桜の記憶

 やがて、ポツリと呟いた俺の元にサクラが早足で戻ってきた。


 そしてこちらが何かアクションを起こすより先に、頭を鷲掴みにしてくる。


「おい、また何を……!」


 慌てて身動きする俺を押さえつけ、記憶を読み取るサクラ。


「クラス……、転校生……、なるほど。学校のことか」


 納得したという風に頷いて、サクラは身体を離す。


「人の頭の中を辞書代わりにすんなよ!」


 堪らず叫ぶも、当の本人は悪びれた様子もなく肩を竦めてみせると、こちらを指差し


「あなたが適当なこと言うから悪いの」


 と言い返してきた。


「何が適当なことだよ?」


「あたしの記憶戻す手段なかったでしょ! こっちが真面目に聞いてるのに、あんなへんぴな場所紹介して!」


「へんぴって、寺に失礼だろうが! 大体、悪魔の記憶戻す方法なんざわかるか! 無理難題押し付けられた挙げ句にぬいぐるみも回収できなかったせいで、今日はダチにもヘタレ呼ばわりされちまったんだからな!」


「ぬいぐるみ? 何だかよくわかんないけど、あなたにはあたしの記憶を戻すの手伝ってもらうからね。あたしを騙した罰として責任とってよ?」

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