桜の記憶
迷子になった子どものようにこちらを見る桜を、震える瞳で睨み付ける。
「でもじゃねぇよ! このまま戦って勝てるのか!?」
片桐の能力は桜に対して絶対の効果を発揮する。
そもそも桜自体が片桐の能力によって具現化した一部なのだ。
抗いようがない。
まして、今の桜の精神状態では尚更。
「じゃあ雄治も……」
「馬鹿、狙われてんのはお前なんだよ! 今は俺に構ってねぇで先に――」
俺の腕を掴み一緒に逃走を図るつもりだったのだと思う。
手を差し出そうとしていた桜の姿が、鈍い音と共に視界から消えた。
代わりに飛び込んできたのは、別のガーディアン。
真横から突進し、その固い装甲で彼女を突き飛ばしたのだと悟るのに三秒かかった。
左側から、衝突音。
振り向くと弾き飛ばされた桜が地面に転がっているのが確認できた。
「……う……ぁ……ゴフッ……!」
腕を震わせながらなんとか上半身を起こした桜の口から、何か黒い液体が溢れ出る。
もし今が日中であったなら、その吐き出した液体の本来の色が不快なまでの真紅だとはっきりわかったことだろう。
「桜!!」
桜が吐血したと直感的に把握し、俺は駆け出す。
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