39話  副団長戦決着







「ソフィーちゃん、まだその子達を虐めるって言うなら私が相手だよ!」


 アフラが指差したままそう尋ねると、ソフィーは逆に問い質す。


「何よ、アフラ。敵に付くっていうの!?」


 彼女の質問に、アフラは指を指したままこう答える。


「だって、私は団長からソフィーちゃん達の戦いを、止めるよう言われているもん!」

「お姉様の邪魔をしようっていうの!?」


 敵の味方をするのかと尋ねられたアフラは、少々脳天気な感じでこう答えた。


「私は団長のほうが好きだから、団長の言うことを聞くもん!」


 アフラがスギハラを好きなのは、規律に厳しくうるさいクリスに対して、彼のほうが甘くて大目に見てくれるからである。


(まあ、あの子達と戦うよりかはいいか……)


 ソフィーにとっては、アフラの言葉は渡りに船であった。

 年下二人と戦うより、同世代の彼女と戦うほうが気分的には楽だからだ。


 戦いそのものを止めるのが一番ではあるが、それは自分の否を認める事になり、若いソフィーにはそれを認めることができなかった。


「いいわよ、アフラ! だったら勝負よ!」


 ソフィーはそう言うと、ブレードをもう一本抜いて本来の二刀流に構え直す。

 彼女とアフラの戦闘力は拮抗しており、本来のスタイルで挑まなければ勝つことは難しいからだ。


「ソフィーちゃんのわからず屋!」


 アフラはソフィーを非難すると、ナックルを装着して構えた。

 ソフィーとアフラは距離を保ったまま様子を見ている。


 同じクランの為お互い手の内が解っている分、迂闊に先に動いたほうの分が悪い可能性があるからだ。


(考えていても仕方ない何とかなる!)


 だが、そういう駆け引きが苦手なアフラは、思い切って仕掛けてみる。


「えいっ! やあっ!」


 アフラは右ストレートから蹴りを放ってみるが、ソフィーには当たらない。


「無理よ、無理! 私に当たるわけないじゃない!」


 ソフィーは、相変わらずのスピードで回避しつつ、アフラの死角にオーラステップで加速すると斬撃を放つ!


 すると、アフラは天性の動体視力と反射神経で反応してその斬撃に合わせる!


「うーーりゃあ!」


 アフラの力いっぱい放たれたナックルは、ソフィーの打ち込まれたブレードの峰の部分を的確にとらえて押し返す。


「この馬鹿力!」


 パワーはアフラのほうが上なので、ソフィーは右ブレードを弾かれたが、それと同時に左ブレードをその打ち込んできた腕の篭手に叩きつける。


 だが、右ブレードが弾かれ体勢を崩しながら打ち込んだ為に、ソフィーの斬撃はダメージをあまり与えることが出来なかった。


 しかも、アフラは格闘家のため打たれ強く、ソフィーが思っている以上にダメージを受けていない。


「よし、大丈夫!」


 そのためアフラは打ち込まれた左手をブンブン振って、腕の感触を確かめると構え直した。


「この脳筋!」


 ソフィーはその頑丈さに、腹立たしさからそう呟いてしまう。


「あの格闘家のお姉さん強いッスね」


 リズがミリア、エレナ、カシードの居る所にやって来て、カシードにそう質問する。


「ああ、彼女は格闘家としてはとても優秀だよ。だが、ソフィーちゃんもスピードは一級品だから回避力は恐ろしく高い。この勝負どうなるかわからんよ」


 すると、カシードは二人の戦いを傍観しながら、そう答えた。


「ファントムステップ!」


 ソフィーは残像攻撃でアフラを翻弄して、斬撃を打ち込む戦法に出る。

 リズに使った戦法だ。


「いっぱいいるなら、全部に攻撃すればいいだけだよ! ひゃくれつぱーんち!!」


 アフラは拳の弾幕を張り、ソフィーの残像全てに攻撃を行う!


 連続パンチは、一発一発は軽くなってしまいソフィーでも打ち負けない為、彼女は攻撃を捌き切り、さらにオーラステップでアフラの死角に入る事ができた。


「貰った!」


 ソフィーが背中に打ち込もうとした瞬間、アフラは反射的に左手で無理矢理バックブローを放つ。


「!?」


 だが、そこは唯のツンデレではないソフィー。

 咄嗟にバックブローを放ってきたアフラの左手のナックルに、斬撃を当てヒットを阻止する。


「うわっ!?」


 アフラはナックルに攻撃を当てられてびっくりした。

 ソフィーの実力ならもっと有効打になる所を狙えたはずで、それをナックルに当ててきたからであった。


「ソフィーちゃん、そんなに攻撃を当てたくないなら戦いをやめたらいいのに」


「違うわよ、別にアンタに攻撃を与えたくなかったわけじゃないわよ! 手が滑っただけよ! 勘違いしないでよね!」


 アフラのその呼びかけにソフィーは、ツンデレのテンプレ台詞で返してくる。


(面倒くさい、ツンデレお姉さんッス)


 リズがそう思っている間に、二人は三回攻撃を応酬しあうがお互い攻撃が当たらない。


「ふん! アンタの攻撃なんて当たらなければどうってことないわ! そして、アフラ! アンタの攻撃は私には当たらない!!」


 アフラの攻撃を巧みなステップで回避しながら、ソフィーは自信満々にそう言い放つ。


「だったら、当たらなくても良い攻撃をすればいいだけだよ!」

「なっ?! アンタまさか、あの技を使う気じゃ!?」


 ソフィーはオーラステップでアフラに接近していたが、そう言った後に急ブレーキを掛ける。


「アレを使う気か!? 三人共、俺の背後に急いで隠れて!」


 ミリア達三人はそう言われて、カシードの大きな体の後ろに一列に並んで隠れた。


「いっくよー! はいぱーおーらーぱーーんち!!!」


 アフラは右手にありったけのオーラを宿らせると、地面にその右手を叩きつける。

 その瞬間、ハイパーオーラパンチのインパクトの衝撃で強力な爆風が起きて、その強力な爆風は砂煙と共にソフィーも吹き飛ばす!


「いや~~! アフラの馬鹿~~!!!」


 ソフィーは恨みごとを言いながら、爆風で吹っ飛ばされ地面を転がっていく。

 ミリア達三人はカシードが風よけとなって吹き飛ばされずに済んだが、砂埃で砂まみれになってしまった。


 そして、その爆風と砂煙は紫音とクリスのところまで到達するが、爆風はかなり弱くなっていたが、砂煙は健在で距離を置いて対峙する二人の視界を遮る。


「ファイアーウォール!」


 砂煙で視界が見えないことに危機感を覚えたクリスは、火の壁を自分の周りに発動させる防御魔法を発動させた。


 トラップ魔法を配置しようとも思ったが、この視界では紫音がどのルートから来るか解らなかったため、複数セットしなければならず設置が間に合わない可能性があると考えたからである。


 火の壁を選んだのは、土の壁では強力なオーラウェイブを受けた時に、自分の逃げ場が無くなるからだ。火の壁であれば攻撃を受けて最悪火の壁に突っ込むことになっても、火のダメージと火傷で済み、まだ戦闘続行できると計算したからであった。




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