第37話 カード作成


 薫に手を引かれ、そろそろ駅に着く。

上下線の二路線しかない駅で、隣にはコンビニがある。

構内に入り、料金の書かれた路線図を見ると俺の知っている駅名ばかり。

良かった、公共機関は問題なさそうだ。


「切符位一人で買えるわよね?」


「ああ、だ丈夫だ。薫は買わないのか?」


「私はカードがあるから。あんたは持ってないでしょ?」


 カード。恐らくチャージ系のカードの事だろう。

俺も作っておきたいな、ここで作れるのか?


「なぁ、俺もカード作ろうと思うんだけど、作れるか?」


「そこの窓口で作れるわよ。ちょっとだけ時間はかかるけどね」


「じゃぁ、ちょっと作ってくるよ」


「分かったわ。私は隣のコンビニで雑誌見ているから、終わったら来なさいよね」


「わかった。終わったら行くよ」


 俺は薫と別れ窓口に向かう。

ん? 窓口に誰もいない。


「すいませんーーん」


「はーい! 今、行きまーす」


 奥の方から声が聞こえてきた。

なんだ、奥にいたのか。良かった。


 しばらくすると一人の女性が窓口に来る。

俺を見た女性は口を半開きにして動かない。

何だこいつ? 俺の顔に何かついているのか?

というか、何か話せよ。俺は待っているんだ。


「あのー、すいません」


 いつまでたっても女性が話をしないので、俺から話しかける。


「も、申し訳ありません。呆(ほう)けてしまいました」


「そ、そうですか。えっと、カード作りたいんですけど」


「カード! カードですね! かしこまりました。では、手続きいたしますので、こちらの部屋に!」


 ……? カード作るだけで部屋? この場でさくっと作ればいいだろう。

仕方ないので、俺は隣の扉を開け、小部屋に入る。

せ、狭い。何だこの狭さ。半畳も無いんじゃないか?

机と、椅子が二つ並んで置かれている。あまりにも狭すぎる、匠を呼んでリフォームしなければ!


 でもしょうがない。椅子に座り手続きをするのを待つ。


「お、お待たせしました!」


 さっきの女性の声だ。扉から入ってきた女性は、なぜかさっきまで着ていた制服のブレザー脱いでおり、シャツ一枚に。

シャツのボタンも三つ開いており、ブラちらしている。うん青色よーし。

栗色のショートカットで毛先がくりっと外側にはねている。見た感じ二十代半ばかな?

やや童顔で目がパッチリしている。

ネームには『佐々木瑠依(ささきるい)』と書かれている。


 受付の女性はトレイに何か色々と紙類を載せており、結構な枚数がある。

え? これ全部に何か書くんですか? ちょっと多くないですか?


「今日は新規のカード作成でよろしいでしょうか?」


「はい、大丈夫です」


「カードについて説明しますか?」


「そうですね、簡単にお願いします」


「かしこまりました!」


 女性は俺の隣の椅子に座り、足を組む。

三角地帯が生々しい。ひざ上丈のスカートも男心をくすぐる。

お主、なかなかやるのぅ……。


 しかーも、俺の位置からだとばっちり胸ちらです。

ブラちらでもあり、谷間ちらでもある。神様ありがとう。


「では説明しますね……」


 俺は女性に説明を受ける、それも丁寧に。

少しずつだが、俺に寄ってきている気がする。

でも、まぁ気のせいだろう。


 カードの名前はノルカ。現金をカードにチャージして使える便利カードだ。

対応していればコンビニやスーパー、ドラッグストアや駅構内の店舗、自動販売機で使える。

男性のカードはちょっと特殊で、電車、バスの代金が半額になるらしい。

しかも! 特急券も半額だって! わぉ、ありがとう! 半額は嬉しい! 


「では、この書類に氏名と、年齢、住所と連絡先を」


「ここですね。連絡先は自宅でいいですか?」


「え? 携帯はお持ちで無いのでしょうか?」


「持ってません。持つ予定はありますが……」


「それではご自宅で」


 女性が少しがっかりした表情になっている。

え? 持ってないのがそんなに悪いの?

そして、俺は何も考えずに普通に書き込む。

氏名、年齢、住所、連絡先。 これでいいかな?


「はい、ありがとうございます。こちらのカードをお渡ししますね」


――ピロリロリーン!


 純一はノルカを手に入れた!

これで電車乗る時は小銭いらずだね!


「では、カードの使い方ですが、ちょっとカードを持っていただけますか?」


 女性に言われ、カードを手に持つ。


「ん、ちょっと持ち方が……」


 女性は俺の手を握り、カードの持ち方についてレクチャーしてくれる。

柔らかい手に、髪からいい匂いがする。おふぅぅ、石鹸の匂いかな?

濃い香水とかの匂いではなく、優しい香りだ。

そして、腕に彼女の胸が当たってくる。いや、押し付けてきている気がする。


 彼女の表情を見てみると、少し顔が赤くなっている。

しかも俺の足に、彼女の太ももがぴったりくっついているではありませんか!

触れているとかのレヴェルではない。ぴったりくっ付いています。


「あ、あのーちょっと近くないですか?」


 俺は勇樹を出して女性に言った!

俺、頑張ったよ!


「そ、そんな事はありませんにょ。これがふつーです」


 にょ? 今、にょって言った!

積極的に責めてくる駅員さん。

仕事熱心なのか、それとも……。

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