桜の記憶
食べ終えた皿を手に、台所へ向かう。
「なーに? 人生悟ったような言い方しちゃって。生意気な弟ねー」
年長者を気取ってのアドバイスをあっさりと一蹴され、不服そうに姉貴は唇を尖らせる。
「……悟れんなら苦労しねぇよ」
聞こえないよう口の中だけで呻いて、俺は洗った皿とカップを片付けた。
本当に、こんな問題を解決する方法があるなら教えてほしい。
そもそも、あまりに急で予想外なこの展開に、今ひとつ現実味がもてないというのが一番厄介なところだ。
想像してみればわかる。
怪我も病気もしていない知り合いが、今日の夜にはいなくなると予言するように言われてもあまりピンとはこないだろう。
半信半疑の困惑と得体の知れない不安。
そんな形にならないものが漠然と渦巻くだけだ。
対応したくても、手段が浮かばない。
それ以前に、自分ごときに対応などできるのかという疑問が生じる。
(駄目だな……。どうにも考えが空回っちまう)
まるで堂々巡りするかのような思考を一旦閉め出して、俺は部屋に戻るために階段を上った。
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