った弓兵リザードの矢が彼女目掛けて飛んでくる。
「うわーー!?」
リズが飛んできた矢を回避できないと思った瞬間、ソフィーがオーラステップで加速してきて、既の所で両手に持ったブレードで叩き落とす。
「ツンデレお姉さん~!!」
「だれが、ツンデレよ!!」
リズが助けてくれたソフィーといつものやり取りを終えると、アフラがリズを右脇に抱えて走り出す。
「アフラお姉さん!?」
「このまま、後方まで連れて行くよ!」
「ありがとうッス」
そして、飛行速度が遅くなってきたミーを左手で抱えると、アフラは今日三度目の後方輸送を行なう。
リザード軍は20体近くまで減らされた事と、四天王二体を撃破された事により後方部隊指揮を任されていた副官クチビロは撤退の合図を告げる。
すると、リザード達は戦闘をやめ撤退していく。
だが、人類側にそれを追撃する余力も気力もなかった。
ユーウェインはリザード達が完全に退却するのを確認すると、剣を支えに立ち上がり左手で剣を杖代わりにして体を支え、右腕を高らかに上げ勝利宣言をする。
「諸君、今回も我々人間の勝ちだ! 共に勝利を分かち合おう!!」
ユーウェインの勝利宣言に、戦いに参加していた者たちが一斉に勝鬨をあげた。
今回は人間側にもかなり被害が出たが、それに勝る戦果が戦った者たちを高揚させた。
ユーウェインは、四騎将に怪我人への救護の指示を出して暫く体を休める。
紫音はようやくオーラが少し回復して目覚めると、周りにはリズとミリア、そしてアキがいた。
エレナはまだ負傷者の回復で忙しそうだ。
「勝ったの?」
「はい、今回も私達人類の勝ちッス!」
紫音がそう問いかけるとリズが高級魔法回復薬を飲みながら、誇らしげにそう答える。
「そう、よかった……」
紫音はその答えを聞いてホッとした。
「みんな無事で良かったよ」
紫音が仲間の無事を喜ぶと、リズがこう答える。
「自分はちょっと危なかったス。ツンデレお姉さんと、アフラお姉さんのお陰で助かったッス。それと、ミーも魔力が無くなって、さっきから元気ないッス」
リズの言う通り、ミーは先程から頭の上で元気なく停まっていた。
「HPとMPの量と、特殊能力の効果時間は常に気を配って置かないといけないよ。これはMMORPG必須のプレイヤースキルだよ。まあ、他にも色々管理するものはあるのだけれど……。そうでないと、最悪チャットで罵倒の嵐が飛んでくることに……」
「MMO? RPG? チャット?」
リズはアキから出た初めて聞く単語に不思議そうにしている。
アキは”しまった”という顔をして、すぐさま話題を変えた。
「それにしても、人類側もそれなりに被害が出たみたいだね。エレナさんもエスリンさんも回復に大忙しだね」
アキは辺りを見ながら、そう口にする。
「今回はヒュドラのせいで、堀が使えなかったッス。だから、正面衝突するしか無かったッス」
「でも、水堀になっていたお陰で、私達は助かったけどね……」
紫音はその要塞前の水堀を見ながら言った。
アキに戦ってくれたことに対して、紫音は感謝をする。
「それより、アキちゃん。冒険者でもないのに、戦ってくれてありがとうね」
「まあ、成り行きだったからね……」
「お姉さんは冒険者ではないッスか?」
「うん。私は冒険者ライセンスを持ってないよ。これでも漫画家だからね」
アキの漫画家という言葉にリズは興味を持つ。
「どんな漫画を書いているッスか?!」
「ほほう、興味があるのかな、リズちゃん」
「駄目、リズちゃんにはまだ早いよ! 勿論ミリアちゃんにも!!」
紫音は狼のような目をした幼馴染を見て、慌てて話に割って入る。
「そんな事無いよ、紫音ちゃん。私が14の頃には……」
「アキちゃんとリズちゃん達は違うの! まだ早いと紫音お姉さんは思います!」
アキはその紫音の発言に少し引っかかったが、たしかに純真な少女をこの泥沼のような世界に引きずり込むのはまだ早いかと思い、この話題を切り上げた。
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