桜の記憶
「……俺には到底真似できないな、そういう心構えみたいなのは」
幼なじみの真剣な顔と口調にいささか居心地の悪さを覚え、俺はさりげなく目を逸らす。
学校を卒業してからのことなんて、俺はまだ考えてもいない。
だからなのか、有紀の話す内容にあまり共感することができなかった。
大体、希望の大学や進路なんて探そうとすらしたことがないのだから。
「雄くんも、ちょっとは進路真面目に考えた方が良いよ? 雄くんの路頭に迷う姿なんて、わたし見たくないからね」
「なんだそりゃ……」
若干説教じみたニュアンスで言ってくる有紀に、俺は口元を歪ませながら呻きを返しておく。
「あの……、夜月さんはどうなの?」
ひとまず、俺の進路に関するダメ出しはされずに済んだのだろう。
黙り込んだまま歩く桜が気になっていたのか、有紀は自分とは反対側、俺の左手を歩く人間もどきへ遠慮がちに声をかけた。
「何が?」
相変わらずぶすっとした様子の桜が、ぶっきらぼうに言葉を返す。
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