桜の記憶
雄くん、という呼び方をしてくるのは俺の知り合いでは有紀しかいない。
小さい頃からずっとこのあだ名で通しているため、有紀本人としては特別意識している部分はないのかもしれない。
だけど、呼ばれるこちらの身としてはさすがに恥ずかしく感じてしまうのが本音である。
別にあだ名で呼ばれるのが嫌いだとか、そういうことではないのだが、今みたいに周りに人がいる場所で呼ばれるというのがどうしても照れくさい。
いつだったか、呼び方を変えてくれと頼んだこともあるのだが、
『どうして? 雄くんは雄くんだし、今さら呼び方変えるなんて何か違和感あるよ』
と言って聞き入れてもらえなかった。
「放課後なら別に用事はないけど」
「ほんと? じゃあ、一緒に帰らない? わたしちょっと寄り道したい所があるの」
パッと表情を輝かせ、有紀が弾んだ声をあげる。
「良いけど、どこ行くんだ?」
「本屋に。探してる本があるのよ」
嬉しそうに歯を見せる有紀に頷いて、俺は軽い調子で言葉を返した。
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