桜の記憶
「まさかお前が別れを惜しむような素振りするとは思わなかったわ」
「え?」
「いや、俺はてっきり片桐とかいうやつの言葉に萎縮か何かしてるもんだと思ってたからさ」
いろいろと真実は知りたい。
でも下手したら今夜、自分が殺されるかもしれない。
そんな葛藤が原因でいつもとどこか様子がおかしくなっているのかと憶測していたのに、全然見当違いだった。
「それは、雄治にはたくさんお世話になったから。もしこのまま元の世界に帰るような展開になったら、あたし何もお礼とかできないし……」
半分こもった小声で呟き、罰が悪そうに目を伏せる桜。
そんな彼女の思いがけない仕草に、俺はつい笑いそうになる。
「……桜、お前ほんとに悪魔か?」
「ん? どういうこと?」
からかったつもりだが、どうやら通じなかったらしい。
チロリと視線だけを上げ問い返す桜に含み笑いを浮かべ、俺は小さく首を振りつつ肩を竦める。
「別に。てか、気にしなくて良いぞ。お礼なんて黙ってても貰えるから」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます