87話 ヒュドラの脅威
ヒュドラがウォーターブレスで猛威を振るい始めたその時、ヒュドラの首にオーラのビーム砲ともいうべき攻撃が当たり、首が一つ千切れて地面に落ち黒い煙となって消滅する。
「フェイタルアロー!」
それはリディアがガーンサルンヴァの特殊の力を発動させ、大量のオーラを消費して放ったフェイタルアローであった。
「あと2発、必ず当てる!」
「私も負けてられないッス! ミー、GCファミリアあの首に一点集中ッス!」
GCファミリアから放たれた6つの矢は首に全弾命中するが、首を落とすまでのダメージは与えられていない。
そのため、リズがもう一斉射しようとすると、ヒュドラの首の一つがこちらを向いてウォーターブレスを吐こうとしている。
それを見たリズは咄嗟にミリアの後ろに逃げて、みんなにも声をかけた。
「みんなも、早くこっちッス!」
皆はリズに言われるがまま、ミリアの後ろに移動する。
「えっ!? えっ!?」
ミリアがこの状況に驚いていると、ヒュドラのウォーターブレスが飛んできた。
「あわわわ……」
ミリアがその恐怖ですくんで動けなくなっていると、肩にいるケットさんが両前脚を前に出して、肉球からマジックバリアを展開する。
「ナーー!」
ミリアの前に展開されたマジックバリアが、ウォーターブレスを防ぎきった。
「えぅ、えぅ……」
ミリアはマジックバリアに守られていたとはいえ、目の前でウォーターブレスが迫ってきたことの恐怖で泣きそうになっている。
それを見たソフィーが、ミリアの頭を撫でながら慰めた。
「怖かったわね。でも、アナタも冒険者ならすぐに泣きそうになては駄目よ」
リズは泣きそうになっている親友を横目にケットさんに話しかける。
「流石はケットさんッス! 必ず防いでくれると思ったッス!」
ケットさんはリズに向かってジャンプすると尻尾で頭を叩く。
「ナー(怒)」
「あう、ごめんッス。ミリアちゃんもごめんッス」
ケットさんに怒られたリズも、ミリアの頭を撫でながら謝る。
「でも、おかげで助かったわ!」
リディアはそう言ってガーンサルンヴァを構え直すと、予告通り残り2発を見事に命中させ、首をさらに2つ落とすことに成功した。
そして、リズも先程自分がダメージを与えた首にさらに2度一斉射し、合計18発魔法の矢を命中させ一つ首を落とすことが出来る。
リズ自身も弓で攻撃すればよかったのだが、初めての大規模戦でアイギスシャルウルと弓を併用しながら、更に自分の周囲に注意を割く余裕がなかった。
クリスはウォーターブレスを回避し着地しようとした時、ぬかるんだ地面で足を滑らせ体制を崩す。
ウォーターブレスの水によって、地面がぬかるみ状態になっていたためであった。
「しまった!?」
体勢を何とか立て直した時、ナイルがその隙きを見逃すわけはなく彼女に攻撃を仕掛けてくる。
「!!」
クリスは回避が間に合わない。
「やらせるか、縮地!!」
間一髪のところをスギハラが縮地で加速してクリスを助けるが、彼女を庇った彼自身は深手を負ってしまった。
「ぐっ!!」
だが、彼が庇っていなければクリスは、死に戻りとなっていただろう。
「団長!? しっかりしてください!」
クリスはスギハラの深い傷を見ると、急いで彼を回復役のいる所まで連れて行こうとするが、ナイルがそれを黙ってみているわけがなく二人に攻撃を仕掛けてくる。
ナイルの死角にオーラステップで、急加速したユーウェインが現れ魔法剣を放つ。
「魔法剣アイスストーム!」
ナイルはその攻撃に反応して剣で受け止めるが、剣が衝突した金属音と共にその場で冷気の竜巻が発生する。
ナイルは冷気が苦手なため、急いでバックステップして距離を取った。
「これ以上、貴様の好きにはさせん! クリス君、こいつの相手は私に任せて、スギハラを早く!」
「お願いします」
クリスはスギハラを引きずって、急いで回復役のいる所まで連れて行く。
「隊長、一人では無茶だ!」
タイロンはリザードと戦いながら、一人でナイルに対峙するユーウェインに、無謀であることを伝える。
「そのような無茶は、私の無理でこじ開ける!!」
それに対しユーウェインはこう答えるのであった。
要塞戦は一進一退の戦いから、ヒュドラの攻撃で徐々に人間側の負傷者による離脱が増えてきている。
エレナも他の回復役達に混じって、負傷者回復に追われていた。
そこに深手を負ったスギハラが連れ込まれてくる。
「エレナさん、早く回復を!」
「はい、わかりました」
珍しく焦っているクリスを見て、エレナは急いで回復魔法をかけた。
ヒュドラは残った5つの首で、ウォーターブレスによる攻撃を続けている。
リディア達弓部隊も何とか残りの首を落とそうと攻撃するが、火力が乏しくようやく首を一つ落とせたと思ったら、一つが再生するというイタチごっこになっていた。
まだ幼いリズとミリアは要塞近くの安全地帯まで下がって、そこで高級魔法回復薬を飲みながら、消費したMPと戦闘から来る精神的疲れを回復させる。
すると、要塞の後方の空から、雷のような音がかすかに聞こえてきた。
「何の音ッスか?」
「雷?」
「少しずつこちら側に、近づいてきているッス」
二人が雷と勘違いした音は、近づいてくるラッキー7号のジェット音で、そのコクピットの前に座るアキが、要塞とその先にいるヒュドラを発見する。
「デカイのがいるね……。アレは首の数が減っているけど、たぶんヒュドラだよ!」
「アキちゃん、戦局はどう?」
「うーん。まだ、遠くてよく見えないけどああいう化け物がいる時は、苦戦している事が多いね、ゲームや漫画だと……。よってプランBで行くよ!」
戦場に近づくにつれて見えてくる戦況を見た二人は、人類側が苦戦しているというアキの予測は見事に的中していることを確認した。
「りょ、了解!」
要塞に来る道中、紫音とアキは外に手を出して、Dカップの重さを楽しんでいただけではない!
ちゃんと、要塞についた時のプランを、いくつか事前に話し合っていたのだ。
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