桜の記憶
「さっきの?」
「あいつにとどめさすときに言ってた台詞。くたばれ青二才って、どこからそういう言葉が出てくんだ?」
言いながら、俺は狼男を指差す。
「ああ、あれは昨日読んだ漫画に載ってた台詞だよ。暗殺者みたいなキャラが主人公に言い捨ててたの」
「……お前それ悪役だろ」
何が嬉しいのか、にやけながら語る悪魔少女を半眼で睨んでおく。
あんなタイミングで漫画の台詞真似する馬鹿いるか普通。
てか、そこまで余裕があったことがすげぇ。
「さて、と。頭に直接触ったら少しくらいは記憶を調べることできないかな?」
空気を揉むかのように右手を開閉しながら、桜はくるりと狼男に首を向けた。
奴が桜と同じ世界の住人なら、この世界と行き来する方法を知ってるかもしれない。
或いは桜自身に関する、何らかの情報が手に入る見込みもゼロではない。
そもそも、ここに来た目的がそれなのだから、桜同様人間外の存在が現れたのはある意味当たりだったのかもしれない。
「これで何かわかれば……」
期待するように、桜が足を一歩踏み出しかけた瞬間、暗闇の中からパチパチという乾いた音が聞こえてきた。
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