桜の記憶

「あの子可愛いよね。あたしが来ると尻尾振りながら小屋から出てくるし」


「……ポテマヨまで記憶いじってたりしないだろうな?」


 大丈夫だとは思うが、念のため確認してみる。


「そこまではしてないよ」


 俺の疑問にあっさりと答えて、桜は椅子に腰を下ろす。


「今のところ小動物の記憶まで変える必要性ないし、これ以上何かするのは気が引けるから」


 真面目な顔でそう付け加え、桜はまたコーラに口をつけた。


「はぁ……。とりあえずさ、次からはちゃんと玄関から中に入ってくれ。あと、部屋にいるなら電気くらい点けておけ。暗い部屋で壁に張り付いてるとかおぞましいから」


 いちいち小言を並べるのも億劫になり、端的に話をまとめて言い聞かせる。


「うん、わかった」


 素直に頷くのを確かめて、俺はベッドまで移動しそちらに座る。


「んで? 何しに来たんだ?」


 記憶探しは明日の夜だったはずで、今夜は特に予定はない。


 桜が家を訪ねて来る必要も無いはずだ。


「……実はちょっと、気になることがあって」

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