桜の記憶

「そんなんじゃねぇけどよ。どうせ大人になったら嫌でも働かなきゃいけなくなんだろ? それだったらせめて今くらいは遊びとか、その、自分のやりたいこと優先にしたって良いんじゃねぇかって思ってるんだよ」


「ふぅん。わからなくはないけど」


 小刻みに頷く根崎。


 そんな彼を半眼で見やり、俺は逆に問い返した。


「つーか、お前はどうなんだよ? バイトしないで金余裕あるのか?」


「うん、まぁ。お盆に親戚からお小遣い貰ったりしたしね。それに、十月に格ゲーの大会があるから、それに向けての練習もこれから本格的に始める予定なんだ。だから、バイトしてる暇がないよ」


「格ゲーの? お前、去年も出て準決勝で負けてたよな? また出んのかよ」


 この友人のゲーム好きは筋金入りだ。ジャンルに拘らずオールマイティにこなして遊んでいる。


 地方や近所の小さな大会にも頻繁に出場し、その度に中途半端なところで敗退していた。


「今年は最低でも準優勝するよ。自信があるんだ」


 グッと小さな拳を固め、根崎は宣言する。

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