42話 いざ、要塞へ
紫音達は、要塞防衛戦が始まる日まで鍛錬を続けた。
そして、ついに紫音は防衛戦前日の夜オーラブレードを、実戦でも何とか使えるようにまで習得する。
「これで、何とか戦えるはず……」
明日の要塞防衛戦に不安を覚えながらも、紫音は自分の剣の腕がどこまで通じるか、胸を高鳴らせている剣士としてのもうひとりの自分が居ることに気がつく。
「戦うことに慣れてしまったなぁ……、これが良い事なのか、悪いことなのか……」
紫音はそう考えていると、いつの間にか睡魔に襲われ眠ってしまう。
翌日―
紫音達はミレーヌ達に見送られ、カシードとの待ち合わせ場所の街の入口に来ていた。
そして、紫音はみんなに彼を紹介する。
「今回、私達PTの盾役を引き受けてくれた、クラン”月影”所属のマーシー=カシードさんです!」
「どうも、マーシー=カシードっすわ。みなさんよろしくお願いするっすわ」
そう挨拶したカシード(?)は、スキンヘッドのカツラを被って、彼に変装したスギハラであった。
「えっ? スギハラさんッスよね? 完成度の低い変装をしているッスけど」
リズの言葉を聞いた紫音は、すぐさま彼女のその言葉をかき消すように、カシード(?)に話題を振る。
「カシードさんはこの三日間、何をしていたんですか?」
「ずっとシコ― 四股を踏んで体を鍛えてたっすわ」
エレナは若干引きつった笑顔でその答えを聞くや否や、間髪入れずに下ネタに対して釘を差す。
「そうなのですか! でも、そちらのクランと違ってここには子供もいますので。間違っても、いつもの調子でそちらのクランのノリで悪影響のある言葉はやめてくださいね!」
そのエレナの意見を聞いたカシード(?)は、すぐさまこう答える。
「やっ、辞めてくださいよ、エレナさん! あんな低俗なクランの話をするのは! 全く馬鹿馬鹿しい」
(いや、アンタの立ち上げたクランだろ!)
ミリア以外の三人がそう心の中で突っ込む。
「で、何でそんな変装をしているッスか?」
リズが空気を敢えて読んでいないのか、そんな質問を続けてくる。
「リズちゃん、大人の世界には色々あるの! ここは気付かない振りをしてあげるのが色々丸く収まるの! それが大人になるということなの! でないと、クラン施設が怖い人に吹っ飛ばされちゃうの!」
もちろん紫音も変装に気付いていたが、三日前のミレーヌの言ったことを思い出して、この茶番に付き合っていた。
「大人の世界って大変なんッスね…」
リズは年上たちをジト目で見つめながらそう呟く。
「とにかく時間がないので、その先で待たせてあるクラン所有の輸送馬車で、要塞に向かうっすわ。詳しい説明は道中でするっすわ」
紫音達は案内されて輸送馬車のところまで来ると、馬車の近くでクリスが立っていた。
「輸送馬車なので、アナタ達が普段乗っているミレーヌ様の馬車程乗り心地は良くないけど、時間がないから急いで」
馬車の中で紫音は変装を解いて、自分の装備を着けているスギハラに、紫音は茶番に付き合わされた事への説明を求める。
「実はカシードが昨日突然、伝染症の高熱風邪になってしまったんだ」
「見事にフラグを回収したわけよ……」
クリスが怒りと呆れが混じった表情でそう呟いた。
「そこで、私とアフラでアナタ達をサポートするから心配しないで。前線に出過ぎなければ、私とアフラで十分アナタ達を守りきれるから」
クリスはそう紫音達に説明する。
「もう少しで要塞だな」
スギハラがそう言うと、遠くにフラム要塞が見えてきた。
「アレが人類の最終防衛の場所……」
よく見ると要塞の一番高い所にある設備が、灯台のような光を放っている。
その光は淡い青色でこの距離からでも目を惹きつけた。
「あの光はなんですか?」
「アレは魔物を誘引する誘引灯よ、アレのお陰で魔物が要塞を目指して進行してくるの。その代わりに大量の魔石電気が必要だから、要塞に女神の炉が備え付けられているわ」
クリスの説明にスギハラが付け加える。
「要塞防衛戦では、あの誘引灯は最重要防衛目標になっている」
「ちなみに盾役も携行できる誘引灯で敵の注意を引き付けるの。そのために盾役はMPがある程度ないとできないの」
「なるほど、そうなんですか」
紫音はスギハラとクリスの説明を聞いて納得した。
つまりは、コンビニなどの入り口にある誘引灯のようなものだ。
要塞が近づいてくるとその大きさに改めて驚く。
「凄く、大きいですね……」
エレナがそう呟くと、スギハラがエレナと会話のチャンスとみて話しかける。
「エレナさんは、フラム要塞は初めてですか?」
「はい、私には縁のない場所でしたから」
「そうなんですか」
だが、会話が続かない……
クリスが少し不機嫌な顔で外を見ていた。
紫音はミリアとリズに質問する。
「二人はフラム要塞に来るのは初めて?」
「はい、初めてです」
紫音のこの質問に、ミリアからは予想通りの答えが返ってきた。
「要塞には姉がいるッス。だから、できれば来たくなかったッス……」
リズからはこう返ってくる。
「お姉さんと仲が悪いの?」
紫音がリズに尋ねると、彼女は首を横に振りながら口を開く。
「仲は悪いわけではないッス。ただ、姉は私にすぐ小言を言ってくるので、苦手なだけッス」
(それはリズちゃんに原因があるような気がする……)
紫音がリズの普段の行いを鑑みて、そう思っていると馬車が要塞に到着した。
激戦の時は迫る。
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「次回 んほぉ! オークだらけの大水泳大会っすわ、もちろんポロリもあるっすわ」
※勿論、いつもの次回予告詐欺っすわ。
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