桜の記憶
「でも、情けない話だけど、こっちの世界に転移してきた時に記憶の一部が消えちゃったみたいで、自分がどうしてこの世界に来なきゃいけなかったのか、元の世界に戻るにはどうすれば良いのか、その辺りの記憶や知識が綺麗さっぱり頭から無くなっちゃってるみたいなの」
そこで一度、少女はため息をつく。
「助けを求めるにも、仲間はいないしこの世界の言葉やルールみたいなのもわからないしで、ずっとここに隠れて途方に暮れていたってわけ。だから、あたしはあなたに助けてほしいの」
月明かりで青白く光る通路を背に、サクラとか名乗った少女はじっと俺を見つめる。
「いや、助けてほしいとか言われてもなぁ……。つか、この世界の言葉がわからないとか言いながら普通に喋ってんじゃん」
急所をつくような反論をすればとりあえず何とか凌げるか。
そう思いつつ言葉を吐くと、少女は怯む様子もなくこちらへ近づきまた俺の頭に手を当ててきた。
「ちょっ……、何だよ?」
相手の意図が掴めず、必然的に困惑した声を出してしまう。
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