桜の記憶
「……店出るまで他人のふりしとくかな。んじゃ、俺も自分の本探すから。また後でな」
「あ、うん」
ずっと桜を見ていた有紀は、俺の声で我に返ると慌てたように頷いた。
参考書のコーナーへ向かう有紀をしばらく眺めてから、ゲーム雑誌が置かれた棚へ移動する。
先日購入した新作ソフトの情報をざっと確認し、今後の発売スケジュールをチェックする。
当面はこれといって面白そうなタイトルの発売は無さそうだが、年末に三本ほど好きなシリーズの最新作が出る予定になっているようだ。
(これは、何とかして金残しておかないとな)
あまり散財しないよう肝に命じつつ、隣に平積みされた別の雑誌を手に取る。
適当にページを捲り内容を流し読みしていると、背後からぽんと肩を叩かれた。
「またゲーム雑誌?」
振り返ると、買い物を終えたらしき桜がこちらの手元を覗き込んできたところだった。
「ああ、とりあえず欲しい情報はゲットした。てか、もう買い物済ませたのかよ」
自由行動を宣言してまだそれほど経っていない。
いったい何冊買い込んだのか、悪魔少女の手には良い感じに膨らんだ袋が握られていた。
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